「パターンオーダー」の域をはるかに超えたAoki Tokyoの実力
採寸の工程では、メジャーで全身くまなくサイズをチェックするのだが、その徹底っぷりはスゴいの一言に尽きる。
首周り、着丈、肩幅、身幅、袖丈、袖幅、袖口幅、股上、股下、渡り、裾巾……とにかくあらゆる箇所をすべて測りまくる。
すごく言いにくそうにしていたスタッフさんに無理やり感想を求めてみた。
「そうですね……まぁあのぉ、ええ、そうですね、年齢の割に少しお腹が出ていることを除けば標準体型だと思います」
これを受けY氏は「2年ぐらい前の時点では168cm 59kg、『スラムダンク』の宮城リョータと完全に同じ体型だったのでご参考までに」と謎のインフォメーションでお茶を濁す。
採寸後は、パターンオーダーのベースとなるスーツの型をセレクト。以下の4種類の中から好みや体型に応じて選択していく。
(1)「エクストラスリムフィット」――無駄のないシルエットで、ミニマルなデザイン。かなりシャープなシルエット。無論、お腹の出ているY氏はパス。
(2)「モダン・ブリティッシュ」――シャープでありながら肩パッドも入った、構築的なデザインが特徴。逆三角形シルエットが洗練されたロンドンスタイルを演出する。
(3)「Aoki Tokyo プレミアム」――「Aoki」の名を冠したフラッグシップモデル。ナポリの伝統的なクラシックスーツスタイルで、同店がもっとも自信を持って薦めるモデル。
(4)「ワールドワイドベーシック」――ゆとりを持って着られるワイドなデザイン。がっしり体型の人にオススメ。強いて言えば某トランプ大統領みたいな感じのシルエットだ。
今回は(2)と(3)で迷った結果、「Aoki Tokyo プレミアム」に決定。いま一番流行りの型であること、そしてなで肩によく馴染むことなどが決め手となったようだ。さっそくサンプルを着用してみることに。
スタッフさんによると、Aoki Tokyo プレミアムはY氏の身体にかなりフィットしており、「ほとんど直すところはない」そうだ。そもそも同店はベースとなるスーツに絶対の自信を持っているため、あれこれイジり倒す必要もなく、パターンオーダーでも「最低限で最適な補正」をモットーに掲げている。
それでも補正すべきところはある。例えば肩周り。
よく見ると、左右とも微妙にシワができている。こうしたシワも、Aoki Tokyoのパターンオーダーなら綺麗に補正できる。
ちなみにY氏は“反り身”気味であることも判明。Aoki Tokyoなら、反り身に合わせて肩のラインの角度を変更することも可能で、スタッフさんも「パターンオーダーでここまで調整ができるのはAoki Tokyoだけです」と胸を張る。
一般的に、パターンオーダーでは鈴ピンと呼ばれるまち針が使われることが多いそうだが、Aoki Tokyoは頭部分が小さいシルクピンを使用。そのほうがピンが目立たず、お客様に完成後のイメージをしてもらいやすいからだという。
今回は背中、胴周り、裾部分の調整以外にも、フロントボタンの位置を2cmほど下げ、着丈を2cm伸ばすなどの補正も行うことにした。ここまで約60分。あとは3週間後の完成を待つだけだ。
後編へ続く。