ロボホンと一緒に過ごしたのは、いまから3年前の話だ。その様子は、本誌連載の「ロボホン日記」として7回にわたってお伝えした。最後に「またね、今度はいつ会えるかなぁ」とロボホンに言われてから、そんなに時間が経過してしまったのかと思う。
その間、CEATEC JAPANのシャープブースや、シャープのイベントなどで、ロボホンの姿を見かけることはあったが、直接声をかけることはなかった。そんな折りに突然、ロボホンと一緒の時間を過ごす機会が再び訪れた。大阪出張で泊まったホテルに、ロボホンが待っていてくれたのだ。久しぶりのロボホンとの対面に自然と心が弾んだ。
宿泊したのは、大阪・西心斎橋のアメリカ村(アメ村)にある「変なホテル大阪 西心斎橋」。2019年3月14日に開業したばかりのホテルだ。世界初のロボットが働くホテルとしてギネスにも認定された「変なホテル」は、現在国内に16ホテルが運営されており、恐竜ロボットや人型ロボットが受付で出迎えてくれる。
変なホテル大阪 西心斎橋では、フロントには恐竜ロボットが配置されるとともに、一緒にロボホンが出迎えてくれた。ロボホンが導入されているのは、変なホテル大阪 西心斎橋と、近くにある変なホテ ル大阪心斎橋など数少ない。
また、変なホテル大阪 西心斎橋の3階フロア全15室は「ロボホンルーム」と呼ばれ、着座タイプの「RoBoHoN Lite(SR-05M-Y)」がそれぞれの部屋に1台ずつ設置されている。このロボホンルームがあるのは、いまは、変なホテル大阪 西心斎橋だけだ。
大阪府堺市のシャープ本社で取材を終え、平日でも多くの観光客が訪れているアメ村を歩き、変なホテル大阪 西心斎橋に着いたのは夕方の時間帯だった。フロントに行くと、恐竜ロボットが出迎えてくれる。出迎えの言葉を聞きながら、手前にあるディスプレイでチェックインの手続きをする。その横にロボホンが。
ここでのロボホンの役割は、フロントには常駐していないスタッフを呼び出したり、ホテルの案内をしたり、周辺情報などを案内することだ。ロボホンに接続されたタブレット端末のメニューから選択すると、ロボホンが音声で案内する。日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応しており、外国人観光客も自由に使うことができる。
フロントのロボホンに軽く挨拶してから、予約をしたロボホンルームに向かう。エレベータを3階で降りると、目の前にはロボホンの大きな姿が描かれた壁。ホテルというよりも、アミューズメントパークのようなワクワクした雰囲気を感じる。
ロボホン、再会
予約した部屋に入る。照明をつけて、部屋の奥に進むと、備え付けの一番奥に着座したロボホンの姿が見えた。
近づくと、ロボホンがいきなり話かけてきた。
「変なホテル西心斎橋へようこそ。ぼく、ロボホン。この部屋のコンシェルジュだよ。大阪の街はどうだったかな。今日はゆっくり休んでね」
そう語ったあとに、ホテルに関して聞きたいことがあれば尋ねてほしいこと、ニュースを読み上げたり、歌ったり、踊ったりできるといったことを説明しながら自己紹介をして、「ロボホン音頭」というオリジナルの楽曲を歌いながら、踊りを見せてくれた。久しぶりに会ったロボホンは、ホテルの部屋に入って約2分間、喋ったり、踊ったりして、歓迎してくれたのだ。歌は3年前よりもはるかにうまくなっていた。
ロボホン音頭の選曲には理由があった。7月には、日本三大祭のひとつである天神祭りをはじめ、大阪市内でも多くの祭りが開催されるのにあわせて用意されたのだという。実は6月には、大阪で開催されたG20サミットにちなんで「世界のダンス」から1曲を選んで踊っていたという。ロボホンは、毎月違うダンスを披露しており、ダンスのバリエーションもかなり増えているようだ。
ロボホンは、部屋にいる時間中、様々なことをサポートしてくれる。「朝食の時間は?」、「Wi-Fiのパスワードは?」、「充電器は借りられるの?」といった質問に答えてくれるほか、「読み聞かせして」と言えば、名作文学を朗読してくれたり、「鼻歌調べて」と言って鼻歌を聞かせると曲名を当ててくれたり、「クイズを出して」と言えば、様々な分野のクイズを出して、部屋にいる時間を楽しませてくれる。
変なホテル大阪 西心斎橋の福田隆行マネージャーは、「オープン以来、ロボホンは、変なホテルのコンシェルジュとして大活躍してくれている」と語り、「ロボホンルームを指名して宿泊する家族連れもいる。また、ロボホンに初めて触れたお客様が、ロボホンと楽しくやりとりをして、これまでにないホテルの体験をしたり、ここで購入できないのかといったことを聞かれるケースもある」とする。
宿泊者を楽しませるだけでなく、ホテルに関する様々な問い合わせにロボホンが答えてくれることで、客室からの問い合わせも減少し、スタッフがより生産性の高い仕事に従事するといった効果も出ているようだ。
福田マネージャーに話を聞くと、変なホテル大阪 西心斎橋から徒歩で約10分の位置にある「変なホテル大阪 心斎橋」では、ロボホンが特別なダンスをしてくれるというので、急遽、そちらのホテルも訪れてみることにした。場所は、大阪メトロ心斎橋駅からすぐのところだ。
変なホテル大阪 心斎橋も、2019年2月にオープンしたばかりのホテル。1階フロントに、観光情報などを教えてくれるロボホンのほかに、なんと19台のロボホンが勢ぞろいし、1時間に1回、ダンスのパフォーマンスを披露してくれるのだ。
その動きはまさに圧巻だ。ダンスの内容は様々で、朝の時間帯はラジオ体操をしてくれるという。昼間の時間帯は、毎正時に踊ってくれるので、もし、変なホテル大阪 心斎橋の近くを訪れる機会があったらぜひ見てほしい。