最近巷で高まるAMD人気だが、レノボ(Lenovo)のThinkPadは継続してAMDプロセッサを搭載するノートPCをリリースしており、今回紹介する「ThinkPad X395」は、最新のRyzen PRO Mobileを搭載する「Xシリーズ」のモバイルノートだ。
スタンダードモバイル筐体にコスパとトレンドを共存
ThinkPad Xシリーズには、フラグシップのX1 Carbon、そしてスタンダードモデルのX300シリーズがある。ThinkPad X395はX300シリーズに属する最新機種で、中でも本機はIntel CoreではなくAMD Ryzenをベースとしている。Intel Coreを搭載するThinkPad X390は兄弟モデルだ。
AMD CPUを選ぶかIntel CPUを選ぶか。少し前ならIntel CPUを選ぶ方が多かっただろう。しかし、現在CPU全般で見渡せばAMD Ryzenの躍進が注目を集めている。モバイルもデスクトップも基本的には同じCPUアーキテクチャを採用していることから、パフォーマンスという点では同列に検討してよい時代になってきている。モバイルとして注目すべきポイントは、持ち歩き時のサイズや重量といったフォームファクタ、デザイン、バッテリー駆動時間、接続製といったところになるだろう。
ThinkPad X395は、およそThinkPad A285の後継機と言える。ThinkPad A285はThinkPad X280をベースにAMD Ryzen PRO Mobile 2000シリーズを搭載したモデルだったが、レノボの位置づけとしてはXシリーズではなく、Aシリーズとして独立していた格好だ。そんなAMD Ryzen搭載ThinkPadも、2代目となり今度はXシリーズに統合された。
また、モデル名の1の桁が「5」となるのがAMD CPU搭載モデルをあらわし、10の桁「9」はThinkPadとしての世代、そして100の桁が「2」から「3」へとアップしたのは画面サイズ拡大にともなって、ということになる。ThinkPad A285/X280は、12.5型パネルを採用していたが、ThinkPad X395/X390はベゼルの狭額縁化に合わせ13.3型パネルに拡大しており、100の桁が「3」へと引き上げられた。
ThinkPad X395の本体サイズはW311.9×D217.2×H16.9mm。重量は1.28kg。実際、サイズ感としては従来の13.3型クラスのモバイルノートと比べると若干小さく、12.5型クラスに近い。このサイズ感に13.3型パネルの組み合わせは、現在のモバイルのトレンドと言える。重量は、ほぼ1kgのX1 Carbonシリーズと比べるとわずかに重くなるが、スタンダードモバイルとしては十分に軽量級と言えるだろう。
ディスプレイのパネルはLEDバックライト付きの13.3型IPS液晶で、解像度は1920×1080ドット。BTOでは1366×768ドットパネルも用意されている。フルHD、IPSパネルを搭載した評価機は、視野角も広く発色も十分だった。表面はノングレアで、天井照明などの映り込みも抑えられている。機密情報を取り扱うビジネスでは、視野角が広いことがのぞき見につながる可能性もあるが、のぞき見を検知して視野角を狭める「ThinkPad Privacy Guard」搭載モデルも投入予定とされている。こうした点はビジネス向けのThinkPadらしいところだろう。
上部ベゼルにはWebカメラも搭載されている。720pまでの対応というのはビジネスチャットには十分だが、プライベートのビデオ通話やストリーミングには少々スペック不足かもしれない。ここはIRカメラでもあり、Windows Helloによる顔認証サインインにも対応する。ほかタッチパッド横には指紋認証センサーもあり、2つの生体認証を選択可能だ。
そしてWebカメラには物理的にON/OFFできる「ThinkShutter」機能も付いている。カメラセンサー部分にスライド式のカバーを設けるこの仕組みだが、ThinkPad X395のものはスライドのつまみがベゼルのエッジ部分に移設された。誤ってカメラセンサー部分に触れてしまうことが減り、指への引っ掛かりもよい印象だった。
ThinkPadらしさを受け継ぐデザインとインターフェース
液晶天板はブラックのマット塗装。角にはThinkPadロゴもあるレノボ以降の伝統デザインだ。左右ヒンジがシルバーなところもそうだが、基本的に、デザインも含め、ThinkPadのよさは時代とともに買い換えをしても大きな変更がないところにある。旧機種から新機種への移行がとにかくスムーズなのだ。
キーボードの配列もThinkPadとして統一されたものだ。主要なキーのピッチは19mm確保されているが、やや幅の狭い本機ではキーボード右側の記号キー付近を中心に一部幅の狭いキーが採用されている。とはいえ配列自体に変わりはないため、指先を滑らせた際の感触でだいたい把握できる。薄さを追求しつつも十分なストローク、そして中央が凹んだ指先に馴染みやすいキーなど、キーボード入力中心の用途には好感触だ。
ここで他社のノートPCとの違いで注意したいのが、FnキーとCtrlキーの順。ThinkPadは伝統的に左がFnキーになる。慣れてしまえば違和感なく使いこなせるが、「左端はCtrlキーでなきゃ」という方はBIOS内にこれを入れ換える項目があるのでそれを利用しよう。
ThinkPadと言えば、ポインティングデバイスのTrackPointも当然備えている。「G」「H」「B」キーに囲まれた場所にある"赤ポチ"、スペースキーの下にある左右クリック及び中央スクロールボタン、そしてその下には一般的なノートPC同様の左右クリックボタン内蔵タッチパッドという配置だ。つまり、筆者のような"赤ポチ"愛用者も、一般的なノートPCに慣れた新参ThinkPadユーザーも好みの入力方法を選択できる。タッチパッドは13.3型としては大きく、幅は約10cm、高さは6.3cm。ちなみにX1 Carbo(2017)と幅は同じだが高さは7mmほど大きい。
指紋認証センサーは、タッチパッドの右横に位置する。先に紹介したとおり、Webカメラによる顔認証、指紋認証センサーと、2種類の生体認証が利用できる。ほかに、ハードウェア暗号化、セキュリティーロックスロット、先に紹介したThinkPad Privacy GuardやThinkShutter、Ryzen Pro Mobileに搭載された「AMD GuardMI」など、ビジネス向けに万全なセキュリティ機能を搭載している。
インターフェースでは、まずUSB Power Delivery(USB PD)による充電に対応しており、USB 3.1 Gen2 Type-C端子を左側面に2ポート(ディスプレイ出力対応、1ポートはイーサネット拡張コネクター2と兼用)搭載している。USB Type-Aは左右に1ポートずつ。一つはUSB 3.1 Gen2対応で、もう一方はGen1までの対応だ。有線LANに関してはイーサネット拡張コネクター2を利用し、専用アダプタが用意されている。そのほかHDMI出力端子、オーディオ入出力端子を備える。モバイルノートPCではスリム化とともに端子をUSBに集約しそのUSBも最小限にとどめる動きがある。本機も有線LANについてはアダプタ化しているが、Type-C、Type-Aともに2つあるのは十分に充実していると言えるだろう。なお、有線LANに関しては、アダプタで変換するのではなく、本体側にLANチップを搭載している。
無線機能に関しては、Intel Wireless-AC 9260(IEEE802.11ac)を搭載しBluetooth v5.0も利用可能だ。そしてオプションにWWAN(LTE)が用意されており、これをオプション装備することで無線LANに縛られないインターネット接続が可能になる。WWANスロットは後部