クラウド環境を用意

Dynabook 執行役員の柏田真吾氏は、Windows 7延長サポート終了に触れ、「OSのサポート終了に左右されない環境を構築するためには、クラウドが重要なキーワードになります。いつでもどこでも自由に働ける環境を提供するという観点でも、クラウドは避けて通れない選択肢のひとつです」としてクラウドサービスの有用性を強調します。

  • Dynabook 執行役員 国内サービス事業本部長 建設業担当 柏田真吾氏

Dynabookの顧客調査では、ほぼ7割が何らかの形でWindows 10への以降が終わっているものの、Windows 10の運用に関しては4割が「導入後の運用管理に不安」「年に2回の大きなアップデートの管理に不安」といった不安を抱えているそうです。「クライアントPCの入れ替えは終わっても、環境を継続していけるかに不安が残っています」と柏田氏。

そこで、Windows 10更新プログラム配信時のネットワーク負荷を減らし、業務システムへの影響も避けられるDynabookの新サービスの紹介につなげました。先述した「Enterprise Mobility + Security導入支援サービス」です。2019年8月1日のサービス開始を予定しています。

内容は、「Azure Active Directory Premium」と「Microsoft Intune」を利用して、Windows 10の管理環境を構築するというもの。柏田氏は「このサービスをご利用いただければ、更新モジュールの配信もスムーズに行えます」と説明しました。このほか「Enterprise Mobility + Security ヘルプデスクサービス」と「Enterprise Mobility + Security 運用代行サービス」も用意。「サポートサービスで運用の不安を取り除き、さらにはリモートでメンテナンスを行うことでお客さまのビジネスをサポートしていきたい」(柏田氏)と話していました。

  • Enterprise Mobility + Security導入支援サービスの概要

業績改善の要因は?

質疑応答には、Dynabookの覚道清文氏と柏田真吾氏が対応しました。

シャープグループとなって8か月が経ち、業績の改善が進んでいるが、どのようなことをやってきたのかという質問に覚道氏は、「おかげさまで黒字基調に戻ることができました。ひとつに、シャープ流のコスト管理があります。鴻海も一緒になった調達活動による、部材のコストダウン。最初の数か月の収益に大きく貢献したと認識しています」。

「それと並行して、販売面ではシャープとの協業も進めています。特にBtoBのお客さま向けには、文教といったところも含めて、一緒に提案したりする。シャープの昔からのお客さまが、dynabook PCを導入してくださる事例もあります」(覚道氏)。

この回復基調を長い目で見て安定化させていくため、ハードウェア商品に依存するのではなく、サービス商品に注力する必要があると覚道氏。そのひとつが、今日の発表にもつながっています。

「国内の法人向け事業では売上ベースの40%が、PC本体以外の販売によるものです。オプションも含めた販売や、有償の修理サービス、新しいサービスの取り組みです。これを今後、海外にも広げていきたい。全体として、売上ベースで2割ほどをサービスで稼げれば」(覚道氏)。

  • Dynabook 代表取締役社長兼CEO 覚道清文氏

貿易問題の影響は?

米中や日韓の貿易問題は影響がありそうか、と聞かれると、「米中の貿易に関しては、今後、まだ何が起こるか分からないという状況です。アメリカに向けた出荷が影響を受けます。そこで、鴻海のある台湾との連携を密にすることも含めて対応していければ。鴻海やシャープと一緒になったことで、引き出しが増えました。今回の貿易問題のようなことがあったときに、チャンスとして生かしていきたい」(覚道氏)と話しました。

日韓の問題については「輸出手続きが厳格化されました。実際のところ、影響は分かりません。韓国メーカーが、どの程度、依存度があるか単純には言えないところ。PCによっても違うようですし、いま見極めているところです」と回答するにとどまりました。

8Kや5Gの分野では何を開発する?

8Kや5Gにおける新サービスの開発について、どのような内容が検討されているのか聞かれると覚道氏は「8Kディスプレイにおいては、インプットとアウトプットの間の編集作業、映像の編集を容易にできるソリューションなどを検討中です。5Gについては、折り曲がりの液晶を搭載したPCなど、可搬性を高めたものに5Gを組み合わせて、どこでもすばやく5G環境の下でサービスを実現できるソリューションを考えています」と展望を述べました。

上場までの道筋は?

2021年度中の株式上場に向けた道筋について問われると「まずは年度単位で黒字を定着させた後に、上場の申請をしていきたい。具体的なスケジュールがあるわけではないものの、売上規模は今年度2,400億円、20年度は3,000億円強に設定しており、今これに向けて順調に推移しています。上場のときは、安定した収益性に加えて、投資家の皆さんの評価にも耐える事業形態になっていることが重要。サブスクリプション、課金型のビジネスサービスなどを導入することで、お客さまと長いお付き合いができるとともに、収益を安定させていきたい」(覚道氏)としました。