自作の人力飛行機競技会『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2019』(読売テレビ・日本テレビ系、28日19:00~20:54)が、今年も滋賀県彦根市の琵琶湖・松原水泳場で、7月27・28日の2日間にわたって開催された。

初日は、動力を一切使わずグライダーのように飛行機を飛ばして距離を競う「滑空機部門」の7機目となるチームがプラットフォームに上ったところで、台風による強風で“競技続行不可能”と判断。午前中で中止になってしまったが、翌日は好天に恵まれ、文字通り暑い、熱い戦いが繰り広げられた。

マイナビニュースでは、この模様を現地で取材。そこでは、青春を懸けて参加する出場者たちの笑顔と涙が輝いていた――。

  • プラットフォームから飛び立つ“鳥人間”

■新MC・ナイナイ矢部「やりきれないよね」

人力を動力とするプロペラ機の距離を競う「人力プロペラ機部門」からスタートした2日目。優勝候補は、2017年に折り返しルール制定後初の最長距離・40㎞フライトを達成し、プラットホームへ戻ってくるという偉業を見せた「BIRDMAN HOUSE 伊賀」だ。この記録のため、琵琶湖の2つの島のチェックポイントをクリアし、三角形を描くコースを飛んでプラットフォームへ帰ってくるルールが新たに導入され、最長距離は60㎞に延長されている。

昨年は悪天候で競技不成立となったため、この新ルールに実質今年から挑む参加者たち。トップバッターは「東京工業大学 Meister」で、イケメンなのにバレンタインチョコをもらったことがないという土田尚樹さんがコックピットに乗り込み、午前6時14分、この日のファースト・フライトがスタートした。ここから、計11機のプロペラ機が飛び立つことになる。

  • 人力プロペラ機部門トップバッター「東京工業大学 Meister」の離陸

長年解説を務める鈴木正人氏(大会テクニカルアドバイザー)によると、プラットフォーム上は「向かい風でほぼ無風。ひとことで言ってバツグン」とのことだったが、琵琶湖の奥に進めば進むほど、複雑な風が吹いている様子。順調にスタートしたと思いきや、機体が予想外の方向に旋回してしまうチームがあった。

陸地に着地するのは危険なため、湖岸に近づきすぎると大会本部から着水指令が出ることになっており、今年からMCに就任したナインティナインの矢部浩之も「(着水指令が出たら)やりきれないよね」と気が気でない。パイロットは何とか方向を修正しようとし、少しでも湖岸から離れると、応援団や特設スタジオから大きな拍手が起こる。

  • 無風の会場

  • 琵琶湖にそびえ立つ高さ10mのプラットフォーム

■湖面接触から再浮上の驚異の粘り

強豪チームになれば数十kmレベルを飛ぶ「人力プロペラ機部門」は、機体の性能はもちろん、パイロットの体力が大きなポイントとなってくる。しかし、真夏の日差しが襲う中、コックピットは風の影響を最小限にする狭い密閉空間という厳しい環境下で、場合によっては数時間もペダルを漕ぎ続けなければならない。

製作に長い期間を必要とする上、着水=破壊のため一度しか飛ぶことのできない『鳥人間コンテスト』の機体は、本番同様に琵琶湖でテストフライトをするわけにはいかない。パイロットたちは一様に「実際に飛んでみると全然違いました」と、自然を相手にすることの難しさを実感していた。

体力がなくなってくると、自ずと機体の高度が徐々に下がっていく。湖面にスレスレになるたび、スタジオで武井壮が「限界を超えろ!」と気持ちを送り、プレス席からも思わず悲鳴が上がる。一度湖面に接してから再浮上するという驚異の粘りを見せるパイロットもいたが、ついに着水してしまう姿は、パイロットが最後の力を振り絞って力尽きたことが想像でき、なんとも言えない切なさだ。

スタッフに救助されると、まさに足が棒のように動かなくなるパイロットが続出。着水からしばらく時間が経って受けるインタビューでも息が切れていることから、その過酷さが伺えるだろう。

  • 着水後、チームメイトと再会したパイロットたち

■涙が止まらないパイロットたち

そこまで全力を尽くしたにもかかわらず、帰りを待ち受けるチームのメンバーに対し、特に学生パイロットたちは皆、「申しわけない」「本当にごめんなさい」と涙ながらに謝罪する光景が見られた。その姿はまるで、甲子園の延長戦で死闘を演じながら、サヨナラホームランを打たれて力尽きたピッチャーのよう。

それを、やはり涙で受け止め、励ます仲間たちから、この大会に青春の全てを注ぎ込んで臨んでいることが伝わってくる。

  • 機体を回収する参加チーム

それからしばらく時間が経つと、着水して破損した機体が帰ってくる。長く美しい弧を描いていた翼がダメージを受け、陸に引き上げられる姿は、一見無残に見えるが、どのチームもメンバーたちが機体の労をねぎらうように、丁寧に回収作業を行うのが印象的だった。