――役を演じたことによって、悠と藤田さんが「似てきたな」と感じられたことはありましたか。

もともと自分と悠は、インドアで内にこもりがちな部分が似ていました。僕も学生時代はパソコン部でしたし(笑)。スタート地点が何となく共感できる場所にいたというか、悠の気持ちが理解できていたので、そこから悠の成長……部屋の外に出て、駆除班のみんなや仁さんと出会って、変化していったのに合わせて、僕自身も同じように成長できればと思って演技をしていました。

――悠を演じる上で藤田さんがもっとも影響を受けたキャラクターは誰になりますか。

それはもう仁さんしかいないですね。『アマゾンズ』の台本は、13話すべてを最初に読むことができなくて、毎回いただく台本を「今度はどうなるんだ?」とハラハラしながら読んでいくしかないんです。次がどうなるか、まったく予想がつかない状態で、頼るのは同じ境遇にいる仁さん……谷口さんしかいないんです。悠として変化していこうとは思わずに、ある意味素直に役を演じていった結果、悠が成長したように見えていたとしたら、それはやっぱり仁さんの"導き"があったのかなって思いますね。

――共演者の方で、最初のころと後でずいぶん印象が変わったなと思える人はいますか?

駆除班メンバーの高井望を演じていた宮原(華音)さんです。最初のころは女の子ひとりであんなおじさんたち(笑)の中に混じって、やりにくいんじゃないかって思っていましたが、撮影に入るとすさまじいまでの馴染みっぷりを見せて……。まったくすごいと思いました。最初からハードなアクションをこなしたりして、暗く地味な舞台設定の中でもひときわ輝いていましたね。

――藤田さんが『アマゾンズ』という作品に出演したことによって、ご自身にどんな"変化"がありましたか。

シーズン1、シーズン2、映画とやってきましたが、悠という役を演じたことで、生き物の命って何のためにあるんだろう?とか、人間のどうにも抑えのきかない感情の激しさとは?とか、いろいろなテーマについて考えるようになりました。どれもすぐ答えが出てこないことばかりですけれど、原初的な問題に向き合うことによって、さまざまなことに気づかせてもらえます。人間を食べる本能を持つアマゾンたちと、そのアマゾンを"狩る"仕事についている駆除班(人間)、人間とアマゾンとの間で苦悩するマモルくん(モグラアマゾン/演:小林亮太)、そして対立を余儀なくされる悠と仁さん。さまざまなキャラクターがそれぞれの感情をむき出しにして、自分の考えを言い合うことによってドラマの濃度が高まっていきました。悠は人間でもアマゾンでも"自分が守りたい"と思った者を守るという信念を貫こうとして、卑劣な人間に直接的な"怒り"を示すことがありましたね。人間サイドからすると、アマゾンオメガ/悠は必ずしも"ヒーロー"ではないということです。この世界は人間だけが生きているわけではないですし、われわれが生きているこの世界をどういった基準で測るか、でいくつもの視点に分かれていくと思うんです。

――バイクに乗ってひとりいずこかへと去っていった悠が、あれからどういう人生を生きていくのかが気になりますけれど、このような「その後の水澤悠」を想像されたことはありますか?

あのあと、悠がどうなるんだろうという"妄想ストーリー"は常に僕の胸の中に抱いていますよ。寝る前にちょっと考えていたら、夢に出てきたこともありました(笑)。悠がこれからどれだけ1人で生きていけるかはわからないですけれど、僕の心の中にはまだ悠が確かに残っていて、これからもずっと生き続けていくと思います。

――『アマゾンズ』の外伝や前日譚、あるいは"続編"というような作品のオファーがもしも来たとしたら、藤田さんはどんな風に悠を演じようと思われますか。

続編は難しいですね……。悠は劇場版『最後ノ審判』で"一線を越え"ましたからね。悠がまるで仁さんのように変貌してしまうとか、まったく性格が反対になるかもしれません。"仁さん化"というのは、考えられる悠の未来像のひとつですが、ただ悠が仁さんと違うのは、美月をはじめとして、いつも彼のことを思いやり、心配してくれる人たちがいることなんです。仁さん化して荒れる悠を、仲間たちが止めるとか……。でも、悠はガンコですから、一線を越えたことに対して周りから「しょうがないよね」と言われて、「そうだね」と返せないところがあります。もしも悠がふたたび登場することがあれば、もうもとのような悠ではいられないことになり、仲間との関係性も大きく変化していくかもしれません。

――最後に『仮面ライダーアマゾンズ』で藤田さんが"得たもの"とは何か、お尋ねしたいと思います。

それはもう、役者という仕事を一生やっていこうと決意させた作品ですし、これまで考えもしなかった"生命"についての問題を考えるようにしてくれた作品でもあります。そして、一生の仲間と呼べる人たちに出会えたことが大きかったですね。これから先、何年も会わなくなったとしても、数年ぶりかでパッと会ったとき、「おお、久しぶり!」と笑顔で言い合えるような仲間ができたことがうれしいですね。それと、石田監督という"師匠"とも出会うことができました。監督はどうかわかりませんが、僕は石田監督のことを"師匠"だと思っています。師匠がいることでの心の安心がありますね。また石田監督に自分の演技を見てもらいたいですし、一緒に組んで作品を作り上げてみたいという一心で、これからも俳優の仕事をがんばっていきたいと思います!

(C)石森プロ・東映