80年代前後に週刊少年ジャンプを愛読していた人にはたまらない、この「おとなのジャンプ酒場」。だが、メガヒット作品を多数抱えるなか、なぜ80年代にフォーカスを当てたのだろうか。この問いに答えてくれたのは、集英社のコンテンツ事業部 部次長にして、週刊少年ジャンプの元編集者でもある東秀人さんだ。
「80年代は、週刊少年ジャンプが300万部から500万部雑誌へと駆け上った飛躍の年代です。この頃ジャンプヒーローに熱狂した少年たちは、いま社会の中枢を担う働き盛りの大人として活躍しています。そんな大人になった少年たちが、あの頃の思い出をお酒とともに語れる憩いの場として、この店舗を作りました」
東さんはこのように開店の理由を語る。その背景には、集英社で一番新しい部署であるコンテンツ事業部の成り立ちが関係しているという。
「コンテンツ事業部が作られたきっかけの一つは、2012年の『ONE PIECE展』です。3カ月で約50万人の集客がありました。もう一つは『ジョジョ展』で、集客は1カ月で10万人ほどでしたが驚くほどキャラグッズが売れました。この結果を受け、本格的なコンテンツビジネスを行うために誕生したのです」
「キン肉マン酒場」が予想以上のヒット
こうして集英社が扱っているコンテンツでマネタライズをするコンテンツ事業部が設立された。そして2017年、コンテンツ事業部が週刊プレイボーイのコンテンツを生かすために歌舞伎町に作ったのが、現役のグラビアアイドルとカウンター越しにお酒を飲める「週プレ酒場」だ。さらに2018年、「週プレ酒場」で「キン肉マン」連載40周年を記念した「キン肉マン酒場」がオープン。これが予想をはるかに超える人気となり、今回の「おとなのジャンプ酒場」へとつながっていく。
「80年代前後の作品に絞ったもう一つの理由は、連載中の作品が使えないからです。なぜかというと『週刊“少年”ジャンプ』だから。現役の読者が来られないお店をやるわけにはいきません。ここはあくまで80年代のジャンプを楽しんだ大人のみなさんのお店なんです」
こうして80年代を中心とした「おとなのジャンプ酒場」の開店が決まった。ただ、ジャンプは多くの人気雑誌を取り扱う集英社の中でも、ひときわ目立つ雑誌。メニューや営業方法には気を配って運営しているという。
「おとなのジャンプ酒場は、ただ儲かればよいというお店ではありません。オフィシャル店であることを大切にしたいですし、作家さんからは自分の子どものような作品を貸していただくわけですからね。みっともないメニューは出せませんし、混雑で料理の提供が遅れるなど、お客様にがっかりさせたくもありません」
見た目にも楽しく、味にも満足というコラボメニューはこのようなこだわりを持って開発されたもの。その出来には、作家のみなさんも納得済みだという。ちなみに「ろくでなしBLUES」コラボメニューの「メンチカツ&たこ焼き」の特典が小兵二軍団ステッカーになったのは、森田まさのり先生の提案だそう。
「森田先生は小兵二好きなんですよ(笑)。実は本誌での連載中に人気が下がって連載継続が危なかった時期に、小兵二を出して『ろくでなしBLUES』の人気が上がったというエピソードがあるんです」
東さん自身、かつて「ろくでなしBLUES」の担当編集だったということもあり、当時のさまざまな裏話も明かしてくれた。時折、「おとなのジャンプ酒場」にも顔を出しているそうなので、運が良ければ「ジャンプ裏話」を聞けるかもしれない!?
新たなコラボメニューも投入予定
また、これらのコラボメニューは、数カ月ごとに別の作品での新メニューを展開予定だという。
「せっかくジャンプにはたくさんのすばらしい作品があるのだから、お客様に何回お店に来てもらっても、飽きることがないようにしていかないとね」
定期的に変わるコラボメニューと不定期に登場する期間限定メニューで、いつ・何度訪れても新たな話題や楽しみを提供してくれるというわけだ。3,000円で食べ・飲み放題ができるリーズナブルな店として使ってよし、コラボメニューに舌鼓を打ちながら童心に帰るのもよしと、さまざまな使い方ができそうだ。
「おとなのジャンプ酒場」は、東京都新宿区歌舞伎町1-18-1「WaMall歌舞伎町」5階で平日17~23時、土・日・祝日14~23時まで営業している(ラストオーダー22時30分)。1年間の限定営業を予定しているので、80年代を思い返したいファンはぜひ早めに訪れることをおすすめしたい。
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