――テレビシリーズでは、ソウゴ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズの4人が「クジゴジ堂」で暮らすようになってから、生瀬勝久さん演じる順一郎を交えて非常にコミカルなやりとりが増えましたね。EP35、36の"キバ編"では、ソウゴが幼いころに出逢った"初恋の女性"北島祐子(演:釈由美子)に振り回されて、周囲のリアクションなどもいつも以上のコミカルさをかもし出していました。
あのEP35、36はいろいろとハジケた回で、演じていて楽しかったですよ。井上敏樹さんの書かれた脚本がそもそも「いつもと違うな」って思いましたし、田村(直己)監督が初めて『ジオウ』に来られたのも、すごく刺激になりました。田村監督は、僕たちのセリフがないところでも、暇さえあれば「何かセリフ入れろ」という演出をされるんです。仮面ライダーにアフレコで声を吹き込むとき「言いたいことあったら何でも言え」とおっしゃっていたので、僕たちも「わかりました!」と返事して、がんばってアドリブを盛り込みました(笑)。
ウォズなんて、釈さんの主演ドラマ『スカイハイ』の決めゼリフだった「お逝きなさい」を言うよう指示されていましたね(笑)。この回は今までの『ジオウ』の流れを一気に変えていって、新しいスパイス……というより、よいアクセントになった気がします。かなりみんなの普段演じているキャラクターを"壊す"というか、思いっきり変わった演技ができました。でも、このキャラはこういう人物だという設定こそ固められてはいますが、ソウゴを演じているのは常に僕ですから、どれだけ崩しても基本的には変わらないんですよ。それこそ、最初のころと現在とではソウゴは違いますし、人というのは変わっていくものですから、キャラが変わったとかはそれほど気にはしていません。
――最終的には、奥野さんが演じているからソウゴなんだ、というか、奥野さんの思いひとつでソウゴのキャラが決まる、という感じですか。
そうありたい、と思っています。
――演技に関して経験を積み、すごくたくましくなられた印象の奥野さんですが、イベント出演なども場数をこなし、フリートークのスキルもずいぶん高まってきたようですね。
そうだとうれしいですけれど、自分ではまだまだだと思っています。こういう取材の場だからあれこれしゃべっているけど、ふだんは全然言葉を発しません。なのでバラエティ番組やトーク番組への出演が、とても大変です(笑)。人と対話をするのがあまり得意ではないので、常に精いっぱい、頑張っているようにしています。
――ソウゴは天性の"明るさ"と"人懐っこさ"でアナザーライダーの変身者や歴代"レジェンド"仮面ライダーたちの警戒心を解き、自然にコミュニケーションを取ることが多いですが、奥野さんはソウゴをどのような人物だと捉えているでしょうか?
僕はソウゴのことを"天然"キャラだとは思っていません。天然っぽい部分は多々見受けられるのですが、彼の行動には何の根拠もないわけではなく、「こうしたら、うまくいくんじゃないか」「こういう風に動けば問題が解決するんじゃないか」と、常にフワっとしたイメージを先に組んでから、前に突き進んでいると思います。
――毎回、濃密な個性を備えたレジェンドが絡んできますが、ソウゴもゲイツもウォズもレジェンドに一歩も退かず、魅力を打ち出していっているのが頼もしいですね。
レジェンドのみなさんがゲストで来ていただいて、いつも「ありがとうございます!」という気持ちを常に持っているのですが、同時に「僕たちは決して(レジェンドの個性に)負けないぞ!」という心構えも大事にしています。先輩と張り合うってことではないのですが、それくらいの気持ちで毎回撮影に取り組んでいます。
――レジェンドの中でも、いちばんのクセ者といえば仮面ライダーディケイドの門矢士でしょうか。EP13~16でソウゴたちとタイムジャッカーの双方をかき回した上、その後もたびたび姿を見せるたびに謎めいた行動を取りますし……。
門矢士はもう、準レギュラーといっていいですよね(笑)。士を演じる井上正大さんご自身はとても優しい方で、いつも気さくに話してくださいます。
――ジオウは最強形態「グランドジオウ」になる力を得ましたが、未来世界のオーマジオウとはどういうつながりがあるのか、など、テレビシリーズがどういった結末を迎えるのか、わかる気配がまったくありませんね。
先に公開される映画も結末がぜんぜん予測できないと思いますし、これからテレビのほうもどんなエンディングを迎えるかわかりませんね。今はまだ不安だったり、怖い気持ちだったりがありますが、同時に楽しみに思っています。
――前作の『仮面ライダービルド』では"ビルドロス"、『仮面ライダーエグゼイド』では"エグゼイドロス"と呼ばれたように、テレビシリーズが最終回を迎えるとファンの方たちの心にポッカリ穴が空くかのような"ロス"に陥ることがありました。『仮面ライダージオウ』も1年間ハラハラしながら追いかけてきたファンのみなさんが最終回を過ぎると"ジオウロス"になってしまいそうですね。
確かに、共演のみんなと最近「"ジオウロス"って言ってくれるようになるかな」なんて話をしています。もちろん、僕たち自身がみなさんにそう思っていただきたいですし、よい内容の最終回を作っていけるよう、頑張っていきたいです。
――少し早い質問かもしれませんが、『仮面ライダージオウ』の1年間をふりかえって、お礼を言うならどんな方にどんなことを言いたいですか?
お礼を言いたい方が多すぎて、特にどなたか1人を挙げるのは無理ですね。『ジオウ』に携わられたすべての方々に、ただただ「ありがとうございます!」と申し上げたいです。ゲイツ、ウォズ、ツクヨミというメインキャストのみんなが一緒にいてくれたからこそ、僕は成長できたと思いますし、共に切磋琢磨しながら作品を作っていけたと感じています。
生瀬さんからは、芝居に対しての考え方を変えてくれるようなアドバイスをいただくことができて、ほんとうに感謝しています。一度生瀬さんとご飯をご一緒する機会があったんですけれど、そのとき生瀬さんから「お芝居はナマモノだから、自分で考えてガチガチに固めてくるんじゃないよ。もしも相手が自分の思っていたことと違う演技を投げてきたとき、ひとつの回答しかもっていなければそれで返すしかない。芝居というものは事前に準備してくるのではなく、その場で生まれてくるものなんだ」と言われたことによって、自分の中の芝居への意識が変わってきました。
田崎監督は、パイロット(EP1、2)のときから自分の成長していく過程を見守ってくださいました。『ジオウ』のラスト・エピソードとなる映画が田崎監督作品で、ほんとうに良かったです。感謝してもしきれない方です。
そして、仮面ライダージオウのスーツアクターを1年間務めてくださった高岩成二さんに、改めて感謝の気持ちを伝えたいです。僕がジオウに声をアフレコで入れる際にも、たくさん助けていただきました。アドリブで「あんな動きにこんなセリフを被せたら面白いな」とか、いろいろと楽しく遊ぶことができたのも、高岩さんの演技のおかげです。1年間、カッコいいジオウを演じてくださって、ありがとうございます。
――最後に、『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の見どころについて、一言お願いします。
驚きの展開がふんだんにありますので、映画をご覧になったお客さんたちが「マジか!?」「こんなことになっていいの?」「悲しい!」「良かった!」など、僕らが演じる役柄と同じように"感情"の推移を見せていってくださるとうれしく思います。面白い映画になっていますので、ぜひたくさんの方々が劇場へ足を運んでくださるのを願っています!
劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映