――宮が必死に山道を逃げてくるところから映画が始まり、やがて宮の命を狙う殺戮集団「根来衆(ねごろしゅう)」の襲撃がありました。ここでは顔や衣装までも泥だらけとなり、矢島さんとしても驚かれたのではないでしょうか。
あそこは、宮がとにかくがむしゃらに逃げ回って、ここまでめちゃめちゃ走ってきたような雰囲気がありましたね。顔を汚して、すごいメイクをしてもらったことによって、自分も自然と一心不乱に走ってきたという気持ちになることができました。自分の気持ちをも乗せてくれる、メイクや衣装の力はほんとうに凄いと感じた瞬間でしたね。
――通常の現代劇と違い、時代劇の撮影でたいへんだと思われたことはありますか。
常に着物姿で演技をしないといけないところですね。帯をキュッとしめていますので、日常的なしぐさがまったく違ってくるんです。とにかく動き辛い上に、この格好で逃げたりするので、撮影している間にどんどん着物がはだけてきてしまい、その都度衣装さんに直してもらわないといけなくて。でも、着物を着ていて動きが制限されることによって、私も時代劇の世界にうまくなじむことができたのではないかな、と思っています。
――宮の辛い境遇を親身になって聞き、やがてかけがえのない親友のような間柄になる律花を演じる山本千尋さんの印象はいかがですか。
千尋ちゃんは常に凛としていて、撮影の合間では周りの人たちに優しく気を配っているところが強く印象に残っています。私にも「大丈夫ですか? 寒くないですか?」って何度も心配してくれました。でも、私より千尋ちゃんの衣装のほうが素肌が出ているので、絶対たいへんだったと思います。何しろ撮影が真冬の2月ごろでしたし……。主演として、いちばん出番が多くていちばん動きまわって、ハードな撮影をこなしていながら、周囲への配慮を忘れない優しさがあって。とてもよくできた子だなあと、私のほうが齢上なんですが、すごく尊敬できる人なんです。
――山本さんも、矢島さんにはお姉さんみたいに頼れる空気があったとお話されていました。お互いをリスペクトし合う雰囲気が、映像にもしっかり表れているようです。
そういう風に観えていれば、とても嬉しいです。
――宮を演じる上で、ここが難しかった、と思えたのはどんなところですか。
大久保桜子さん演じる明里咲(めりさ)と律花と宮が3人でニッコリしているという、とても安らぐシーンが出てくるのですが、宮はその直前、とても悲しい出来事を経験しているんですね。精神的にも激しいショックがあるはずなのに、それを表だって見せずに明るく笑うという……。ここの演技をどうやって表現しようか、難しいなと思ったことがありました。
――宮には身体の中に蓄積した電気エネルギーを放出するという特殊能力があります。劇中では宮の心を操り、この能力を「武器」として利用する悪人が出てくるんですね。宮が電撃を発するシーンを演じられているときはどんなお気持ちでしたか?
私が手を伸ばすと、すごい電撃が発生して周りの人たちが吹っ飛んでしまうんですよね。撮影中は、何が出ているのかがわからないので、おそらくこういう感じだろうなと想像しながら演技しないといけないのがたいへんでした。どのタイミングでバーッと(電撃が)起きるのか、イメージするのが難しかったです。私の力によって吹き飛ばされる人たちも、タイミングを合わせて飛んでいかないといけませんから、みなさんとの連携する大切さもありましたね。もう、私はいま、大人の人が数人まとめて倒されてしまうくらいの力を出している!と想像しながら、目に見えない力を思いっきり出すようにしました。
――完成作品で実際に、宮の全身から電撃が出ているのをご覧になったとき、どんな感想を持たれましたか。
私のイメージした以上に、すごい電撃が飛んでいました。わあ、こんな感じになったんだって、映像を観て改めて感激しましたね(笑)。