――リュウソウジャーは6500万年前からの古代人類の末裔"リュウソウ族"という設定ではありますが、彼らも普通の人間と同じ感情を持ち、自身の感じるまま生きている、というところでしょうか。
第1話で描かれるリュウソウ族は、6500万年前から受け継がれている部分もありますけれど、すでに現代の文化も交じっているという描かれ方ですよね。どちらかといえば、今度の映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』のほうが、現代と古代との世界観の差が出ていると思います。さっきお話ししていた「人物をどう描くか」については、こういった"文化の差"も大きく関係していて、現代社会の人間と、古代文明を背負った人間の感覚の違いを描くことで、"人間性"とは何かを伝えることができると思うんです。
――第1、2話の放送からおよそ半年が過ぎたタイミングで、初の映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』が公開されることになりました。上堀内監督としても、リュウソウジャーキャストに演出をつけるのが久々になったと思いますが、みなさんの成長ぶりを実感されたことなんてありましたか。
まだ、誰がどれだけ成長したかなんていうのは、今の段階では語れません。ただ、みんなそれぞれ"責任感"が少しは芽生えてきたんじゃないでしょうか。一ノ瀬(颯)くんをはじめ、みんなは一生懸命ついてきてくれる、食らいついてくれるんです。内心では、キツい言い方をされていっぱい凹んでいると思います。だからといって、彼らは反発してくるんじゃなくて、僕が言ったことに対して「この監督はどうやったら納得してくれるんだ」と自分たちなりに考えて、どんどん食らいついてくるんです。こういった態度は第1、2話のときなんかよりぜんぜん多くなっていて、それだからこそ、これからも一緒にやっていけるかなという期待につながっていくんです。
――意識的に厳しい口調で接することにより、現場に緊張感をもたらす、というようなことなのでしょうか。
僕がみんなに優しく声をかけることで、何かが芽生えてくればそうしますけれど、今は"違う"のかな、と思っています。僕も若手なので、あまり和気あいあいとしすぎた現場環境だと、自分もその空気に飲み込まれてしまいそうになるんです。そういう意味では、厳しく接するというパフォーマンスを、意識して自分に課しているのかもしれません。
――若いキャストさんが多い中、龍井尚久役の吹越満さんがさすがベテランの存在感で、それほど長くない出番の中で注目をさらっていくことが多いですね。上堀内監督から見た吹越さんの印象はいかがですか?
今回の映画もそうなんですけれど、2人そろって台本にないことをいっぱいやりたがって、僕がリハーサルのときに、全体の位置関係とかを決めて、こういう風にお願いします、って言ったら、吹越さんが何かひとつ違う動きを入れてくるんで、僕のクセで何かを返したくなっちゃって……。僕と吹越さんは、あまりよくない組み合わせなのかもしれません(笑)。吹越さんの演技を見て、他の若いキャストたちが刺激を受けてくれたらいいなと思うんです。彼らが吹越さんについていけるようになれば、もっともっと頑張っていけるはずですから。
――スーパー戦隊では、スーツアクションとミニチュアセットを駆使した、大掛かりな特撮シーンが見せ場となっていますが、特撮監督の佛田洋さんとはどのような打ち合わせをされましたか。
特撮演出は基本、佛田さんがやってくれています。今年は僕が「スーパー戦隊」をあまりわかっていないので、いつもとなんとなくやり方が違っているんじゃないかと思います。佛田組の特撮シーンを撮影する際、僕も現場に行って、本来は僕の範疇であるシーンも特撮チームの方たちに撮ってもらったりとか……。向こうからしたら、とんだ迷惑だと思うんですけれど(笑)。あとは、佛田組での特撮アクションでも、ワイヤーワークを使ってもらっているので、いつもは等身大戦のアクション監督をされている福沢(博文)さんに特撮の現場に入ってもらっているんです。僕が現場にいないときでも、佛田さんと福沢さんで打ち合わせして、ロボ戦を撮っていたりします。だからこそ、今年のキシリュウオーの動きがイキイキしているってところもありますね。
――第1話では、恐竜形態のティラミーゴがスピーディに走り回るのが驚きでした。CGではなく、スーツによるライブアクションで実在感を出しながら、あそこまで軽快に動かせているのが、今回の注目ポイントだと思いました。
昨年の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』ではルパンカイザー、パトカイザーをCGでしか見せられない動きでかっこよく表現していたので、それとの差別化をはかって、今年は実写で行きたいと、佛田さんとも話していましたからね。従来以上に動きを軽快にできるのなら、ワイヤーアクションもさせたいですねって話をしたら、佛田さんも同じような考えを持っていて、福沢さんもノッてくれたという。ですから今年の巨大戦は、僕とアクション監督、特撮監督の"合わせ技"だと思っていただいていいです(笑)。
もちろん夏の映画でも、特撮シーンの迫力はすごいですよ。僕たちスタッフは裏側で動いているので現場ではわかりませんが、完成した映像を観ると改めて「特撮ってすげえ!」と驚きました。もちろん、カットによってはCGを使うところがありますけれど、CGのいいところ、実写のいいところ、どちらの美味しいところを全部活かしていきたいと思いますし、今後もっとすごい巨大戦のイメージも具現化できると考えています。映画ではキシリュウオーファイブナイツがロボ戦のメインになっていて、決して長尺を取っているわけではないですけど、すごい映像作っているなって、驚いてほしいですね。
――映画のゲストとして登場される、佐野史郎さん、北原里英さんの印象はいかがでしたか。
わりと初めのほうから佐野さんのお名前が出ていました。僕もヴァルマには佐野さんのイメージが合っているなと思っていましたし、佐野さんがこういった特撮作品が好きでいてくれたこともあり、あまりブレずに「ヴァルマは佐野さんにお願いしたい」という話になりましたね。北原さんが演じるユノの役どころは、けっこう難しいんですよ。事件が起きる"核"になるのが6500万年前の父娘なので、ユノの感情の運び方をひとつ間違えると、この映画が転んじゃうというような、けっこうギリギリの感情表現が求められました。その点、北原さんはうまく表現してくれて、彼女と佐野さんには助けられました。こちらの求めているものをちゃんと伝えれば、応えてくださる2人だったのが、とてもありがたかったですね。
――映画では福井県の恐竜博物館でロケを行ったそうですが、恐竜モチーフのスーパー戦隊だけに、実際の恐竜が展示されている博物館での撮影は盛り上がったのではないでしょうか。
恐竜博物館はすごく素敵な場所でした。台本上では映画の始まりの舞台であっただけなんですが、行ってみたらすごく良かったので、最後のシーンも恐竜博物館で締めくくりたくなり、書き換えることにしました。始まりと終わりに使ったことにより、博物館そのものがストーリー的にいい位置づけとなったかな、と思っています。恐竜博物館をはじめ、福井県にはいいところがいっぱいあるので、もっとPRしてもらいたいんですよ。あとキツかったのが軽井沢のロケです。キャストさんみんなが"死にそうだった"とこぼしていました。僕もあまりに寒すぎて、モニターを見ながらOKなのかOKじゃないのか、わからなくなっていましたから(笑)。いろいろと過酷な環境で撮影した映画ですが、だからこそ6500万年前の恐竜時代を再現できたり、良いものがいっぱい撮れています。さらに、リュウソウジャーを襲う謎の鎧戦士ガイソーグが現れるなど、30分という短い時間の中にたっぷりと見せ場がありますので、みなさんぜひとも映画館に足を運んでください!
劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 (C)2019 テレビ朝日・東映 AG・東映