――続編ということで、前作から意識してバージョンアップを心がけたことはありましたか?

やるからには「前作を超えたい」というのは、多分誰しもが思っていることなんです。でも、そうなるとどうしても体に力が入っています。今回はそうじゃなくて、溜まっているものを違う場所で吐き出した感じでした。

前作と監督が変わり、違う場所に来た感覚がありましたし、別の作品を撮るような感覚で、前作を引き継いでいたので、表現としても良かったと思います。前作の『東京喰種』で1カ月半カネキを演じた時は、喰種に乗っ取られているような感覚だったけど、今回は喰種の自分を受け入れてる彼がいました。彼も前作から今作の間に、どこかで喰種の自分を1回受け入れる作業をしたのかな、と思いました。

――シリーズを続けていくことについては、どのように感じられていますか?

ありがたいです。プレッシャーも、もう感じなくなったのかな。今、本当に充実した状態に身を置かせていただいていてありがたい悩みなんですが、続けられるのも嬉しいし、新しいこともいろいろやりたいので、肉体的なきつさはあります。

10年くらいこの仕事をやってこれたんだから、最後までこの仕事で飯を食べたいし、「どうやったら生き残れるのか」を考えるようにもなりました。以前にドラマ『ジョーカー 許されざる捜査官』、『リーガル・ハイ』『エイプリルフールズ』と、同じ監督なんですが、先日、ドラマ撮影の隣のスタジオで監督と久しぶりにお会いした時に、思い返してそういう風に縁がつながるのは、とても嬉しいなと思いました。

■「変態」シーン話題も「美を感じる」

――予告などでも「変態」という言葉が話題になっていましたが、月山を演じた松田さんの演技で「これはやばい」と思ったシーンを教えてください。

読書カフェで対峙してた時に、カネキとしては気付いてはいけないんですが、不気味な雰囲気は感じていました。「いきなり大学に来ないでしょ、どこから入ってきたの!?」みたいな(笑)。囁いてくるし。

その延長線上で、カネキの見えないところで、月山がカネキの血のついたハンカチを嗅いで「うひゃ〜!」となっちゃってるじゃないですか! “変態”と”性欲”って、一緒にしていいのかわからないけど、人よりもオープンに生きてる彼だから、僕は逆に美を感じたし、生きづらくなくていいなと思いました。ブレないで、ずっと自分の芯だけを追い求めている。

考えたら、おいしいものを食べたいという月山は、グルメで人気の方みたいなことですよね。でもそれが形を変えて「人間を喰べたい」となると、「怖い」と思う。そこが、『東京喰種』という原作の一番面白いところだと思います。

――窪田さん自身には、変態的なところはあるんですか?

全然あります!(笑) 最近、潔癖症なことも認めたし、純粋に女性は好きだし、年齢を重ねて、できる限り嘘のない人間でいたいので。でも実際の翔太さんは、変態度が低いかもしれないですね。さらっと女性に「かわいい」とか、「髪切った?」とか言える、ジェントルメンなところがあって。僕にはできないから、うらやましいです。

――主演として立つことがぐんと増えているかと思いますが、心構えの変化や、感じるところはあるのでしょうか。

実は主役って「いる」ことが大事で、あまり遊べないというか。真ん中にいなければいけないから、ぶれるほど遊ぶことができないのかもしれません。今回の撮影で、トーカや月山が羨ましく見えていたのは、自由に動けるからなんです。舞香ちゃんは「後ろから見守っててくれた」と言うけど、トーカは勝手に前に行っちゃうんですもん(笑)。全体を客観的に見る力はついたと思います。動く人を見て、「自分はこうすればいいのかな」と、自分なりに主役の遊び方を覚えてきました。

きっと、皆さんが気持ち良く、納得できる現場を作るのが、主役の立ち位置なんだなと思います。今後も、皆さんが自由にできる空間は作っていきたいです。そんなことしなくても、勝手に行っちゃう人たちもいるし(笑)。

■窪田正孝
1988年8月6日生まれ、神奈川県出身。『チェケラッチョ!! in TOKYO』(06)で連続ドラマ初出演にして初主演を果たし、同年スクリーン・デビュー。14年、NHK連続テレビ小説『花子とアン』、TBS『Nのために』での演技が評判となり人気を博す。主な映画出演作品に『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13)、『予告犯』(15)、『ヒーローマニア-生活-』『64-ロクヨン-前編/後編』『MARS~ただ、君を愛してる~』(16)、『ラストコップ THE MOVIE』『東京喰種 トーキョーグール』(17)、『犬猿』『銀魂2 掟は破るためにこそある』など。本年出演作に『Diner ダイナー』(公開中)、公開待機作に『初恋』(20)がある。