機能的な部分では大きな進化があります。一つ目が、電子式手ブレ補正の「HyperSmooth 2.0」。内容がさらに強化され、すべてのフレームレートと解像度で利用可能になりました。つまり、4K解像度でも強力な手ブレ補正が使えるようになったことで、今まで以上にブレのない高画質の映像が撮影できます。

これに加えて、新たに「ブースト」が追加されました。これは、手ブレ補正のために従来以上に周辺画角を使って補正を行うモードで、実際に試してみるとかなり強力だと感じました。「もはやジンバルは不要」と同社が言い切るとおり、手持ちでもほとんどブレのない映像が撮影できて驚かされるほどです。

HyperSmooth 2.0を無効にした状態。電動キックボードの細かい振動がそのまま記録されていて、落ち着かない映像となっています

HyperSmooth 2.0でブーストを有効にして撮影した作例。ほとんどブレが感じられません。上の動画と比べると歴然の差です

人が歩くような上下の大きな揺れはある程度の補正にとどまるものの、細かい手ブレは完全に消し去ってくれます。電動スクーターや自転車といった激しい揺れはほとんど感じなくなるので、特に激しいアクティビティで有効なモードといえます。

自転車でのアクティビティの撮影。細かい砂利道ですが、微振動はまったく感じません

サンフランシスコで乗った水上飛行機の着水時の映像。それなりに激しい着水時の振動が、手持ち撮影でも完全に抑えられています

ブーストは、35mm判換算で16mm相当となる超広角の「SuperView」では選択できません。「広角」よりも狭い画角の時に選択できるようになっており、HyperSmooth 2.0のようにすべての画角で利用できるわけではありません。ただ、激しい動きを伴う場合は、ぜひ選んでおきたい設定といえます。

画角設定では「デジタルレンズ」機能を備えており、スムーズな画角の変更が可能です。用意されているのはSuperView、広角、リニア、挟角の4種類。最も広角でGoPro特有のダイナミックな映像が撮れるSuperViewは迫力のある撮影が可能ですが、補正が働かないためか超広角特有のゆがみが顕著に出るほか、ブーストが使えないというデメリットがあります。

SuperView

広角は「伝統的なGoProの画角」と表現され、ゆがみが補正されながらも広角のダイナミックな映像が得られます。デジタルズームを使うことで、16~34mm相当の画角で撮影可能。焦点距離としては、SuperViewと同じ16mm相当ですが、補正が入るため、画角はSuperViewに比べてやや狭くなります。

広角

リニアは19~39mm相当。魚眼効果がないため、広角レンズとして幅広い範囲を撮影できます。ゆがみの補正もあるため、自然な撮影が可能。広角とリニアは、それぞれ2倍までのデジタルズームにも対応しています。

リニア

挟角は27mm。他と比べると画角は狭く感じますが、動画としても一般的に見れば比較的広い画角です。

狭角

解像度は、16:9のアスペクト比で4K60fpsまで、4:3でも4K30fpsまで対応しています。2.7Kでは16:9が120fps、4:3が60fps、1440pでは120fps、そしてフルHDでは240fpsまでのハイスピード動画も可能です。

タイムラプス機能では、速度を決めるだけで手軽に撮影できたTimeWarp機能が進化して「TimeWarp 2.0」になりました。

TimeWarpは、もともとカメラを固定して長時間連続撮影した画像を短時間の動画に凝縮するタイムラプスを、移動しながらでも撮影できるようにした機能です。HyperSmoothと併用することで、移動しながらでも安定感のあるタイムラプス動画を記録できるうえ、30倍速までのスピードを選ぶだけで撮影できる手軽さが売りでした。

今回のTimeWarp 2.0では速度を選ぶ必要すらなくなり、「自動」を選択しておくとシーンに応じた速度で撮影してくれるようになりました。

TimeWarp 2.0の作例。18秒付近から、停車したために映像が等倍になっています。動きのある自動車があると速くなり、再び走り出すとタイムラプスが再開されています

