2016年にCDデビューを果たし、2018年にはTVアニメ『ゆるキャン△』OPテーマ「SHINY DAYS」で一躍脚光を浴びたアニソンシンガー・亜咲花。彼女が自身の20歳の誕生日当日に、待望の1stフルアルバム『HEART TOUCH』をリリースした。これまで歌ってきたアニメ主題歌を全て詰め込みつつ、新曲・初音源化曲も6曲収録。この3年間の成長はもちろん、本作の制作を通じた成長も感じさせる充実の1枚について、存分に語ってもらった。

  • 亜咲花(あさか)。1999年10月7日生まれ。愛知県出身。アミュレート所属。2016年10月に17歳の高校生アニソンシンガーとしてTVアニメ『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』EDテーマ「Open your eyes」でデビュー。TVアニメ『ゆるキャン△』OPテーマ「SHINY DAYS」、TVアニメ『ISLAND』EDテーマ「Eternal Star」、TVアニメ『『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』OPテーマ「この世の果てで恋を唄う少女」を担当
    撮影:稲澤朝博

これまでの集大成を、人生で一度きりの記念日に発表

――1stフルアルバムのリリースは、20歳の誕生日当日になりました。

そうなんです。デビュー当初から1stフルアルバムを出すのは「人生で1回しか味わえない大人になる瞬間」の時が良いなと思っていまして。リリース日も20歳の誕生日当日にさせていただきました。そういうところも含めて、他の人にはなかなか出せないような個性の詰まった1枚にできたと思っています。

――その『HEART TOUCH』というタイトルの由来は、やはり……?

……はい(笑)。「すごくネイティブに言うと、"ハタチ"に聞こえない?」っていうことで(笑)。ただ、そういうダジャレみたいな部分の他にも「いかにみなさんの気持ちに、近い存在でいられるか」という意味合いがあって。音楽って移動中に聴くことも多いじゃないですか。そういうときもずっと一緒にいられるような近い存在でありたいな、という気持ちも込めました。

――今回は、新曲・初収録曲計6曲はもちろん、これまでご自身が歌われてきたアニソンも全て収録されています。それもやはりこだわり?

そうですね。アニソン歌手という夢をずっと追ってきて今もこうして活動させていただいていますし、やっぱりアニソンが大好きなのでここは外せませんでした。

背伸びをせずに、自分の気持ちを素直に描いたリード曲

――では、新曲のうちまずリード曲「Raise Your Heart!!」についてお聞かせください。作曲を田淵智也さんが、編曲を堀江晶太さんが手掛けられましたが、亜咲花さんからは楽曲についてどんなオーダーをされましたか?

それが、あまり細かく言うと田淵さんにお願いした意味がなくなっちゃうと思ったので、大まかに「明るいロックを歌いたいです」とだけお伝えしたんですよ。アニソン大好きな自分としては、田淵さんの個性あふれる”ゴリゴリの田淵アニソン”を歌いたかったので。そうしたらめちゃくちゃ速い、田淵節全開の曲が返ってきました(笑)。

――歌詞は田淵さんと共作で亜咲花さんが手掛けられていますが、特にこだわった点はどういったところでしょう?

「背伸びをしない」いうところです。私、今まで作詞をさせてもらったときにはそれこそ小説を書くかのように、自分からかけ離れた第三者の気持ちを描いていたんですよ。なので、今回初めて「亜咲花っていうのはこういう人間で、こういう気持ちでステージに立っているんだよ」というコンセプトで書いたんですけど、それを言葉だけじゃなく歌でも伝えられるように「ライブがある日の亜咲花の1日」をテーマに書いていきました。ただ、その「伝えたい!」という気持ちがネックになってしまったところもあって……。

――それは、どんな部分で?

2サビに「大好きになる!」っていうフレーズが何回も繰り返して出てくるんですけど、元々その部分をはじめ、2サビはほとんど違う歌詞だったんです。全部頭の部分に来る「1」とか「2」につながるように、「幕が開いて」「気持ち高ぶって」みたいな別の言葉が入っていて……。でもそれを田淵さんに見せたら、「若い子ならいいんだけど、おじちゃんが聴いたら頭に入ってこない」って言われたんです。「キャッチーさがない」って。そのとき、自分の「伝えたい!」っていう気持ちが行き過ぎていて、受け手がどう聴くかまで考えられてなかったことに気づかされたんですよね。

――そんなアドバイスが……。

そうなんです。それで、「だったら前半では1サビを全部引用して、後半は『大好きになる!』を3回繰り返してもっと気持ちを伝えたほうがいいよ」と言われて……「さすが!」って思いましたね。おかげで元の歌詞よりも断然気持ちが伝わりやすくなりましたし、「ただ『伝えたい!』だけじゃなくて、同じ歌詞を引用したりしてキャッチーさを出すのも大事なことなんだな」って気づかせてもらいました。

――そんなこの曲、レコーディングはいかがでしたか?

自分で作詞をして曲と向き合う時間が長くなった分、自分の中であまりにも理想が大きくなりすぎてしまっていたんですよ。なので、いざレコーディングすると「意外とここ早口でろれつ回んないな」みたいに、現実にぶち当たってしまうところもたくさんあって。でも自分で世界観を作ったこの曲に込めた気持ちがいちばん伝わるよう、田淵さんに千本ノックみたいにディレクションをいただきながら、録っていきました。

――また、この曲ではMVも制作されています。

今回は初めてMVでも、自分からコンセプトを細かく提案させてもらいました。たとえば、自分の昔の写真を貼りつけてハート型にしたいとか。曲は20歳に限らずずっと変わらないような自分の気持ちを描いた曲なんですけど、MVはやっぱり初めて亜咲花を知る人も観るものだなと思いました。

「亜咲花ってこういう子だったんだ」っていうのを5分間でわかってもらえるようなMVにしたくて、実家からちっちゃい頃の写真を全部送ってもらいました。それに、”亜咲花の一日”も感じてもらえるMVにしたくて、朝起きるところから始めて「心から歌を楽しんでいるよ!」っていう気持ちで撮りました。

――ライブシーンのようなカットもありましたね。

そうなんです。ガールズバンドっぽく。そんな形で女の子を引っさげてMV撮るのも初めてだったので、学校でガールズバンドをやっていたこともあったので、その時を思い出したりしながら楽しく撮影できました。