• 唐沢寿明、竜星涼

■「本気なのか冗談なのかわからないアドバイスをくださる」

――竜星さんはまさしく、子どもの頃から『トイ・ストーリー』を見て育ってきた世代ですよね。ウッディはフォーキーの先輩のような存在ですが、今回は事務所の先輩である唐沢さんから、どんなことを教わりましたか?

竜星:アフレコ自体は、僕が最初にやって出来上がったものの後に唐沢さんが収録される形だったので、一緒にセッションすることはなかったんですけど、前作や他の作品を見直したりして、自分の中でイメージなどを作りながらやりました。

――フォーキーがウッディに懐くように、唐沢さんに懐いたりは?

唐沢:それはないでしょ。キャラ的に(笑)。一言、言ったことがあったよな。スタジオで会ったときにさ。「お前、とことんさわやかに行けよ」って(笑)。それだけは言っておいた。

竜星:たまにお会いしたときに、本気なのか冗談なのかわからないアドバイスをくださるんですよ。それが意外と、こういう人間には染みるんです。

――唐沢さんも、一般的には「さわやかな好青年」というイメージがありましたよね。

唐沢:別に俺は悪人じゃないけれど、そういうイメージを100人中100人にずっと持たれると「そこまでさわやかな好青年じゃない」と思う。皆、そうじゃない? それ(=イメージ)との葛藤で生きることになるわけ。俺なんて、やっと最近だもん。それに慣れてきたの。一般の人もそうだけど、会う人会う人が、そうだと思って接してくるから。そのプレッシャーもどこかにあったりするわけだよ。何を言っても怒らない人とか、何やってもニコニコしている人みたいな感じで接してくるから、こっちはそれに応えなきゃいけない(笑)。

竜星:ある種、エンターテイナーですよね。

唐沢:それはもう、仕方がないんだよ。そういう風に見えちゃって、周りが勝手にイメージを作っちゃってるんだよね。

――竜星さんはそういったギャップに悩んだことはありますか?

竜星:そこまで自分が好青年だと思っていないからこそ、周りもそんなに好青年だと思っていないんじゃないかなとか(笑)。そういうところを、唐沢さんは「それじゃよくないぞ」って…。

唐沢:よくないぞじゃない(笑)。そこが悪いわけじゃないよ(笑)。

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■「ウッディ」というセリフを言える喜び

――4作目に至るまで吹き替えを務められてきたので、日本では「ウッディと言えば唐沢さん」というイメージが浸透しています。唐沢さんはその現実をどう捉えていますか?

唐沢:もしかしたら、1作目で終わってたかもしれない。僕も最初はオーディションで選ばれているわけだから、偶然と言えば偶然の話なんだよね。4作目までできて、アトラクションもできたり、いろいろなこともあった。「『トイ・ストーリー』が好きです」という人がこんなに増えた。そういう意味では、ありがたいと思いますね。

――そんな唐沢さんとの掛け合いが多い竜星さん、フォーキーのセリフで印象的なものはありますか?

竜星:台本をパッと開いて単純に感動したのは、「ウッディ」というセリフを言えることですね。シリーズをずっと見てきた人間が、その世界観に入って「ウッディ」と呼べている。『トイ・ストーリー』だからこそ言えるセリフじゃないですか。それはうれしい限りでしたね。

――それを聞いて唐沢さん、いかがですか?

唐沢:そう思っているんだなあって(笑)。今は別の作品をやっているから、久々にこの『トイ・ストーリー』に戻ってきてイベントに出たときに「あ、俺『トイ・ストーリー』のウッディをやっているんだな」と。「一瞬戻ってきた」みたいな感じなんですよ。竜星とかの立場からすると、こういうヒットしたアニメーションの世界に入れることで、すごく盛り上がってくるところがきっとあると思う。どう考えたって残る作品だからね。

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■プロフィール
唐沢寿明
1963年6月3日生まれ、東京都出身。1980年に「東映アクションクラブ」の一員となり、俳優としてのキャリアをスタート。スーツアクターや裏方も務めた後に、ドラマ『愛という名のもとに』(フジテレビ/92)で一躍人気俳優に。『トイ・ストーリー』シリーズでは、1作目から主人公・ウッディの日本語吹き替えを務めている。最近の出演作は映画『ラストコップ THE MOVIE』(17)、ドラマ『ハラスメントゲーム』(テレビ東京/18)、『グッドワイフ』(TBS/19)など。7月に放送開始となる新ドラマ『ボイス 110 緊急指令室』(日本テレビ)では、妻を殺した犯人への復讐に燃える敏腕刑事を演じる。

竜星涼
1993年3月24日生まれ、東京都出身。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日/13)でドラマ初主演、『劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリンチョ・オブ・ミュージック』(13)で映画初主演を務めた。最近の出演作には、映画『N.Y.マックスマン』(17)、『君と100回目の恋』(17)、『泣くな赤鬼』(19)、ドラマ『ひよっこ』(NHK/17)、『昭和元禄落語心中』(NHK/18)、『メゾン・ド・ポリス』(TBS/19)、『都立水商!~令和~』(TBS/19)などがある。183cmの長身を活かし、モデルとしても活動。2016年・2017年にはパリ・コレクション、2018年にはミラノ・コレクションに登場した。