■マレフィセントは「自然の本質に近い」

――マレフィセントもディアヴァルも、ディズニーヴィランズの中では異色のキャラクターになっていますよね。

アンジー:私自身は、マレフィセントをすごくエモーショルなキャラクターとしてずっと見ているのよ。いろいろな意味で彼女は、すごく自然の本質に近い個性を持っている。それは母なる自然と彼女とのつながりを考えれば当然のことで、自然は美しかったり花を咲かせることと同時に、津波やハリケーンを起こすものでもある。それと同じようにマレフィセントは自分の気持ちを自分の中でうまく抑えることができず、それが発動してしまうとかなり過激な形で表現されてしまうこともあるわけよね。前作で生まれた時、彼女は無垢な存在だった。しかし傷つけられ、そして翼を奪われ、トラウマに。つまり、誰でも傷ついたり何かを失ったりすれば変化が起こるもので、特に女性の場合は本当にたくさんのことを経験する。身体的な変化はもちろんのこと、そのなかで何か大きく傷つくようなことがあると、自分が持っていた柔らかさが失われていくと思うの。

サム:ディアヴァルは、最初の頃からマレフィセントの中にある温かさや、一見怖い外見なんだけれども、その中にある柔らかさにほかの人より早く気が付いていた男さ。たとえば子供で説明すると、子供というのは実は洗練されていて、アンチヒーローというものがかなり長い間、映画の中で存在していて、受け入れられてきたけれど、子供向け家族向けのエンターテイメントのなかでは、あまりアンチヒーローというものは定着していない。けれども実際人生を考えてみると、善悪というものは別々に存在しておらず、グレーのエリアというものがある。子供にはそういうものを完全に理解できる能力があるのさ。

――ところで、マレフィセントと同じ種族の妖精・ウド役のMIYAVIさんは、アンジェリーナさんと交流があるそうですね。

アンジー:家族ぐるみの付き合いで本当に仲がいいのよ。子供たちが同じ空手のクラスに何年も一緒に通っていて、ホリデーを一緒に過ごす仲でもあるの。今回、彼がキャスティングされ、私も本当にうれしかったけれど、彼が演じるキャラクターは、この世界を象徴するような役割。特に美しいと思ったことは、彼の演じているキャラクターはどんな役割も持てたけれども、子供の面倒を観るという役割は、それはすごく美しいし、素敵なことだと思いました。

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■3作目は「オーロラ姫が母になったら、という物語」!?

――続編になるとシリーズの呪縛にさいなまれてしまうことがありそうなところ、この作品は本当に自由な作風なので、最初に言われていたメッセージが明快に伝わっていますよね。上手くいった秘訣は何でしょうか?

アンジー:ありがとう。すごくうれしいわ。この作品の特に感じてほしいところというのは、自分の持っている一番の本質を自ら大いに抱擁して受け入れるべきだということなのよね。それがいま言われたような自由さであったり、魂だと思うので、そのことの重要さを描いたものでもあるの。続編を作るにあたっては、機会があるからすぐ作ろうとしたわけではなく、語れる価値がある物語ができるまで、私たちは待ったのよ。そのひとつにオーロラの成長というものがある。前作ではまだ子供で、子供との関係値だったけれど、今回若い女性になったオーロラ姫との関係性が書かれていて、その年齢に当然つきものの結婚や人生などが関わってくる物語になっているの。ということは、もしかしたら3作目ではオーロラ姫が母になったら、という物語になるのかもしれませんが、そういうところが気に入っているのよ。

サム:“アンジーさん”が重要なことを全部言ってくれたよ。1作目がオリジナル作品からゆるくベースを取って作られているけれど、基本要素をカバーしつつ、いろいろなキャラクターを自由に動かしていたよね。そこからいろいろと発展があり、僕自身、またあのキャラクターを演じることができてとてもうれしかったし、満足している。

アンジー:シリーズが続いて行くと縛られてしまうという話があったけれど、たとえば2本作ったいまの段階では、国から出ていないけれど、私たちは“飛べる”のよ(笑)。せっかく世界がこれだけ広くて、まだ狭いところしか描いていないと考えたら、飛べるわけだから日本でマレフィセント、といういことも考えられるかもしれない。楽しいと思うわ。

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■プロフィール
アンジェリーナ・ジョリー
1975年6月4日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。父は俳優のジョン・ヴォイト。1999年、精神病の少女を演じた『17歳のカルテ』の演技が認められ、アカデミー賞助演女優賞を受賞。その一方、アクション超大作『トゥーム・レイダー』(01)のララ・クロフト役でアクション・ヒロインも演じ上げ、人気が爆発。前作『マレフィセント』(14)を含め多彩なジャンルの4作品で監督も務めるなど、映画人として大活躍中。プライベートでは、人権問題や女性の地位向上などに積極的に取り組み、慈善家としても活動。養子・実子あわせて6人の母親でもあり、ライフスタイルにも注目が集まる。

サム・ライリー
1980年1月8日生まれ、イギリス・ヨークシャー州出身。アントン・コービン監督作『コントロール』(07)で、夭折のミュージシャン、イアン・カーティス役に挑み、英国アカデミー賞ライジング・スター賞ほか数々の賞を受賞する。2014年、アンジェリーナ・ジョリー主演の『マレフィセント』でカラスのディアヴァル役を務め、話題に。そのほか、ニール・ジョーダン監督の『ビザンチウム』(12)、ミシェル・ウィリアムズ共演の『フランス組曲』(14)、ブリー・ラーソン共演の『フリー・ファイヤー』(16)、ミスター・ダーシーを演じた『高慢と偏見とゾンビ』(16)など、出演は多岐に渡る。