――雨宮慶太監督の創り出される幻想的な画面が『牙狼<GARO>』シリーズの魅力ですが、撮影現場ではCG映像との合成を想定した演技が要求され、役者さんとしてはたいへんなのではないでしょうか。
演技をしているときは目の前には何もありませんからね。『魔戒ノ花』の時に、雨宮監督がイメージしていたものを「映像」として観ていますので、今回の映画ではある程度の方向性はわかっていました。それでも、自分の想像力をはるかに超えた映像ができあがってくるので、やっぱり監督は凄いです! この場面で出てくるホラーはこんな感じなのかな、と思っていると、完成映像を観ると「こんなにたくさん!」と驚きました(笑)。実際には見えないホラーとの戦闘シーンについては、雨宮監督がご自分で描かれた画コンテを準備してくださるので、キャストもですがスタッフの皆さんと共にイメージを共有できるので、とてもスムーズです。
――2018年のアニメーション映画『薄墨桜-GARO-』で「声」の演技をされましたが、これが『月虹ノ旅人』の演技に活かされた部分はありましたか。
アニメもやらせてもらったことによって、動きや表情ではなく「声」だけで感情を表現するのはとても奥深く、難しいということを勉強させていただきました。具体的に声の出し方を変えたとか、意識としても大きく変化したわけではなかったのですが、アフレコが終わった後、雨宮監督から「(アニメを)やっただけのことはあるな」と言ってもらえたので、自分でも気づかないうちに意識が変わっていたのではないか、と思います。
――『薄墨桜』や『月虹ノ旅人』で中山さんの声を聴いていますと、きれいに響く低音ボイスが三田村邦彦さんとそっくりで、さすがは親子だと感じました。
そうなんです。よく声で父と間違われることがありますよ。特に、声のトーンを低くしてしゃべっているときに(笑)。松竹の京都撮影所に行くと、以前に父と一緒に仕事をしていたスタッフさんたちから「三田村くんかと思ったよ!」なんて言われることが多いんです。
――三田村邦彦さんといえば『必殺仕事人』シリーズの錺(かざり)職人・秀がなんといっても有名です。そういえば『月虹ノ旅人』に「特別友情出演」されている京本政樹さんも、『必殺仕事人V』などで組紐屋の竜を演じられて活躍していました。闇にうごめくホラーを殲滅する魔戒騎士の雷牙を演じられている中山さんですから、「仕事人」の役柄も似合いそうですね。
仕事人、ぜひ取り組んでみたいですね! 実は、親父(三田村)から譲り受けた「カンザシ」が家に置いてあるんですよ。日本に3本しかないうちの1本です。僕としては、いつでも"シゴト"をする準備は出来ています。カンザシの回し方も親父に教わりましたし(笑)。
――お話を『月虹ノ旅人』に戻しまして、ひさびさに雨宮監督と現場でご一緒されて、どんな印象を持たれましたか?
『魔戒ノ花』のときと同じく、優しく見守ってくださり、好きなようにやってみろ、と言ってくださるときがある一方で、イメージと違う芝居をしたときなどは本当に細かく説明していただけて。とても尊敬できますし、いつも頼りにしています。監督であり、父親のような存在なんです。