iPhoneとiOS

販売の苦戦が伝えられてはいるものの、今なお高い人気を誇るiPhoneとiOSだが、次期iOS「iOS 13」の新機能として真っ先に伝えられたのが「Face IDの高速化30%」「アプリの容量削減50%」「アップデートの容量削減60%」「アプリの起動時間が半分」という最適化周りの改善だった。iOS 12が飛び抜けて重いわけではないが、レスポンスがよくなるのは、旧モデルを使っているユーザーにも朗報だろう(なおiOS 13の動作環境はiPhone SE/6s以上となる)。

iOSというよりはiCloudよりの話題になるが、Apple製マップの改良も大きな話題だ。米国では年内、その他の国では2020年からということだが、カメラを搭載したAppleの車が日本国内でもあちこちを走っており、道を確認しながらGoogle Mapsの「ストリートビュー」に相当する「Look arround Window」で利用する写真を撮影している様が確認されている。Apple Mapsは当初、その情報精度の低さが酷評されていたが、地道なアップデートでだいぶ改善されてきており、一方でライバルのGoogle Mapsは日本での地図データの変更で評価を落としている。Appleユーザー限定にはなるが、地図ユーザーのシェアも大きく変わるかもしれない。

  • 4月に筆者の友人が品川で遭遇したApple Mapsカー。こうして東京都内などの写真を収集して回っているようだ

またセキュリティとプライバシーについての説明で登場した「Sign in with Apple」も重要だ。TwitterやFacebook、GoogleなどのIDで他のサービスにログインする「サードパーティログイン」(SNS認証)は、それらのSNSに登録された年齢、性別といった個人情報がサードーパーティに提供されることがある。

  • サードパーティログイン界隈の勢力圏を塗り替えかねない「Sign in with Apple」

これに対して「Sign in with Apple」では、Appleはユーザーの個人情報を一切サードパーティに提供しない。メールアドレスですら、専用にApple IDとリンクした匿名アドレスを割り当てるという念の入れようだ。それではサービス側はどこも採用しないだろうと思われるが、サードパーティログインを使うアプリにSing in with Appleの導入を義務付けするため、ほとんどのサービスは受け入れざるを得ない。この手のサービスでは最後発ながら、セキュリティ意識の高まりを武器に、一気に勢力を伸ばせる公算が高い。要注目だ。

iPadとiPadOS

一時期売り上げが低迷していたものの、iPad Proの登場以降、再び好調を取り戻しているiPadだが、スライドオーバー&スピリットビューといたマルチタスク機能やApple Pencil対応など、独自の機能が非常に多くなってきた。こうした事情も踏まえ、ついにiPhoneと差別化する意味も込めて「iPadOS」という名称で枝分かれした。従来通りiOS(iPhone)用アプリも動作するようだが、iPad専用に開発されたアプリをもっと加速したいということだろう。

筆者は以前から事あるごとに、iPadはMacBook系のライバルになると言ってきたのだが、「iOS系は業務に使えない」という反対意見も多く頂戴してきた。こうした反対意見の理由としては、iOS系はタッチ操作なので細かな調整がしにくい、ソフトキーボードでは文字入力が面倒、複数のアプリを連携させにくい、ファイルの扱いが弱い、コンパイルできないから開発には使えないーーといったことが指摘されていたが、筆者にとっては、それはAppleのさじ加減一つでどうにでもなる話だと思っていた。

事実、iPadOSでは同一アプリのスプリットビューに対応するだけでなく、macOSのFinderに相当する「ファイル」アプリで、macOSのFinderの特徴である「カラム表示」をサポートし、ZIPアーカイブやUSBメモリやSDカードの読み書きに対応、iCloud Driveファイル共有やLAN上でのSMBによるPCとのファイル共有までサポートしてみせた。さらにSafariの表示もPC向けサイトが標準となり、アプリ単位ではあるがカスタムフォントの扱いも可能になる。こうなるとmacOSとの差異はどんどん小さくなる(どうやらマウスをサポートするところまできているようだ)。

  • Windowsとのファイル共有も可能となり、一気に実用性が高まる。あれだけファイルのやり取りに苦労した初期iOSと比べると夢のようだ

最近では教育市場やクリエイティブ系ユーザーだけでなく、エンタープライズ系でもiPadユーザーが増えている。ノートPCとは比べ物にならないほど軽く、処理速度も見劣りしなくなっているのだから当然といえば当然だろう。今後はiPadがAppleにとってますます重要な位置を占めることになる。iPad OSのリリースはその宣言だと感じられた。