――これまでのウォズの演技で、渡邊さんご自身が満足いったシーンはどこになりますか?
やはりEP30になるんですけど、白ウォズが黒ウォズと対峙しながら、消えていくシーンですね。白は黒ではないし、黒は白でもないですけど、"ウォズはウォズなんだ"というのを僕が演技によって表現することができたところなんです。あそこは僕の中でこだわりを持って、台本をじっくり読み込んだシーンです。『ジオウ』の物語とは、常磐ソウゴという存在の周りで起きることが描かれているわけで、白ウォズもその周りの1人にすぎません。黒ウォズももともとそういう存在なので、白ウォズの考えが黒ウォズに"寄って"いった結果、ある意味両者が"同化"したという感覚なんです。
――ウォズがクジゴジ堂で暮らすようになってから、順一郎とのコミカルなやりとりも増えてきましたね。
僕としては、順一郎役の生瀬(勝久)さんと一緒のシーンが増えたことが、すごく楽しいです。EP33でウォズが「祝福の鬼だ!」って言うシーンがありましたが、あそこでは生瀬さんと友だちみたいなやり取りをするくだりがあって、僕が今まで開けていなかったウォズの"引き出し"を開けることができたと思っています。ああいうシーンも僕の"素"に近いところでやっているのですが、僕がこうやろうと思った動きに、生瀬さんが自然と合わせてきてくれたんですね。何も言葉を交わしていないのに、意志の疎通が図れていたというか。僕と生瀬さんが同じことを考えて芝居をしていたというのがすごくうれしくて……演技のセッションができたというのは、僕が役者として少し成長できた"証"なのかなって、考えたりもしました。ずっと『ジオウ』をやってきて、ようやく僕の心に余裕ができてきて、その余裕がベテランの生瀬さんとうまくかみ合った。それがとてもありがたく、うれしいことでした。おかげさまで諸田(敏)監督にも褒めてもらったんですよ。
――白・黒ふたりのウォズを演じ分けたことによって、1人になってからのウォズの芝居に人間的な"幅"が出来たということなんでしょうね。
あくまで白ウォズが消滅して、黒ウォズが残ったわけなのですが、1人になってからは状況に応じて黒でも白でも演技を使い分けられるな、と考えるようになりました。今は、うまい具合に白と黒をミックスしたキャラクターを演じられているかな、という手ごたえを感じています。
――戦闘中にジオウ/ソウゴの意思でいきなりゲイツとウォズが取りこまれてしまい、三位一体のジオウトリニティになるシーンでは、トリニティの体内にソウゴ、ゲイツ、ウォズが大きな文字盤を囲んで対話をするという、少しシュールなやりとりがあって話題になりました。
トリニティの文字盤での3人の会話は、ほとんど台本には書いてなくて、僕らのアイデアを膨らませてしゃべっているんです。ゲイツとウォズがジオウに吸い込まれていくときのアフレコでも、スーツアクターの縄田(雄哉/仮面ライダーゲイツ)さん、永徳(仮面ライダーウォズ)さんがすごい演技を入れてきたので、押田くんと僕で「俺らも遊んでいこう」と言い合って、楽しみながら声を入れていました。
――第1、2話や今回の映画を撮られた田崎竜太監督をはじめ、多彩な演出陣が『ジオウ』を手がけてきましたが、特に渡邊さんが印象に残った監督さんはどなたになりますか?
みなさんとてもお世話になっていて、それぞれ印象的ではありますが、あえてお名前を挙げるとすれば「キバ編(EP35、36)」を演出された田村直己監督ですね。キバ編をご覧になった方はお分かりだと思うんですけど、あの回が僕らの中ではひとつのターニングポイントになりました。もう、芝居というのはどれだけやってもいいんだ、やりすぎることはないんだ、やりすぎたら(誰かが)言ってくれるから、という演出で、"芝居"をすることの面白さを今一度、気づかせてもらったんです。テレビシリーズ後半という、いい時期に"杭"を打たれた、みたいな感覚がありました。監督はストレートに言ってくださいますし、引き締まりましたね。ほんとうに、ありがたかったです。これからの演技でもどんどん遊んでいこうという気持ちになりましたし、もっと頑張ろうという思いが強まりました。
――劇場版が公開され、そしてテレビシリーズのクライマックス(=最終回)を迎えることになりますが、いつも熱烈な応援をされているファンの声などは渡邊さんに届いていますでしょうか?
Twitterアカウントにいただいたコメントは、ちゃんと見るようにしています。写真集を出したときにも、いろいろ感想を言ってくださって、ウォズの活躍楽しみにしています、みたいな声をいただくと、すごくうれしいですね。最近では「こんな役を演じてほしい」みたいな意見もいただきますし、役者としてモチベーションが高まります(笑)。映画公開に合わせて、ファンの方々と直接お会いする機会も増えました。あのようなイベントは大切にしないといけませんね。今だからこういう場を持たせていただけるのでしょうし、「仮面ライダー」の出演者だからこそ、伝えられるものがあると考えています。『仮面ライダージオウ』が終わってからも、僕たち役者はファンのみなさんにしっかりした対応をしていきたいです。
劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映