オフィスと植物の相性がいい理由

そもそもバイオフィリックデザインとは、アメリカの生物学者・ウィルソン博士が1984年に提唱した「バイオフィリア仮説」から派生したものだというが、欧米ではここ5,6年ほどで急速にこの概念が広まり、アジア諸国でも徐々に普及しつつあるという。

「オフィス空間の快適性などを重視する“ミレニアル世代”の価値観とも相まって、日本でもここ2,3年で徐々にその裾野が広がっています。もともと受付や応接室などでのおもてなしの要素として観葉植物は活用されてきましたが、自社の従業員を応援する働く空間を提供することがコモレビズという事業の大きな命題です」とは、PBSの鈴木章太郎氏。

緑の心理的効用は感覚的にも納得感があるが、コモレビズでは生体反応などのデータを集めることでエビデンス化に注力している。ストレス軽減効果の高い植物と負荷を与える植物のデータベースを持ち、ニーズに応じてエビデンスに基づいた植物を提供できる点も強みとなっているようだ。

  • コモレビズには、ストレス軽減効果のある植物とそうでない植物を判定した独自の植物データベースがあるとのこと

「集中力向上やコミュニケーション促進など要望に応じ、緑視率のコントロールをしながらコモレビズ独自の植物データベースから植物の種類を選定しています。アロマなどとは異なり植物は持続的かつ緩やかに効果が現れるのが特徴で、香りの強いハーブでもない限り、個人的な好みによるデータのブレも限りなく少ない。そのため、オフィスのような比較的多くの人が長時間いる空間と相性が良いんです」

植物の色・形・量などの視覚情報が生体反応に影響を及ぼす因子のひとつだそうだが、トヨタ自動車との共同研究などでストレスの高低以外の指標や因子の種類を広げ、より詳細なエビデンスづくりも進めているという同社。

  • コモレビズを実際に導入した実証実験などにより、コモレビズの緑やハイレゾ音源とストレスの関係を検証している

「コモレビズ導入後の顧客の効果測定のためのセンシングでは、疲労やストレスの度合いを解析し、顧客企業にレポートを提供して生産性向上や健康経営に活用していただいています。Webカメラなどで心拍を読み取りますが、個人情報にならない形で匿名IDの付与や数値化をしてデータ処理しており、声紋解析によるストレスの見える化などの仕組みも開発検討中です。話の内容ではなく声紋による解析なので、日本語以外の言語でもストレスや疲労の度合いが把握でき、声紋からうつ病の予兆などを検知するサービスの実用化などを目指しています」

  • カメラによる非接触バイタルセンシングの手法として、ここにもパナソニックの最先端テクノロジーを活用。コモレビズ導入後の効果測定で、従業員のストレスや疲労度合いも見える化してくれる

「the DOCK」での新しい取り組みには、映像や音、照明の設備などが含まれるが、パナソニックの音響機器ブランド「Technics」の空間音響設計技術を採用した音響は、利用者アンケートで特に高く評価されているそうだ。

「Technicsチームとコモレビズのチームが0から音の反響などを計算し、空間レイアウトをつくっていきました。小鳥のさえずりや虫の鳴き声、木々のさざめきによって自然環境を表現することで、ストレス軽減効果がさらに高まることは実証実験などでも明らかになっています。視覚的にわかりやすい植物と比べると、音響はどちらかというと脇役になりやすいんですが、自然を構成する要素としてハイレゾの自然音は重要な要素。今後はさらに空調や気流、自然光などのアプローチも進化させていきたいです」

PBSは同施設へのコモレビズ導入のほか、「TENNOZ Rim」の運用も受託しており、さまざまなテーマや世代に対応したセミナーなども開催していくという。1F部分にはプレスリリースイベントなどを行えるステージを備えたカフェも秋口にオープン予定だ。