面白いのは、撮影中に動きの遅いシーンがあったらゆっくり(等倍)になるといった具合に、シーンを認識して自動で調整してくれる点です。どういった場合に遅くなるかは試用期間中は分かりませんでしたが、映像にメリハリがつくので好ましいと感じます。

これを任意のタイミングで実現するのが「Real Time」機能です。Time Warp撮影中、画面上にボタンが表示され、これを押すとその間は等倍の速度で記録されるため、動きが遅くなったような映像が撮影できます。

アプリで強力な動画の水平補正も可能

使い勝手を高める機能としては、プリセット機能があります。HERO7までは、画面のタッチで一つずつ撮影設定を変更してきましたが、HERO8 Blackではあらかじめ設定したプリセットで設定を一括変更できます。

  • ディスプレイの下部にプリセットが表示されています

  • タッチすると選択画面になり、鉛筆マークをタッチすると設定の変更が可能

「標準」は1080・60fps、広角レンズ、HyperSmoothは高(10%クロップ)、といった設定です。ProTuneの設定もそれぞれ設定されています。「アクティビティ」になると、2.7K・60fps、SuperViewレンズ、HyperSmoothオンなどの設定になります。これを一つずつ切り替えるのは面倒ですが、プリセットならワンタッチで切り替えられます。

  • あらかじめプリセットに登録しておけば、これらの設定項目を一発で変更できます

ビデオモードだけでなく、写真モードやタイムラプスモードでも設定できるので、シーンごとにいろいろ切り替えたい場合はぜひ活用したいところです。

GoProアプリでは、新機能「水平ロック」が便利だと感じました。三脚などに固定して動画を撮影した際、取り付け時に傾いてしまっていた場合に、本体のセンサーがカメラの角度を記録しているため、それにもとづいて自動で水平に傾きを補正してくれる、というものです。簡単に角度を修正できるので使い勝手が良くなります。

  • GoProアプリの編集画面。ここで水平ロックを設定すると、動画の傾きが補正されます

上のほうで載せた動画の水平を補正したもの。水平の傾きが修正されて見やすくなっています。不自然なほど水平が取れていて驚かされます

ほかにも、静止画のHDR機能が強化され、動きのある被写体でもHDR撮影ができるようになりました。また、前面マイクの搭載で音声が強化されたり、シャッターを切る前後1.5秒の90コマを記録しておいてベストショットをあとから選べる「LiveBurst」など、さまざまな機能が強化されています。

  • 前面にマイクが搭載されました

今回は試用できませんでしたが、拡張機能の「モジュラー」(Mods)も面白いオプションです。HERO8で初採用となるモジュラーは、ガンショットマイクを搭載した「メディアモジュラー」、最高200ルーメンのLEDを内蔵する「ライトモジュラー」、自撮りにも使える「ディスプレイモジュラー」の3種類を用意。「すべてを内蔵するより、必要な人が機能を選べる」というポリシーで開発されたとのことで、よりGoProの撮影範囲を広げてくれそうです。

  • 左から「メディアモジュラー」「ライトモジュラー」「ディスプレイモジュラー」

ちなみに、このモジュラーの仕様は公開されるので、サードパーティがさまざまなモジュラーを開発できます。従来のマウントのように、さまざまなモジュラーが出てくるのが楽しみなところです。

使い勝手がよく完成度が高まったHERO8 Black

GoPro HERO8 Blackは、使い勝手を良くして完成度を高めたGoPro HEROシリーズの完成形といってもいい製品に仕上がっています。暗所撮影は従来通りあまり気にしていないようですし、他社のような自撮り用ディスプレイを内蔵することはありませんでしたが、考えられる弱点を解消してきて、さらに使い勝手が高まりました。

個人的には、さらに強力になった手ブレ補正、マイクの強化、マウントに三脚などを使わなくても充電しながら撮影できるようになった点がメリットに感じています。GoPro自身も「フレームのあるカメラには戻れないでしょう」と語っていましたが、確かにその通りだと感じました。広角すぎると感じた場合も、デジタルレンズで画角を狭められるというのは、アクティブシーンの撮影ではない通常の撮影をしたい場合にも便利だと感じました。