ターボエンジンは動力性能に不満なし

もう1台の試乗車である「N-WGNカスタム」は、渋いブラウンパールカラーだ。フロントはスクエア形状のLEDヘッドライトと、ギラギラ感を抑えたメッキパーツによるグリルを組み合わせたもの。ホンダでは「大人の感性に響く」デザインだと説明している。インテリアはブラックを基調としたもので、チタンカラーのガーニッシュやクロームのパーツが注意深く配置されている。

  • ホンダの新型「N-WGNカスタム」

    ホンダの新型「N-WGNカスタム」。グレードは3種類で価格は151万2,000円~179万3,880円

試乗した「L・ターボ Honda SENSING」が搭載していたのは、最高出力64ps(47kW)/6,000rpm、最大トルク104Nm/2,600rpmwを発生する3気筒658ccのDOHCターボエンジンだ。走り始めると、低い回転域からノーマルの6割増しのトルクを発生するターボエンジンと、N-WGN専用にセッティングされたCVTの相性が良く、高速へ合流するための上り坂や、巡航速度から一気に加速するような場面でも動力性能に全く不満がなかった。

アクセルへの追従性の良さはノーマルN-WGNを上回る。そのあたりにこだわるのであれば、カスタムを選んだほうがいい。通常走行ではあまりアクセルを深く踏む必要がないため、燃費計は20km/L前後を表示。試乗した日は雨だったが、走行中のエンジン音や雨音、横を通過するクルマの通過音はしっかりとカットされ、静かな車内が保たれていた点も評価できる。

  • 新型「N-WGN」のターボエンジンは、高速道路への合流や坂道での発進でも不満のない走りをみせた

シンプルな造形を実現できた理由

試乗後、N-WGNの開発に携わった本田技術研究所 四輪R&Dセンターの今野辰二郎研究員に話を聞いた。同氏によると、新型N-WGNの最大の特徴は「渋滞時追従まで可能なホンダセンシングを、最も安い127万円のグレードから付けたこと」であるとのことだ。

「費用対効果は相当、高いです。ライバルの日産『デイズ』にも『プロパイロット』(自動追従機能)の付いた仕様がありますが、価格は156万円で、高いグレードにしか用意されていません。我々は、より多くのユーザーに普及したいと考えています」

N-WGNを担当する前は、中国で高級車「アヴァンシア」を担当していたという今野さん。「500万円もするアヴァンシアでも、上位モデルにしかホンダセンシングを採用していませんでした。そういう意味では、日本国内において、軽自動車の競争力というのは、すごく必要になってきています」というのが軽自動車市場の見方だ。「高齢者の方にも(自動追従機能を)使っていただきたいですね。そうすれば、安全性が向上するだけでなく、車速が落ちることにより渋滞が発生する場面も減ると思います」とのことだった。

シンプルなデザインを実現するのにも、かなりの工夫が必要だったと今野さんは語る。

「シンプルな面で構成するボディーを作り上げるのは大変でした。通常は、ボディサイドに『キャラクターライン』というものがあちこちに入ってくるのですが、今回は一切、排除しました。デザイナーからすると、『ここに1本、線を入れてくれ』と要望したくなるものです。そことの戦いがありました。平らな面を使用すると、実は剛性を出すのも難しくなります。そこに対処するために中身を工夫して設計し、お金もかけました。おかげで、『New Simple!』というコンセプトを実現することができました」

  • ホンダの新型「N-WGN」

    「New Simple!」というコンセプトを体現するボディサイドのデザイン

「N-BOXは純粋なファミリーカーです。一方、N-WGNはファミリー以外の方、例えば子供がいない独身の方や初めてクルマを購入する方、あるいは子育ての終わったシニア層などを全部取りたい。そう思って開発しました。月間販売台数は7,000台を計画していますが、現在は3割増しの受注量で、ノーマルとカスタムの割合は6:4となっています。一番人気は白で、好調な滑り出しを見せています」

今野さんによれば、N-WGNの出足は好調とのこと。日本一の販売台数を誇るN-BOXを身内に持つN-WGNの開発陣には、おそらく、たくさん販売しなければというプレッシャーがあるはずだ。この数字がどこまで伸びるか、注目していきたい。

  • ホンダの新型「N-WGN」
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