5:金利の中身を知る
住宅ローンを借り入れる際は様々な諸費用が必要です。具体的にはローン事務手数料や保証料、団体信用生命保険、火災保険・地震保険、各種登記費用などがあります。
各金融機関の住宅ローンを比較してみると、金利もそれぞれ異なります。保証料は高額ですが、フラット35などの証券化ローンには保証料が不要です。ネットバンクには繰り上げ返済などがしやすい特性もありますし、金利の中にこれらの諸費用の一部が含まれているケースもあります。表面的な数値ではなく、中身を把握して選択ください。
金融機関独自の商品はむろんですが、同じフラット35の商品でも金利の差はあります。たとえわずかであっても、総返済額の差はかなりの額になると思いますので、少しでも低い金利を選択したいものですが、諸費用などを踏まえてトータルに有利なものを検討ください。
6:優遇措置を徹底的に活用する
政府は長期にわたって住宅取得を経済活性化の柱として活用してきました。「多くの方が住まいを取得する」「拠出資金が多額である」「業界のすそ野が広く広範囲に経済が活性化される」などがその要因でしょう。そのため、優遇措置は省エネ住宅の優遇金利、住宅ローン控除、住まいの給付金、固定資産税などの減免措置など、多岐にわたります。
住まいの給付金などは資金計画に組み入れているかもしれませんが、これらの優遇措置によって生じた金額は、しっかり管理しないと日常の生活の中で消費されて消えていってしまいます。別通帳で一括プールし、繰り上げ返済などの原資として、リスク低減に活用してください。プールして活用してこそ、優遇措置が生きてくるというものです。
7:借り入れたら、日々の管理が大切
大きな借財である以上、借り入れ後の管理も重要です。特に変動金利で借り入れている場合は、金利上昇のリスクを回避する手立てを講じておく必要があります。
下記の表は変動金利で借り入れた場合のリスク管理表です。できれば3%、少なくともその時の固定金利でも返せるだけの資金計画にしてください。変動金利の返済額との差額は別通帳などで管理し、繰り上げ返済の資金などに充てます。
下記の表は3,500万円を30年返済で借り入れ、固定金利との差額分を5年後と10年後に繰り上げ返済した場合のシミュレーションです。最後は3.5%の固定金利に変更していますので、総返済額は最初から固定金利で返済した場合よりも増えてしまっています。
しかし優遇措置分の資金などを加えて繰り上げ返済の額を増やせば、当初からの固定金利よりも総返済額を少なくすることも可能です。エクセル計算で簡単に検証できますので、その時々の実態に合わせて数値を変えて検討してみてください。いつ、どのくらい金利が上昇しても対処可能かなどの検証も可能です。
また、ライフプランニングシートを作成して、将来の計画とその収支を算定しながら、借り入れ後の管理を行います。ライフプランニングシートとは、これからの人生の収入と支出と預貯金残高を算出するものです。預貯金がゼロになったら家計の倒産です。少なくなれば、何かあった場合のリスクが高くなることを意味します。
本来、このライフプランニングシートは、住まい取得を検討する最初で行うのがベストなのです。ぜひそうしてほしいところなのですが、いきなりライフプランシートをすらすら作成できる方は多くはないでしょう。日々の節約や繰り上げ返済などをあれこれ検討していく中で、ライフプランニングシートの必要性を実感できると思います。
できれば平均余命までの年齢まで入力してください。大切なことは家族のイベント欄です。将来何をしたいか、そのための費用はどれほどかかるかを具体的に数値化すれば、今後の繰り上げ返済時期の判断やイベントの見直しなどに早い段階で対処できます。住まいの取得前に作成すれば、ローンの組み方や住まい取得の適正価格なども判断できるでしょう。
ポイント1~7までを見ると、大切なことは将来への想像力だとわかります。さらに起きるかもしれないトラブルに対して、早くからコツコツと準備していくことなのです。それをサポートするのがライフプランニングシートです。これらを活用して、無理のない返済計画を立てましょう。
■ 筆者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。