■帰りの「踊り子」は185系200番台を使用
この日の取材を終え、帰りは伊豆急下田駅を16時50分に発車する臨時列車の特急「踊り子118号」に乗車した。1号車に乗るため、伊豆急下田駅の頭端式ホームでは改札に近く、歩く距離が短くて済んだ。
塗装は白地に緑の斜めストライプが入った「踊り子」スタイル。この塗装はもともと0番台のデザインである。しかし車内に入ると、往路で乗った「踊り子」とは様子が異なる。ドアは上からの光学的なセンサーではなく、下にセンサーがあり、踏まれたら開くというしくみになっていた。車内に入り、車両番号を見ると「クハ185-215」。200番台だ。となると7両編成である。0番台と200番台では、改造のされ方も異なっているようだ。
「踊り子118号」は伊豆急下田駅を発車し、河津駅で普通列車と行き違う。普通列車の使用車両は伊豆急行8000系で、かつて東急電鉄8000系として活躍した車両を改造している。伊豆急行は東急グループであり、東急電鉄で活躍した車両が普通列車用の車両として使われる。JR東日本の路線である伊東線でも、元東急電鉄の車両が当たり前のように乗り入れてくるため、都内に住む者としては少々違和感を覚えてしまう。
河津駅を発車すると東伊豆海岸線の案内が行われるが、臨時列車ということもあって車内に乗客は少なく、車窓に注目しようとする人も少なかった。列車はその後、伊豆熱川駅、伊豆高原駅と停車するが、臨時列車ゆえに停車時間が長い。伊豆高原駅では9分も停車している。行き違う列車はいずれも伊豆急行8000系。もう東京から「踊り子」「スーパービュー踊り子」は来ない時間帯なのだ。
伊東駅に到着し、JR東日本の乗務員と交代。乗客は多い。宇佐美駅と伊豆多賀駅で行き違いがあり、伊豆多賀駅では東京方面から来たE231系を見ることができた。
熱海駅には18時25分に着く。伊豆エリアを出るまで1時間35分かかったことになる。単線と行き違いの繰り返しの関係上、そうなってしまうのだろう。ましてや臨時列車だ。東海道本線に入った列車は、ゆっくりと日が暮れていく中、ゆったりとした走りを見せる。東海道本線の普通列車のダイヤに合わせているという印象さえ受ける。
車内を見て回ると、洗面台は自動水栓になっていた。グリーン車は4号車のみで、自動販売機が設置されていたのではないかと思える場所が車販準備室にあった。自由席はわりと埋まっているものの、指定席には余裕がある。グリーン車は人が少ない。
小田原駅を出ると、列車は東京圏の通勤エリアに入っていく。次の停車駅は大船駅だが、この日は東海道線内で事故が発生したらしく、列車が遅れる可能性があるとの車内放送が聞かれた。大船駅・横浜駅・川崎駅と停車する中で、事故の影響が「踊り子118号」にも波及する。品川駅では定時になっても発車せず、少し遅れた。遅れを知らせる録音アナウンスが、英語など複数の外国語で放送される。
ようやく品川駅を発車し、しばらくすると「鉄道唱歌」のオルゴールが流れる。約7分遅れで東京駅に到着した。時刻表通りに運行しても3時間8分。それに遅れが7分加わった。到着ホームは8番線ホームから7番線ホームに変更されていた。東京駅で降りると方向幕が回り、「回送」で幕は停止した。
185系の特急「踊り子」は、いまや関東圏では珍しい、国鉄時代の雰囲気を味わいながら長時間の鉄道旅行を楽しめる列車といえる。これからE257系による置換えが進み、185系「踊り子」の運行終了時期が明らかになれば、鉄道ファンらが殺到する可能性は高いだろう。いまのうちに乗車しておき、昭和の「国鉄感」あふれる旅をのんびり楽しむのも良いかもしれない。