失念を使用する際の注意点
先にも述べたとおり、失念は謙譲語です。そのため、あくまでも自分のミスを申し出る場合に使用するものであって、他者のミスに対して使用するものではありません。
謙譲語としての失念の誤った使い方
- 課長が会議の時刻を失念されていた。
- お客様が契約書を失念されたそうです。
謙譲語としての失念の正しい使い方
- 私がパスワードを失念したために、ご迷惑をお掛け致しました。
- 追加の発注を失念してしまい、取引先からお叱りを受けた。
また、失念は、物事への記憶や思いを失った際に用いる言葉であって、物を置き忘れる「忘れ物」の場面で使用するのは誤りです。
動詞としての失念の誤った使い方
- カウンターに携帯を失念した。
- 大事な書類をデスクに失念してしまいました。
- お店に傘を失念しました。
動詞としての失念の正しい使い方
- ファイルの保管場所を失念いたしました。
- 支払日を失念してしまい、申し訳ありません。
- クライアントのお名前を失念してしまいました。
ファイルの保管場所を忘れるということは、「物」を置き忘れていることと同じように思うかもしれませんが、この場合、保管場所という「記憶」を失っていることになりますので、失念を用いるのが適切です。支払日や人の名前も同じことが言えます。
失念を使用する場合には、「他者の行為」と「忘れ物」に対しては使用しないよう注意しましょう。
失念と「放念」の違い
ビジネスシーンなどで、「どうぞ御放念ください」と言われることがありますが、これは、「どうぞ気にしないでください」「どうぞ忘れてください」という意味です。取引先や目上の人に対し、敬意をもって「忘れていただいて構いません」という気持ちを表現する際に「放念」という言葉を用います。
失念と似ていることから、使用する場面や意味を混同してしまうことのないよう気を付けましょう。
忘れてしまったものは仕方がありませんが、大事なのは、その後の対応ではないでしょうか。まずは、相手に失礼のないようきちんと謝罪すること、そして、同じミスを繰り返さないことです。
ビジネスは信用が第一。うっかりミスで評価を下げてしまわぬよう、気を付けたいものですね。