クルマの電動化が進み、次々に新たな電気自動車(EV)が登場する昨今だが、あえて今、ディーゼルエンジン搭載のクルマを買うことにメリットはあるのだろうか。自身もディーゼルエンジン車を所有するモータージャーナリストの塩見智さんに聞いた話を交えつつお伝えしたい。
※文はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました
ランニングコストとイニシャルコスト
人にもよるだろうが、筆者の身の回りを見渡すと、ディーゼルエンジンのクルマに乗っている人は少ない。物流を支える大型トラックなど、大きくて重いクルマがハイパワーなディーゼルエンジンを積むのは理解できるが、乗用車に載せる必要はあるのだろうか。
塩見さんによると、ディーゼルエンジンを積む乗用車(以下、ディーゼル車)の利点はいくつもある。まず、ガソリンよりも安い軽油で動かせるので、ガソリンエンジンを積む乗用車(以下、ガソリン車)に比べれば、燃料代は乗れば乗るほどお得になる。ハイオクを給油する必要がある輸入車であれば、更にディーゼルの恩恵を感じられるはずだ。さらに、ディーゼル車は燃費も良好である。
ただし、ディーゼル車は一般的に、ガソリン車よりも価格が高い。最初に多く払っておいて、差額は燃料代の安さや燃費のよさで取り戻したい(元を取りたい)ところだが、それが可能かどうかはガソリン車との価格差にもよるし、乗る人の乗り方にもよるというのが実情だ。
塩見さんは以前、マツダ「アテンザ」のガソリン車とディーゼル車を比較し、ディーゼル車を買った方が経済的に得になる「損益分岐点」を算出してみたことがあるという。当時の燃料代や補助金などを織り込んだ試算によると、元を取るのに要する期間は、走行距離が年間1万キロの人であれば7年程度、同2万キロの人なら約3年半という結果だったそうだ。
これらのファクターを踏まえ、塩見さんは「年間4,000~5,000キロしか乗らないとか、『サンデードライバー』の方にはオススメしませんが、通勤で毎日40~50キロの距離を乗るとか、長距離のドライブが好きな人は、ディーゼル車のメリットを感じられるでしょう」と解説する。ただ、ディーゼル車を選ぶ理由は、何も「損得」だけではないはず、というのが塩見さんの思いでもある。