CESで繰り広げられたマイクロとミニの共演

2019年1月8日~11日にかけて米ラスベガスで開催された「CES 2019」では、さまざまなディスプレー技術の競演が繰り広げられた。中でも大きな話題は「マイクロLED」であろう。このマイクロLEDディスプレーは2018年も注目され、今年はその進展に期待が集まった。

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    図1 CES2019に出展したLEDディスプレー(筆者が整理)。Samsungは、比較のために2018年のものも記載。PlayNitrideの欄に記載した55型の数値は、展示した5型の解像度が55型4Kとほぼ同等であることを示す参考記述

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    図2 CES2019の一般展示で公開されたLEDディスプレー(筆者が撮影)。この他にもSamsungの75型4K、gloの0.7型と1.5型、PlesseyのGaN on SiベースのマイクロLEDなどがプライベート展示でデモされた

SamsungのThe Wallは、2018年に展示された4Kのモジュール数を縦横それぞれ1.5倍に増やして6Kにしたものが展示されていた。搭載しているLEDのチップサイズは公開されていないが、業界の一般的なコンセンサスでは、100μm以下のサイズのLEDチップを使った物をマイクロLEDディスプレーと呼んでおり、100μm以上のサイズをミニLEDと呼んでいる。展示されていた各社のディスプレーに使われているLEDではこのLEDチップサイズや実装方法が各社で異なっている。

ミニLEDの用途は、直視型のLEDディスプレー以外にもLCDのバックライト用途が注目され、今後の急速な市場拡大が期待されている。当面は、ミニLEDとマイクロLEDの相乗効果で、LEDディスプレーの開発と実用化が加速していくことになる。

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    図3 CES2019で公開展示されたLEDディスプレーを画面サイズでプロット(著者作成)。LEDディスプレーは、未だ出始めたばかりで、使われるLEDチップサイズや実装方法など各社それぞれであり、手作り的な面が強い。このため画面サイズも各社で大きく異なり狙う市場も異なってくる

バラ色の夢から覚め着実な開発へ

マイクロLEDは、この2、3年、業界の注目が集まりLCDやOLED(有機EL)を超えるディスプレーとして期待が高まっている。筆者も、SID国際会議で大きく取り上げられるようになった2015年頃から注目し、特に力を入れているアジア各地の会議や展示会を廻りながら業界の方々と議論してきた。

2017年に期待が大きく膨らみ、立ち上がりつつあるOLEDを直ぐにでも追い抜くかのような議論もされ、調査会社も急速な市場拡大の予想を立てていたが、2018年の動きを見ると、その難しさや具体的な課題が明らかになり、マイクロLED開発に携わる関係者の方々の発表にも慎重な発言が相次ぐようになった。

マイクロLEDの課題は、業界で広く認識され始めているマストランスファーと呼ばれる実装方法以外にも数多くの課題がある。LEDチップの微細化から始まり個片化、接合、バックプレーンの駆動技術、フルカラー化、光取りだし、検査、リペア等々、課題を列挙すればキリが無い。一般的にLEDディスプレーはLCDやOLEDに比べてシンプルだと言われているが、関係者と具体的なディスカッションをしていると、LCDやOLEDと同程度の難しさがあると感じている。マイクロLEDディスプレーが広く市場に普及していくためにはLCDやOLEDと同じように製造設備や材料の革新が重要であり、関係する業界各社も真剣に取り組み始めている。2年前は華やかな発表を繰り広げていた学会や会議の雰囲気も変化してきており、最近は各社が水面下での着実な開発に転じていることを感じている。

マイクロLEDの真の実用化までには時間がかかるが、一旦ブレークスルーが起きれば、LCDやOLEDと同じように新たな市場を拡大していくことになるだろう。今はその為の仕込みの時期だと言える。