――マゲや着物を身に着けて見てのご感想はいかがですか。

カツラはかなり"似合っている"と思います(笑)。以前演じた役は月代(さかやき/前頭部から頭頂部までの髪を剃りあげた部分)があったのですが、今回は前髪を残しているので、それほど違和感がなかったですね。武田(航平)くんが演じた寺脇甚八郎のように、位の高い侍は剃るんですけれど、兵庫は"田舎侍"という設定でしたから。着物については、田舎道場の師範代というからもっとボロボロなものを想像していたのですが、衣裳合わせのときに「あれ、いい服着てんな」って(笑)。でも、御前試合に出場する他の人たちと見比べてみると、やっぱり田舎っぽさを思わせる衣服になっていました。

――兵庫は凛ノ介と共に「御前試合」の予選に臨みますが、そこで櫻井右京と当たったことがきっかけとなって、その後に思わぬ展開が待ち受けることになります。因縁の相手となる右京を演じるのが、『仮面ライダーエグゼイド』で小野塚さん演じる九条貴利矢たちと敵対していたグラファイト役の町井祥真さんというのも、非常に縁深いものがありますね。

町井くんとの戦いは、楽しかったですよ。撮影に入る前、セットの外で町井くんが殺陣師さんに動きをつけてもらって、懸命に練習をしていたんです。右京の必殺剣である「破王剣揚羽」というやつです。けっこうな時間と取って練習したのにも関わらず、向こうが斬りつけようとすると、僕(兵庫)がパンとはじいてあっさり勝利してしまいました。そこがシュールで、面白かったんです。「破王剣揚羽~!」って言ってものすごい"溜め"を作ってかかってきたのに、一撃で倒されるという。あの大仰な仕草はいったい何だったんだろうか(笑)。でも、町井くんの演じていたグラファイトも、まず勢いから入るようなキャラだったんですよ。最初のころは「ドドド黒龍剣」だった必殺技が、レベルアップしていくうちに「ドドドド黒龍剣」「ドドドドド紅蓮爆龍剣」「ドドドドドドドドド紅蓮爆龍剣」って、"ド"がどんどん増えていくんです。強さを示すために技の名前をどんどん派手にしていくという感覚がグラファイトらしいというか、あまりいないよなあって(笑)。

――予選試合には右京に圧勝した兵庫ですが、その後、右京と兵庫は思わぬ所で"激突"することになります。ここでの出来事が、凛ノ介に隠密としての任務以外の行動を取らせるきっかけになるわけですが、このことから考えると、凛ノ介にとって屈託のない明るさを備える兵庫は非常に重要な存在だったと言えますね。

底抜けに明るい兵庫が側にいることによって、個をなるべく消そうとしている凛ノ介の"人間性"が浮き出てくるようになればいいなと思いながら、演技をしていました。人物像としては、まったく違いますけれど、兵庫と凛ノ介の関係性って『エグゼイド』の貴利矢と永夢(演:飯島寛騎)に似ているのかなって、映画を観ていると思えてきますね。

――撮影時期は昨年の暮れだとうかがいましたが、そうするとかなり寒い時期での撮影で、たいへんだったのではないですか。

以前は2月ごろに拷問されて水をかけられるシーンを撮ったりしたこともあって、冬の京都の寒さは身に染みて実感していました。今回は「水」関係の撮影がなかったこともあって、寒くて寒くてたまらない、という状況にはなりませんでしたね。『エグゼイド』のときはよく"雨降らし"による人工の豪雨を浴びていましたが、あのときは本当にたいへんでした。上半身アロハシャツだけで水浸しですから……。夜中から朝まで水に濡れていると、あまりの寒さでだんだん眠くなってきたりして。あれはかなり危ないやつですね(笑)。

――兵庫の演技について、石田監督からはどんなことを言われましたか?

石田監督とは『エグゼイド』のときはご一緒していなくて、今回初めてお会いしたんです。僕にとっては、子どものころに観ていた『仮面ライダーアギト』(2001年)の監督さんだ!という思いが強くて、そんな方と今一緒にお仕事をしているという、不思議な感覚を覚えました。石田監督に言われた言葉で印象に残っているのは、兵庫の芝居を「もっともっと、"やりすぎ"と思うくらい豪快に表現して」ってことですね。自分の尺度で芝居をしているとわからない部分があって、豪快にやっているつもりでもまだ足りたいところがあったようで。試写のときに全部つながった状態で観てみると、撮っているときは「これってオーバーかなあ」と思っていた部分が、とても自然に見えたんです。やはり、ワンシーンずつ撮りながら全体のバランスがしっかり見えているという石田監督の手腕はすごいと思いました。

――撮影を離れた時、キャストやスタッフのみなさんで遊びに行かれたということはありましたか。

あっちゃんの出番が多く、朝も早かったので、あまり一緒になる時間が取れなくて残念でした。一度、宿泊しているホテルの下にラーメン店があって、2人で行ってラーメンを頼んだらものすごい量が出てきて驚いたってことがありました(笑)。また、スタッフさんとは一緒に食事に行って馬刺しをごちそうになりましたね。しかし、休みの日に京都をめぐるとか、そういった行動はぜんぜん取りませんでした。撮影のために、できるだけ体力は温存しておきたいと思って(笑)。ホテルでゲームをしていることが多かったですね。よく町井くんが遊びに来て、2人でゲームをひたすらやっていたことがありました。

――『GOZEN -純恋の剣-』での、兵庫の見どころを教えてください。

やはり予選試合で町井くんの右京をぶっ飛ばしたシーンですね。撮影前に「木刀、当たったらすみませんね」「指とか折れちゃったらすみません」なんて冗談を言うと、町井くんも「ホントにやめてね!」なんて返してくれます。こういうのは『エグゼイド』のころからやっていました(笑)。映画全体の見どころとしては、「仮面ライダー」「スーパー戦隊」という東映特撮のキャストたちが集まって、時代劇の立ち回りをするというところでしょうね。そして、時代劇版『ロミオとジュリエット』というべき、純愛ドラマの要素も入っていて、若い方たちに親しみのある作品になってくれたらうれしいと思っています。