魔界から現れて人間の邪心に憑りつき、人々を襲う魔獣「ホラー」と、これを殲滅する使命を持つ「魔戒騎士」たちの暗闘を描いた特撮テレビドラマ『牙狼<GARO>』。2005年10月に放送されて以来、テレビシリーズ、劇場版、スペシャル番組、スピンオフドラマとさまざまな後続作品が生み出された『牙狼<GARO>』シリーズは、2008年よりパチンコCR機となったり、アニメーション作品が作られたりと、さらなる世界観の広がりを見せ、現在に至る。

このたび、テレビシリーズとしては第4弾にあたる『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』(2014年)で活躍した魔戒騎士・冴島雷牙(演:中山麻聖)を主人公とした映画『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』が2019年10月4日より全国劇場にて公開されている。監督・脚本を務めるのは、『牙狼<GARO>』シリーズの生みの親として、斬新なビジュアルイメージと魅力的なキャラクターたちを創造してきた映像界のトップクリエイター・雨宮慶太氏。現実世界と幻想世界の狭間を行きかうような、独自の「雨宮ワールド」には熱烈なファンが存在しており、5年ぶりとなる冴島雷牙の凄絶な戦いのドラマに、大いなる期待が込められている。

  • 雨宮慶太(あめみや・けいた)。1959年生まれ、千葉県出身。イラストレーター、キャラクターデザイナーとして『巨獣特捜ジャスピオン』(1985年)『時空戦士スピルバン』(1986年)などに関わった後、監督として『未来忍者』(1988年)『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年/メイン監督)『ゼイラム』(1991年)『仮面ライダーZO』(1993年)などを手がけ、その卓越した映像感覚で各方面から注目される。2005年に『牙狼<GARO>』の原作・総監督・監督・脚本を務め、日本だけでなく海外にも熱烈なファンを生み出す。有限会社クラウド代表。撮影:宮川朋久

ここでは、映画公開を記念して雨宮監督にインタビューを敢行。『月虹ノ旅人』製作の経緯や、作品作りに込めた監督自身の思い、そして『牙狼<GARO>』シリーズを愛してくれる大勢のファンに向けたメッセージが語られた。

――2018年の『牙狼<GARO>神ノ牙-KAMINOKIBA-』に続いての劇場版となる『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』ですが、本作が"冴島雷牙"の物語となったのは、どんな理由があったのですか。

『月虹ノ旅人』はもともと、『魔戒ノ花』のテレビシリーズが終わるころ「雷牙の映画を作りたい」と思って企画したものだったんです。『月虹ノ旅人』というタイトルや、雷牙が謎めいた"列車"に乗る、というイメージはそのころからありました。

――それでは2014年の『魔戒ノ花』から数えて、5年ぶりに実現した映画ということになるんですね。製作に至るまでには、どのような経緯がありましたか。

『魔戒ノ花』の直後に作るはずが、諸事情で製作環境がどんどん延び延びになってしまい、その間に別のコンテンツが入ってきて、ふつうだったらそのままお蔵入りになるケースだったんです。でも、昨年にもういちど「雷牙の映画」にチャレンジできそうな環境が整ってきたので、メインキャストのスケジュールを確認し、製作にGOが出たわけです。そして、いま雷牙の映画を撮るんだったら、『魔戒ノ花』の直後ではなく、数年が経過した「現在」の時間軸でやろうと思い、ストーリーをもう一度見直して大幅に書き直しました。かなり直したので、完成した台本で以前の構想が残っているのは「列車が出るところ」だけになりましたね(笑)。

――謎の男・白孔に連れ去られたマユリを追いかける雷牙が、いつの間にか乗り込んでしまった不思議な列車は、車輛自体が小さな「町」であるかのような喧噪に満ちた、幻想的な空間でした。観客にとっては、ここが幻想世界なのか、現実の延長なのかがすぐにわからないような演出になっていましたね。

そういう画面を作っていくのが、作り手としていちばん難しい部分です。「こっち方向にいくな」と思わせて、やっぱり「こっちだった」と思われるのがもっともつまらないですから、ちょっと「あれ?」と思うような部分を見せておいて、それが観ている人たちの想像より少し上のほうに行くと「面白さ」につながります。列車の中で、雷牙を導いてくれる謎の少年が出てきますが、彼の正体が一体"誰"なのかという部分なんて、まさにそういった狙いから来ている要素です。ネタバレになるので、ここでは言えませんけれど……。