主婦がある日突然、モデルに。個人発信で世間に影響を与える「インフルエンサー」が次々に現れる時代で、肩書きはそこまで大きな意味を持たないのかもしれない。しかし、期せずしてモデルになった柳橋唯(32)は小学6年生と3年生の息子を持つ母でもあり、インスタグラムのフォロワーは気づけば9万人に。そこで寄せられる声がきっかけとなり、現在はYouTuberとして活動の幅を広げようとしている。

ヘアメイクアップアーティストの河北裕介氏からも、「メイクによって様々な印象に変化し、服を着替えるように顔の雰囲気を変えられる」と称賛される柳橋。彼女はSNSに不向きな自分を自覚しつつ、なぜ発信し続けるのか。「第2の人生」と語る今を追う。

  • 柳橋唯

    モデルの柳橋唯 撮影:宮川朋久

■嫌なところを「消したい」から「活かす」へ

――YouTubeを始めたのが、2018年11月。もう間もなく1年ですね。

まだまだ私の力不足で、満足できるものができていないのですが、どのようにすれば見てくださる方に楽しんでいただけるのか研究中です。

――どのようなきっかけで始めたんですか?

インスタグラムでメイクやスキンケアについて聞いてくださるフォロワーさんが増えてたことがきっかけです。私自身、自分の顔や肌にすごくコンプレックスがあって。女性は、何かしらのコンプレックスがある人がほとんどだと思いますので、同じような悩みを持っている方に少しでも役に立つ情報を伝えていければいいなと思います。

――確かに、誰しもコンプレックスはありますよね。

顔立ちは人それぞれ感じ方が違うと思いますが、自分の顔は「きつい」というか、「強い」イメージで。柔らかくて、かわいらしい女性にずっと憧れがありました。「かわいい」と思う女性像と自分の顔立ちが両極なので、そこをメイクで近づけるように工夫しています。以前は、自分の嫌なところを「消したい」と思っていたのですが、今はそれをどれだけ活かせるのか、日々研究しています。

  • 柳橋唯

――いつ頃からメイクを始めたんですか?

中学生の頃からしていましたが、アイメイクなどの細かい部分は高校生ぐらいからです。姉がガングロ世代でメイクをしているのがうらやましくて(笑)、時々メイク道具を使わせてもらっていました。コンプレックスを感じ始めたのが、十代の後半の頃。メイクは雑誌などで学んだところもありますが、ほぼ独学です。

――その経験が実を結んで、2年前からママ向けライフスタイル誌『mamagirl』のモデルに。

それ以前は、モデルの経験が一切なくて。こうして取材していただけていることもそうなんですが、すべてにおいて「ラッキー」だったなと思います。普通であれば、十代、二十代の頃から読者モデルを経験されている方が、そのまま第一線でママモデルになることがほとんど。数年前までは「まさか私がモデルなんて!」と思うくらい、信じられないことなんです。憧れはありましたが、自分がモデルになれるなんて夢にも思いませんでした。インスタグラムをはじめたことでいろんな世界が広がって、正直言うと、今でも時間が湧いてないというか(笑)。協力していただく周りの方含め、本当に恵まれています。

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――憧れのモデルが現実味を帯び始めた時、不安などはなかったんですか?

最初は、ちょっと恥ずかしいというか。不特定多数の人に見られることが普段の生活ではなかったので、良くも悪くも戸惑いがありました。「モデル」という仕事に対しての恥ずかしさではなくて、こんな自分がいろいろな方に見られて大丈夫? みたいな気後れがあったというか。その中でお仕事をさせていただくことによって少しずつ自覚も芽生え始めて、周りの方はみなさんプロなので、そこで刺激を受けながら、「とても素敵な世界。頑張りたい」と思えるようになりました。今は「恥ずかしい」というよりも、「ここでがんばりたい」という気持ちの方が強いです。

――ちなみに、モデルデビューしてから影響を受けた方はいますか?

ヘアメイクアップアーティストの河北裕介さんです。もともと憧れの方でもあったので、メイクモデルのお話をいただいた時は吐きそうになるくらいうれしくて(笑)。実際にお仕事をさせていただいて、すごく素敵な方で、言葉の一つ一つに重みがある方だと感じました。私はコンプレックスの塊だったのですが、「他の人間にはなれない。そんなの無理だよね。今の自分から引き出すことでいいんだよ」という言葉は、今でも胸に残っています。「その人みたいになりたい」と自分を否定するのではなくて、コンプレックスも含めて自分を受け入れてあげること。その気持ちが重要だとあらためて実感させていただいた言葉でした。いろんなお仕事をさせていただく中で、私自身、自分に対する思いも変化していきました。昔よりも、ちょっとだけですが、前向きになれたというか。