――つぶやきさんとはポジションが異なりますが、雷牙を列車へと案内する不思議な駅員を演じられた下條アトムさんも、短い出番ながら強烈な存在感がありました。
下條さんも映画をご覧になり、喜ばれていました。ああいうたたずまいのキャラクターが出るだけで、映画全体の空気が優しくなりますから、下條さんに出ていただいてありがたかったですね。
――今回、雷牙の前に立ちはだかる強敵・白孔を演じられた松田悟志さんは『仮面ライダー龍騎』(2002年)の仮面ライダーナイト/秋山蓮役で知られています。ミステリアスな仮面と漆黒の衣装が見事に決まり、魅力的な"悪"キャラクターとなっていますね。
松田くんのおかげで、撮影している間でも白孔のイメージがどんどん膨らんでいきました。画面には出てきませんが、白孔はかつて魔戒騎士であり……みたいな、サイドストーリーが想像できるんです。映画には直接関係ないですから、そういうのはなくてもいいんだけれど、あればピリッとスパイスが効きますからね。
――劇中に、昨年2月に急逝された大杉漣さん演じる魔戒法師「四道」の名前が出てくるのも嬉しかったです。
四道法師は『魔戒ノ花』のレギュラーでしたし、今回の『月虹ノ旅人』にも出てくる予定だったんです。台本段階では、四道を出してお話を転がしていこうと思っていたんですけれど、その部分を書いているときに大杉さんが亡くなられたと聞きました。すごいショックを受けて、そこでしばらく筆が止まりましたから……。ちゃんといい台本を仕上げて、もう一度出演をお願いしようと思っていた矢先で、とても悲しく、残念に思いましたね。人間になったマユリをいちばん心配しているのは四道ですから、言葉の上だけでも四道が健在であることを映画で示しました。
――映画の中で、雨宮監督が頭の中で思い描いているとおりのビジョンが、映像としてうまく表現できているな、というカットはどこでしょう?
それは難しい質問ですね……。完全に自分の考える画が表現できたと思えたカットは今まで存在していないですから。みな、どこかしら画面としては不満が残ったりして、すべてが思ったとおりの画になったためしがないんです。でも、ぜんぶ思い通りの画が作れるようになってしまったら、もう映画を撮らなくなるかもしれません。映像作品で自分のイメージをなかなか"埋める"ことができないからこそ、これからも映画を撮り続けようと思うんでしょうね。あと、自分が映画を作るときに重要視しているのは、どういうビジュアルを見せようかということよりも、お客さんが映画を観終わった後の感情がどういう風になっているのかという、目に見えない部分のほうなんです。映画を観て「グッと来た」「怖かった」「ハラハラした」など、お客さんの感情がどういうところに"着地"するのかという部分に強い興味を持っています。ひとつひとつのカットで多少"粗い"ものがあっても、そこは他のカットと重ね、つなげた状態で観てもらえばいいかな、と思っています。
――『魔戒ノ花』の主要キャラクターの"その後"を描くと共に、京本さん、渡辺さんと『牙狼<GARO>』シリーズで活躍された俳優も登場して、本作はシリーズの「集大成」という雰囲気を醸し出しています。その一方で少し心配してしまうのは、『牙狼<GARO>』シリーズの「完結編」という意味も含まれているんじゃないかということですが……。
この映画に限らず、毎回『牙狼<GARO>』を作るときは、いつもこの作品が「完結編」だという思いで作っていますよ。常に、ここで「終わり」にしていいと。作品を作るとき「この映画、次に続きますので」という"含み"は持たせずに、ひとつの映画を1本、しっかり作りとおすという姿勢はずっと変わっていません。今のところは、気軽に「次の作品は~」なんて言えません。また、そう言えない状況にしようという心がまえで取り組んでいます。
――最後に『月虹ノ旅人』の公開を楽しみにしているファンの方々に、雨宮監督から一言メッセージをお願いします。
映画自体が、私から『牙狼<GARO>』ファンのみなさんに向けたメッセージになっています。『月虹ノ旅人』は、2005年の『牙狼<GARO>』からずっとシリーズを好きで観てくださっている人たちの心に、きっと響いてくれると思っています。今まで応援してくれた人たちが『牙狼<GARO>』を好きでいてよかった、と自信をもって言えるような映画にしたかったですし、そう思ってもらうためにはどうしたらいいか、真剣に考えて作りました。『月虹ノ旅人』ぜひお楽しみください。
映画『牙狼<GARO>-月虹の旅人-』は全国劇場にてロードショー公開中。
(C)2019「月虹ノ旅人」雨宮慶太/東北新社