偏屈で独善的で皮肉屋だけど、どこか憎めない独身の建築家・桑野信介の日常を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『まだ結婚できない男』(毎週火曜21:00~)。13年ぶりに桑野を演じる俳優の阿部寛は、今回の撮影も「非常に楽しくやらせていただきました」と充実の様子を語る。
そんな現場だけあって、撮影ではアドリブを試したり、私物の小道具を持ってきたりと、積極的に臨んでいるようだ――。
■変わらぬキャラクターたちに驚き
――13年ぶりの復活ですが、反響はいかがですか?
「13年経ったら続編は難しいだろうな」と思っていたファンの方もいたみたいですが、そういう人たちが「そのまま帰ってきてくれた」と言ってくれているようですね。
――ご自身としては、今回の続編に不安はあったのですか?
尾崎(将也)さんの脚本を読ませていただいて、これならできると思いました。第1話の最後の桑野の講演で仕事のことに触れ、「人生100年時代」というセリフから令和になったということも反映されていて、彼のポリシーは健在で、これだったら大丈夫だと思ってお引き受けしたので、皆さんにも喜んでいただいてうれしかったですね。
――あの口調や猫背の姿勢など、13年前と全く変わらないと思ったのですが、体に染み込んでいたのですか?
いや、実は忘れてたんですよ(笑)。最初は「なんか違うなあ」と思ってたんですけど、セリフを言っているうちに「あぁ、こんな感じだっけなあ」ってだんだん思い出していったんです。
――すでに撮影は終了しているということですが、この『まだ結婚できない男』チームの現場の雰囲気はいかがでしたか?
非常に楽しくやらせていただきました。新しいキャストの方たちはそれぞれに思う自分のキャラクターを持ってきてくれて、それに対して桑野が13年経った今、どうやってコミュニケーションをとっていくかというのをリアルに体験できたし、前作も出ていらっしゃった方たちは本当に前作のままで、13年という時を感じさせずによくこのキャラクターを覚えてるなと、僕が驚かされるぐらいでした。
――現場で印象に残っている出来事はありますか?
一番ビックリしたのは、塚本(高史)くんが初日であっという間に事務所の後輩たちと一体感を作ってくれたことです。桑野は寡黙な男で社員たちにあんまりタッチしない。だから、この雰囲気の中で桑野が文句だけ言ってればいいんだという状態を作ってくれた(笑)
あと、草笛(光子)さんが輝いてらっしゃる! 80歳を超えて、当時よりも輝いてるんですよ。それがあったことも、続編に挑める勇気を与えていただいた。
――吉田羊さん、稲森いずみさん、深川麻衣さんという、今作から参加された桑野を取り巻く女性たちはいかがですか?
きっと桑野というキャラクターに対して、皆さん最初は戸惑ったと思いますね。(第5話で鎌倉の神社の)長階段の手すりをお尻でスーッと滑って降りていったら、驚がくしてましたから(笑)。「なんでそんなことできるんですか!?」って。
――稲森さんは爆笑したとおっしゃってました。
そうそう(笑)。「体幹どうなってるんですか!?」って(笑)。中盤からは、まどか(吉田羊)が桑野のやることに対して乗ってくるようになるので、発想豊かにやってくれて現場は楽しくやってました。
■プライベートでも変な横分けに!?
――アドリブは結構多いのですか?
ドライ(リハーサル)のときに「こういう感じでやってみようかな…」ってたまにやってみるんですよ。そうすると、皆さんチロチロ見ていて、それに乗ろうかなと考えてくれる。
――第2話で、婚活アプリで知り合った女性に会いに行くのに、髪型を一生懸命作ってぴっちり横分けになっていましたが、そういった桑野のユーモラスな部分は阿部さんのアイデアが反映されているのですか?
あのシーンはメイクさんです。でも、実は結婚式とかにプライベートで出るとき、自分で髪型を作るといつもあんな感じになっちゃうんですよ。気合入れてやるとこだわりすぎて変な横分けになって(笑)。人って追い込まれれば追い込まれるほどドツボにハマっていくので、それをアレンジしてやってみたシーンです。
――阿部さんが現場に持ってくる私物の小道具がとても秀逸だと、共演者の皆さんがおっしゃっていました。第5話では、まどかに「鎌倉大仏のうんちくについて知りたい」と言われた桑野が、大仏の本とミニチュアを持ってきましたよね。
その撮影の2~3日前に、たまたま根津美術館に行ったらちょうど大仏の本があったから、スタッフに用意してもらうのも大変だと思って買って持っていったんですよ。それと、昔撮影でネパールに行ったとき、仏像を作る産地で記念にお土産で小さい仏像を買ったんです。それもちょうどいいと思って持っていきました。
――婚活アプリで知り合った女性に会う際に、着ていく服を選ぶシーンでも、私服を用意されたとか。
あのシーンは大量に服を出さなきゃいけないから、13年前に使った服とかを倉庫に取りに行ったりして持ってきました。あれだけの量を用意するのは衣装さんも大変だと思ったので、自分の適当な服をたくさん持ってきて、並べて出したんですよ。
――他の作品でも、私物を作品に生かすことはあるのですか?
『TRICK』で、私物の肩掛けカバンというのはありましたね。