――そうなんですね。そもそもの話になりますが、佐久間さんを起用した理由はなんだったのですか。
『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを起用するにあたっては、過去1年の特番の反響やリスナーの声などを反映しています。昨年、佐久間さんが『AKB48のオールナイトニッポン』に何度か乱入し、そのときの放送が面白いなと思っていました。AKB48関連で秋元康さんとも打合せをする中で「佐久間でラジオやったら面白いんじゃない」という後押しもありました。
フジサンケイグループの放送局で他局のテレビプロデューサーがレギュラーとしてしゃべるというのは、正直ハードルは高かったんですけど、そこもラジオ業界が過渡期ということもあって、実現しました。『オールナイトニッポン』は自由なことができるという原点に立ち返った結果だと思っています。
――ここまでの佐久間さんの『オールナイトニッポン0(ZERO)』の反響はいかがですか。
radikoの生放送やタイムフリーの数字もかなり良いですし、テレビ朝日の加地(倫三)さんが来た回などは特にハッシュタグが盛り上がったり、radikoでも1週間ギリギリまで再生されたりします。反響が大きくなっている要因は、佐久間さんのラジオに対する“熱”がラジオを聴く人に届いているからだと思います。10月には本多劇場で番組イベントをやりますが、尋常じゃない数の応募が来ました。刺さる人にはやっぱり届くんだなと思いましたし、すごくラジオっぽいですよね。
――確かに佐久間さんの番組にも、他局系列の加地プロデューサーや、『バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)のイメージが強い放送作家・オークラさんが来ましたね。
佐久間さんの番組が1つの流れをつくっている感じはします。佐久間さんの『オールナイトニッポン0』はこの上半期で一番のエポックメイキングじゃないですかね。それとニッポン放送自体も、開局以来あった制作部が廃部になったり、編成部もなくなりました。さらにはフリーアドレスになって、僕の固定席もなくなって(笑)。
そう考えると、ラジオ業界としてもニッポン放送としても、自由にやれる空気感があります。「パーソナリティは他のラジオ局には原則出ない」といった既存の考え方を突破できるチャンスなのかなと思います。
■Creepy Nuts・DJ松永はTBSラジオでもレギュラー出演中
――他のラジオ局に比べても、特にニッポン放送はそうした意識が強いんでしょうか。
ニッポン放送は今までどちらかというとかなり保守派だったんですが、今はすごく改革派・推進派になっていますね。例えばですが、Creepy NutsのDJ松永さんがこの4月からTBSラジオの夕方の『ACTION』に出演していますが、今までだったら『オールナイトニッポン0(ZERO)』もやっていますし、なかなか実現しにくかったと思います。でも「DJ松永さんのラジオトークをもっと多くの人に聴いてほしい!」という気持ちで実現したというのがあります(笑)。
――そういった意識になったきっかけはあるんですか。
ずっとラジオの現場にいましたが2016年7月に異動し、約2年ほどイベントの部署にいました。ラジオ制作の現場から離れてみると、思った以上に世の中の人はラジオを気にしていないし、聴いていないなと客観的に思ったんです。そして2018年4月、イベントの部署から『オールナイトニッポン』のプロデューサーに戻った後は、ラジオ業界の状況はすごく過渡期で、状況が変わっていました。
そうした中で「ラジオは他局と積極的に交流したり、話題発信しないと他のメディアやネットに埋もれちゃうな」と思うようになりました。それですぐにやったのが、『岡村隆史のオールナイトニッポン』とNHK総合テレビの『シブヤノオト』とのコラボです。
■NHK番組と『オールナイトニッポン』のコラボ
――2018年5月にやったものですね。ラジオとテレビ番組のコラボということもあり、話題になりました。
NHKのテレビ番組とニッポン放送の『オールナイトニッポン』を同時放送しました。「CMどうするの?」とか「同じ放送が流れているのってどうなの?」とかいろんなことがありましたが、やってみたら意外とすんなりできましたね。これがきっかけとなり、ダメと決めつける前にとりあえず無理そうでもやってみるというマインドになった気がします。
――『岡村隆史のオールナイトニッポン』と『シブヤノオト』とのコラボが1つのきっかけだったんですね。
今年の2月からは、在京6局(NHK・TBSラジオ・文化放送・ニッポン放送・TOKYO FM・J-WAVE)のプロデューサーたちと、『#このラジオがヤバい』というNHKと民放ラジオ101局の共同ラジオキャンペーンをやってきました。そこで各局のプロデューサーとも話をしましたが、今後は「自分の局だけでいい、自分の番組だけでいい」という考えじゃなくて、ラジオ業界全体でまだラジオを聴いたことのない人へのきっかけを作ったり、ラジオが注目されるようなムーブメントやバズをつくっていく必要があるなと改めて思っています。
最近では特番『かが屋のオールナイトニッポン0(ZERO)』を放送したんですが、これは広島のRCCラジオ『かが屋の鶴の間』の番組ディレクターから『オールナイトニッポン0(ZERO)』をやりたいとオファーをいただいて実現しました。当日は『かが屋の鶴の間』の番組チームが『オールナイトニッポン』に乗り込んでくるという形で番組をやったのですが、こうやって違うエリアのラジオ局とコラボする方法もあるんだと感じました。
■冨山雄一(とみやま・ゆういち)
1982年生まれ。NHKに新卒入社後、2007年にニッポン放送に中途入社。その後、『ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン』『小栗旬のオールナイトニッポン』『星野源のオールナイトニッポン』など数多くの番組を担当。2016年7月にエンターテインメント開発部に異動し、「岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭」などに携わった後、2018年4月より『オールナイトニッポン』プロデューサーに就任し、現在はコンテンツプロデュースルーム所属。