夜間など光量が足りないシーンを明るく撮影する「ナイトモード」も、iPhone 11で加わった注目の新機能です。高速連写した複数枚の写真を自動的に重ね合わせ、ノイズを抑えつつ明るく仕上げてくれます。重ね合わせる写真は最低9枚と多く、明るさが足りないとそれよりも増えるとのことです。
同種の機能は、以前から多くのデジタルカメラやスマホが採用しており、機能的に目新しいわけではありません。しかし、iPhone 11のナイトモードは「わざわざ撮影モードを切り替える必要がない」「ライブビューが明るく、表示がカクカクしない」「撮影後の処理時間が圧倒的に早い」「かなり暗い状況でも手持ちで撮影できる」という点が優れていると感じました。
夜景など明るさが足りない状況では、左上に月のアイコンが現れ、自動的に1秒超のスローシャッターでの撮影に切り替わります。シャッターボタンを押せばナイトモードでの撮影となり、指定された秒数の露光が終わったら写真が生成されます。デジタルカメラでは、撮影後の画像処理に数秒間待たされてテンポよく撮影ができない機種が多いなか、iPhone 11は露光が終わったらすぐ次の撮影ができるのがポイント。A13 Bionicチップの高い処理性能が感じられました。
かなり暗い状況だと10秒近いスローシャッターになる場合もありますが、手持ちでもブレがほとんどなく、三脚などでiPhoneを固定する必要はないと感じました。レンズ内の手ぶれ補正機構をフル活用しつつ、画像の重ね合わせ技術が優れているためだと思われますが、手持ち夜景がここまで手軽にできるのは驚かされます。
鹿野カメラマンも「これまでのiPhoneも明るいレンズや手ぶれ補正機構が搭載されていましたが、光が乏しい状況ではメリハリのない写真になりがちでした。それがこのナイトモードで一変。まるでライティングをしたような仕上がりが得られます。デフォルトではシャープネスがやや強い気もしますが、撮影シーンを格段に広げるのは確かでしょう」と評価していました。
iPhoneの絵作りは「いかにリアルに忠実であるか」
さまざまなシーンで撮影したiPhone 11の写真を見て感じるのは、「目で見た記憶通りの色合いに仕上がっている」ということ。iPhone 11の絵作りは、「リアルに忠実で過度な誇張はしない」を大前提としているそう。センサーがとらえた情報から、被写体やシーンを正確に判別。夜間などの暗いシーンも、いたずらに明るくすることはせず、暗いところは暗くして夜の雰囲気を残す味付けにしているそうです。
さらに「写真に人間が写っていれば、まず目が行くのは顔である」という理論のもと、顔をきれいに仕上げるそう。今回、複数の光源が入り交じるミックス光の難しい状況で撮影しましたが、肌の色が変に転ぶことがなく、見た目に忠実で生き生きとした印象に仕上がりました。
鹿野カメラマンは「今使っているiPhone Xよりも精細感が高く、何よりスペックでは表しにくい情緒や空気感といった部分の表現は格段に向上した印象を受けました。iPhone 11なら、本気の写真が撮れると実感しました」と評価します。
最新カメラでも不可能な撮影ができる革命児
iPhone 11のカメラ機能をさまざまなシーンで試してきましたが、総じてカメラをよく使っている人ほど驚かされる部分が多く、スマホ業界だけでなくカメラ業界にとってもインパクトの大きな存在になると感じました。
13mmクラスの超広角撮影は、これまで一部のカメラマニアだけが味わえる限られたものでした。超広角に対応した交換レンズは高価なうえに重く、一般の写真ファンにとっては手の届かない存在だったからです。ところが、iPhone 11が登場すれば、普通の人がいつも持ち歩いているiPhoneで超広角撮影が手軽に楽しめるようになります。超広角がこれほど多くの人にとって当たり前の存在になるのは、長いカメラの歴史から考えても画期的なことだといえます。遠近感を強調した独特な描写が楽しめる超広角撮影はSNSで話題になるのは間違いなく、写真のトレンドを変えるかもしれません。
複数のカメラを利用してフレーム外の範囲を自動で撮影しておき、編集時にその情報を利用できるタイムマシン的な機能も、長くカメラで写真撮影を楽しんできた人ほど「常識外れ」だと感じる驚きの機能だと感じます。一般のカメラでは成し得ない機能なので、「カメラを持っているがあえてiPhoneで撮影する」というケースが今後増えるでしょう。
シャッター1つで暗闇をきれいに撮れるナイトモードも魅力的に感じます。もちろん、ミラーレスなどのカメラなら、三脚にしっかり固定して適切な撮影設定で撮影すれば、iPhoneよりも断然きれいな写真が得られます。しかし、iPhoneはそのような専門的な知識や機材を必要とせず、シャッターを押すだけで誰でもきれいな写真が撮れるのがポイント。撮影した写真を表示する画面はiPhoneのほうが大きく精細なので、「カメラよりもiPhoneのほうがきれいに撮れる」という意識が普通の人に広がるかもしれません。
カメラだけを見ても顕著な改良が施されたiPhone 11、「スマホカメラ」の常識を必ずや変えてくれるはずです。一度、店頭で試してみてください。
カメラマン
鹿野貴司
1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。
モデル
桂華
フリーモデル兼カメラマン。カメラマンとしては「私的写真集選手権」(玄光社「フォトテクニック デジタル」主催)にて多数受賞歴あり(9月17日~22日に東京・渋谷で展示会を実施)。モデルやカメラマンのかたわら、「リュバンエイト」というキャスティング・SNSマーケティングの代表も務める。Twitterアカウントは「@keika_pt17」。