コミュニティが根付くには「オフライン文化」の定着が必要
eスポーツの盛り上がりとともに、いくつもeスポーツ施設がオープンしていることについては、疋田氏の目にどのように映っているのだろうか。
「そうですね。正直、いまはeスポーツ施設の増加が先行しているような印象を受けます。一般的な流れを考えると、プレイヤー人口の増加に伴って施設が増えていくわけですが、現状は需要に対して供給がだいぶ先行してしまっているのではないでしょうか」
現在はプレイヤー人口に対して、eスポーツ施設が多くなってきていると指摘する疋田氏。しかし、eスポーツイベントの増加などによって、今後ますます施設は増えていきそうだ。増加し続ける施設とコミュニティが共存していくためには、何が必要なのだろうか。
「各施設にコミュニティがしっかりと根付く必要があると思います。そのためにも、まずは日本にオフラインの文化が、いま以上に定着する必要があるでしょう。もちろん施設がどんな取り組みをするかにもよりますが、現状、eスポーツプレイヤーと呼ばれる人は、大多数がオンライン上でプレイしています。なぜかというと、いまはそれが“普通”だから。そこで、あえてオフラインでプレイする楽しさを理解してもらう必要があると思います」
オンラインでゲームをプレイするだけでも楽しいが、オフラインならではの楽しさもある。その楽しさを知ってもらい、「日常的にオフラインでもゲームをする」状況になることが、コミュニティが根付くための第一歩だと疋田氏は考える。
「そもそも、eスポーツ施設がどんなものかというイメージがなければ、足を運ぶことはないでしょう。ただ、事前にちょっとだけでも知識があれば、フラッと行くようになるかもしれません。なので、まずはeスポーツ施設がどういう場所か、知ってもらえればいいなと思っています」
そのためにe-sports SQUAREでは、9割近くのイベントを、インターネットの生放送で世界に向けて発信している。もちろん、FCAも配信サービス「Twitch」を通じて配信しているので、興味のある人は水曜の19時以降に動画でイベントの雰囲気をチェックするのもいいだろう。
スタッフ全員が熱量のあるeスポーツ人材
どこまでもコミュニティに寄り添った運営をしているe-sports SQUAREだが、数あるeスポーツ施設と比較して、ほかにはどんなところが強みなのか、疋田氏に聞いてみた。
「先ほどもお伝えしましたが、e-sports SQUAREは年間130以上のイベントを運営しているうえに、ほかにeスポーツ施設がほとんどなかった時代から積みあげたノウハウがあります。それは、おそらくどこにも負けないでしょう」
e-sports SQUAREがオープンしたのは2011年。当初は千葉県市川市に店舗を構えていたが、2014年に現在の秋葉原に移転した。たしかに、約8年もの間、積み重ねられた経験は近年オープンしたばかりの施設にはない強みといえるだろう。だが、なによりも疋田氏が自信を持って答えたe-sports SQUAREの強みは「スタッフの熱量の高さ」だ。
「そもそもeスポーツを発展させたいと考えている強い熱意のある人でなければ、スタッフには採用しません。メディアを通してeスポーツを知ると、華やかなシーンが先行しますが、実際には泥臭い仕事がたくさんあります。そのような状況で続けていくには、アツい想いが必要なんです。そのスタッフの知識やスキル、熱意はイベントのクオリティにも直結するでしょう」
e-sports SQUAREのスタッフは、全員がeスポーツを発展させたいと願うゲーマー。また、スタッフOBのなかには、eスポーツの最前線でキャスターやゲーム内カメラマン、イベント運営のディレクターなどとして活躍している人もいるという。現在e-sports SQUAREで働いているスタッフも、近い将来にはeスポーツ界を牽引する人材として活躍しているかもしれない。
――水曜日19時以降にはストVのコミュニティが集まるe-sports SQUARE。誰かと約束したわけではなくとも、フラッと立ち寄れば、そこにはゲーム仲間がいる。そして、情報交換したり、ガッツリとスキルを磨いたりと自由にストVを楽しむ。疋田氏の言っていた「コミュニティが根付く」とは、きっとこういうことを意味するのだろう。
eスポーツのプロシーンはきらびやかなステージで大観衆を魅了するが、コミュニティには気軽に仲間とワイワイゲームする楽しみかたもある。一度オフラインのコミュニティに目を向けてみると、オンラインだけでは気づかなかった新しいゲームの楽しさが開けるかもしれない。