オフロード試乗で納得のキャラ設定
そんな新パワートレインを積むエクリプスクロスを早速、公道試乗に連れ出してみた。
車内で感じる走行音は、ガソリン車と比べても気にならないほど静かで快適だ。加速が必要なシーンでは、8段変速のATが瞬時にギアを落とし、低回転から大きなトルクを生み出すディーゼルエンジンの力強さを味わえる。
力強い加速とスポーティーなスタイルとは裏腹に、乗り心地はソフト。足回りは専用設定だが、ガソリン車同様に快適性重視のセッティングとしてあるようだ。個人的には、パワフルなディーゼルエンジンを活用し、ガソリン車とは異なるスポーティーなキャラクターに仕立てられているものと想像していたのだが、この点は裏切られた。あくまでもクレバーであり、家族思いのパパにも最適な、ちょっと大人しいSUVなのだ。しかし、この後、その味付けには重大な理由があるということを思い知らされる。
公道試乗の次はオフロードコースを走ったのだが、このコース、ちょっと足場の悪い道などというような生易しいものではない。全てが未舗装であるだけでなく、急な上り坂や下り坂、クルマが傾く斜面、泥道までもが含まれていたのだ。まさにアドベンチャーである。いきなりこの道を行けといわれたら、誰もが躊躇することだろう。
上下左右に車体を揺すりながら、エクリプスクロスは前へ前へと突き進む。ソフトな足回りが路面をしっかりと捉え、段差や石を乗り越えた際にはショックを受け止めてくれる。軽やかなステアリングからは路面状況がしっかりと伝わってくるので、操作に不安を覚えることもなかった。つまり、オンロードだけではなく、オフロードまでしっかりとカバーするための味付けがなされていたのだ。見た目こそややチャラいが、その中には三菱伝統のクロカン作りのDNAがしっかりと受け継がれていたということである。
オフロードコースを難なくクリアすると、もう一度、すぐにでも試したくなった。そんな気持ちになったのも、エクリプスクロスが悪路でも頼れる存在だと認識できたからにほかならない。
「エクリプスクロスに、そこまでのオフロード性能が必要なの?」。確かに、そういう意見もあるだろう。ただ、キャンプ場などでも、天候によってはオフロードコースに近い路面状況になることがあるし、バーベキューが可能な河川敷には、ある程度はクルマで乗り入れることが可能な場所ある。軽いアウトドアのシーンでも、クルマにとっては厳しい走行環境が存在するのも確かなのだ。
価格はガソリン車のFFが253万9,080円~289万1,160円、4WDが275万5,080円~310万7,160円。クリーンディーゼル車は306万1,800円~340万3,080円となる。4WD同士を比較すると、価格差は30万円程度。ガソリン車でも不満はないが、街乗り中心ではなく、週末のレジャーやロングドライブも楽しみたいという人にとっては、この30万円は意味のあるものになりそうだ。
ただ、ガソリン車とクリーンディーゼル車の差別化が少ないのは、やや残念だ。三菱としては、ディーゼル車の設定は、あくまで顧客の選択肢を広げるためとしているが、せっかくならば、視覚的にもクリーンディーゼルを選びたくなるような仕掛けが欲しい。クリーンディーゼルを選んだ時点で価格が300万円を超えるのだから、少しは特別感があると、買う人も嬉しいのではないだろうか。
先にも述べたが、実用性を含め、エクリプスクロスのディーゼルエンジン車という選択は十分に「あり」だと思う。ただ、SUV市場が活気づいたこともあり、価格だけを見れば、ほかにも選択肢はある。本格SUVとして、内に秘めたオフロード性能は素晴らしい。ただ、そこを重視する人は、もっとそれっぽい、ほかのワイルド系のSUVを選んでしまうかもしれない。
コンパクトながら本物のSUVであり、街にも映えるクールなスタイルを兼ね備えるというエクリプスクロスの価値は、大きな武器だ。それだけに、そのアピールがうまくないと思えてしまう。やはり世の中、ギャップに弱い。見た目は草食系イケメンでありながら、中身は肉食系なんていうのは、最近のドラマでもよく見かける設定だ。その辺を押さえられれば、エクリプスクロスは化けるかも??