東映と東映ビデオが新たに立ち上げたプロジェクト「東映ムビ×ステ」の第1弾として、映画『GOZEN -純恋の剣-』が2019年7月5日より公開される。東映ムビ×ステとは、MOVIE(映画)とSTAGE(舞台)の融合を目指し、同一の世界観で異なる物語を描こうとする意欲に満ちた企画であり、最初の題材として東映京都撮影所による本格的な"時代劇"が作られることになった。

キャスティング面での話題は、過去に「仮面ライダー」シリーズや「スーパー戦隊」シリーズで活躍した俳優たちが大挙出演していることだろう。これまでの"特撮ヒーロー"とはまったく異なる一面を見せようと、血気盛んな若き俳優たちが劇中の"御前試合"さながらにお互いの演技をぶつけあい、切磋琢磨するさまがそのまま映像に焼き付けられている。

ここでは、本作の主人公・青山凛ノ介(演:犬飼貴丈)の親友で、赤松道場の師範代を務めている赤松兵庫を演じる小野塚勇人が登場。映画『GOZEN -純恋の剣-』の撮影にまつわる裏話や、役にかけた思い、そして作品の注目ポイントを尋ねてみた。『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)の仮面ライダーレーザー/九条貴利矢役とはひと味もふた味も違った、小野塚勇人の新たなる魅力を感じ取っていただきたい。

  • 小野塚勇人(おのづか・はやと)。1993年生まれ、千葉県出身。2010年に開催された「第3回劇団EXILEオーディション」への参加がきっかけとなり、2012年9月の舞台『あたっくNo.1』で「劇団EXILE」メンバーに加入。その後、東海テレビ製作の昼ドラ『碧の海~LONG SUMMER~』(2014年)や日本テレビ『HiGH&LOW~THE STORY OF S.W.O.R.D.~』(2015年)などのテレビドラマに出演後、『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)の仮面ライダーレーザー/九条貴利矢を演じ、特撮ヒーローファンからも熱い視線がそそがれた。撮影:大塚素久(SYASYA)

――今回の映画のお話が来たとき、まずどのような思いを抱かれましたか?

『仮面ライダーエグゼイド』でお世話になった大森(敬仁)プロデューサーからのお話でしたし、主演の犬飼(貴丈)くんとは以前のお仕事(2014年『碧の海~LONG SUMMER~』)で親友役として共演していたこともあり、時を経てまた共演できるというのはうれしかったですね。

――『GOZEN -純恋の剣-』でも、犬飼さん演じる青山凛ノ介と小野塚さん演じる赤松兵庫とは親友という間柄なんですね。

そうなんです。以前の共演経験からあっちゃん(犬飼)の持つ空気感はわかっていましたし、お芝居もやりやすいと思いました。

――今回は仮面ライダーやスーパー戦隊で活躍された俳優さんたちが、東映京都撮影所で本格的な時代劇に出演する、という部分が大きなポイントだと思いますが、小野塚さんはすでに時代劇への出演経験があったそうですね。

2016年に松竹京都の『池波正太郎時代劇スペシャル/顔』という作品に出演させていただいたことがありました。そのときはベテランの俳優さんたちに囲まれ、自分はまだ20歳そこそこで、経験がない中で毎日模索しながら取り組んでいた思い出が残っています。今回は、若くてフレッシュな人材が中心となって時代劇を作っていくということで、自分としても以前の経験を思い出して、たたずまいなどが現代人っぽくならないように臨みました。道場の師範代という役で、腰が軽く見えると弱そうに映ったりしますから、そういった所作の部分は現場で細かく指導を受け、芝居をする際にも強く意識しました。

――小野塚さんご自身は、時代劇というジャンルについてどんな印象を持たれていますか。

やってみてわかることですが、表現方法が難しいなと感じました。でも日本ならでは独自の文化ですから、これまであまり時代劇を見たことのない若い世代の人たちが楽しめるような作品があってほしいし、今回の『GOZEN』がそうなっていると確信しています。

――赤松兵庫という人物について、台本を読まれたときどういう印象を抱かれましたか?

石田(秀範)監督からも言われたことなのですが、底抜けに明るい男で、親友の凛ノ介のことを心から思っているという。男らしさ、豪快さと共に、他人を思いやる繊細や、悩みを理解する柔軟さを持ち合わせる人物だと、台本を読んだときに感じ取りました。単純に、豪快で明るい男だけで終わりたくないなと思いましたし、ちょっとした仕草や目線の動きによって凛ノ介との信頼関係をうかがわせるなど、セリフをしゃべる以外でも兵庫という人物像に深みを増していければという気持ちで演じました。

――凛ノ介と一緒に屋台で酒を呑むといったシーンがあり、2人の仲の良さ、友情をうかがわせますね。

屋台で呑むシーンは芝居が難しかったんですよ。これまで自分から「飲みに行こう」なんて言わなかった凛ノ介が、初めて誘ってくれた。そのうれしさがあるのに兵庫は表に出さず、凛ノ介の話を聞いてやるという。兵庫の内心のうれしさをいっぺんに表現しようとするとぜったいに失敗すると思ったので、計算しながら細かく感情を出していくように心がけました。

――凛ノ介は赤松道場を隠れみのにしているだけで、裏では隠密の任務を果たすべくダーティな動きをすることもありますが、兵庫はその裏の顔を知らず常に明るく接しています。兵庫の存在が凛ノ介にとっての"救い"になっている感じですね。

凛ノ介は「裏」と「表」を使い分けて生きていますが、兵庫には裏がありません。凛ノ介が"陰"であるならば、兵庫は"陽"として、いい対比ができればいいなと思っていました。

――小野塚さんは、兵庫のキャラクターにご自身と共通するものを感じていたりしますか。

最近、兵庫のような"明るい"系の人物を演じる機会が多いのですが、プライベートの自分はそんなに明るい男ではないかもしれません。仲間たちといるときは騒ぐこともありますが、独りでいるときはずっと黙っているというか。まあ、誰もいないのに騒いでいる奴はいませんけれどね(笑)。どちらかというと独りでずっといても平気というか、大人しい人間だと思っています。