部下は支援型のリーダーを求めている
今、ビジネス環境はVUCA(※)化しています。正解がなく、先が見えない時代を、上司世代も新人若手世代も手探りで進んでいる状況です。そうした中、誰にとっても必要かつ重要なのが「Try&Learn」の力。自ら考え、動きながら学習していくサイクルです。
※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
「いかにトライするか、その経験から学ぶかが、VUCA時代のビジネスのカギです」と桑原氏。
とはいえ、誰だって、正解がないこと、うまくいくかどうかわからないことにはトライしづらいもの。とりわけ今の新人若手世代はそこを苦手にしているそうです。
桑原氏「若手世代に入社後1年目の悩みや壁についてたずねたところ、『できない自分に自信喪失』『どう思われているか不安』『意味ややりがいを感じない』がトップ3でした。彼らが育ってきた今の社会は、『正解がない』『支援が得にくい』『多様な人との協働』といったVUCA的な環境での経験値が積みにくくなっています。
一方で、欲しい情報はすぐに入手できる環境に慣れているため、いかに最短距離でゴールできるかに関心があり、失敗することには慣れていません。ですから、正解がないことに自分なりにトライすることに不安を感じたり、トライしてうまくいかないとマイナスに捉えて落ち込んだり、行動できなくなるケースがあります」。
そんな新人若手世代からトライを引き出すためのキーワードとして、同じく研究員の小松苑子氏は「安心と信頼」を挙げます。
小松氏「彼らの行動を阻害するのは不安と恐れです。それを払拭するのが安心感と信頼感。上司が彼らと一緒に伴走し、失敗しても次にむけて一緒に考えてくれたり、いつか必ずできると信じてくれたりすると、彼らはトライできるのです。
彼らの心の声に耳を傾ける。気持ちと姿勢をみる。ありのままを認める。そんな風により対等に、フラットに彼らと関われる上司、安心感と信頼感を与えられる支援型のリーダーにシフトしていくことが、新人若手世代のトライを引き出すポイントです」。
一方で、新人若手世代も、上司世代の思いを理解しようとする努力が必要だと桑原氏は言います。
「ここ10年間で、新人若手世代は、マナーよりも仕事の成果に直接つながるスキル・知識を身に付けることを志向するようになってきています。しかし、上司世代に、『自分が忙しいときでも支援したくなるのはどんな新入社員か』を尋ねたところ、仕事ができるかどうかよりも、基本的な『マナー』や『素直さ』を見ているということが分かりました。
ビジネスの世界においては、特にまだ仕事をし始めた時期においては、マナーや素直さを大切にすることの方が、先輩や上司から協力を得やすい。まずはそれを、新人若手世代は知っておくと良いと思います」(桑原氏)
さらに小松氏も、新人若手世代に向け次のようにアドバイスします。
「上司の言っていることに対し、『違う』とか『なぜ』と思ったときには、上司にその意図を聞いてみてください。言葉の裏側にあるものを聞いてみると、『そういうことなんだ』と共感できることもあると思います。
表面的な言葉を自分の解釈で判断してしまうと、『この人合わないな』『この仕事面白くないな』と感じてすぐにシャットダウンしてしまうことがあります。でも、そうではなくて、もう一歩踏み込んでその意味や意図を自分で見つけにいったり、聞きにいけたりすると、ビジネスパーソンとしての自分の経験サイクルも変わってくると思います」(小松氏)
いつの時代も上司と部下の間にジェネレーションギャップは存在します。でも、上司と部下は決して相容れない存在「ではない」のです。互いに理解し合い、学び合おうとする姿勢で関われば、きっと良い関係性が築けるのではないでしょうか。