――そんな「Face to Face」ですが、ミュージックビデオは台湾で撮影したんですよね

個人的に、リップシンクやダンスシーンがまったくない、イメージシーンのみで構成されたMVを一度作ってみたいという野望があったのですが、恥ずかしいので、ずっと口にはしなかったんです。実際にそれで成立するのかわからないし、ダメだったときの責任も取れないじゃないですか。ただ今回、表題曲が急遽変わったこともあり、いいきっかけだと思って話してみたら、それがまさかの採用で(笑)。それで、せっかく撮るのであれば、かわいい絵面で、色彩豊かなところにしたかったのですが、なかなか日本では見つからず、最終的に見つかったのが台湾だったんです。

――今回もMVには、ダンスシーンもリップシーンもないのですか?

そうなんです。台湾で、少しリップも撮っておこうかって話しになったのですが、頑なに“いりません!”って(笑)。なので、ダンス映像も、実は日本に帰ってきてから撮影したものです。台湾で撮影したときは、まだ振りができていなかったというのもありますが、ダンスは今までからずっとやってきているし、それを観たいという方もいらっしゃるので、あらためて、ダンスだけの映像も撮影しました。

――台湾での撮影はいかがでしたか?

台湾に行く前は、あまり天気が良くないと聞いていたのですが、到着した瞬間からすごい日差しで、季節外れの日焼けをしてしまいました。撮影は主に台中だったのですが、すごく街がかわいくて、台北よりもちょっとアートな感じで、まるでおとぎ話の世界にでも入ったような感じがしました。特に演じるわけでもなかったので、自分がただただ旅行を楽しんでいる感じを収めてもらえたと思います。その意味では、メイキング映像とあまり変わらないかもしれませんが(笑)。

●石原夏織 4th Single 「Face to Face」MV short ver.

――表題曲の予定だったという「Taste of Marmalade」ですが、初めて聴いたときの印象はいかがでしたか?

今までにやったことのないジャンルとして、ジャズに挑戦したいと言ったら、本当にカッコいいジャズがたくさん集まってきたのですが、その中でも、「Taste of Marmalade」は、ただカッコいいだけじゃないものを感じました。年齢相応で、あまり気取りすぎない感じ。背伸びするにしてもちょっと伸びているぐらいの、ちょうど良いニュアンスがすごくしっくり来て。一度聴いたら抜けられない感じのメロディラインも大好きです。

――実際に歌ってみた感想はいかがでしたか?

これまで、ちゃんとしたジャズを歌ったことがなかったので、最初はちょっと難しいと思ったのが正直なところです。でも、歌詞の世界に入り込んで、等身大の「Face to Face」よりもちょっと上のキャラクターを演じるように歌ってみると、すごく歌いやすくて、逆にビックリしました。最初は本当に自信がなかったのですが、レコーディングで歌ったら、褒めてもらえたので気分がすごく良くなって(笑)。特にBメロからサビに駆け上がるところは、すごく気分も乗せやすかったですし、聴いてくださる方にもその楽しさが伝わるのではないかと思っています。

――表題から外した段階で、次回以降のシングルであらためて……という選択肢もあったかと思いますが?

もちろん、次回まで取っておきたいという気持ちもあったのですが、あらためて今回の3曲を連続で聴いてみると、石原夏織という人間が、すごくわかる1枚になったのではないかと思います。3曲あるからこそ、挑戦できた部分もありますし、ほかの2曲があるからこそ、「Taste of Marmalade」を振り切って歌うことができたのではないかと思います。表題曲として歌っていたら、ここまで振り切れたかどうか……この3曲ならではの「Taste of Marmalade」だと思いますし、この3曲で本当に良かったと思っています。