今回の試乗車は、XC90の「D5 AWD インスクリプション」だった。D5搭載車の上級モデルだ。試乗コースは、割とタイトな峠道が中心となった。
まずは静粛性だが、最新型ディーゼルエンジンなので、エンジン音は静かだ。XC90は高級車なので、もともと遮音性能に優れているのだが、窓を開けて走っていても、エンジン音が気にならない程度だった。エンジン自体の音も、しっかりと抑えられていることがわかる。
D5には大小2つのターボチャージャーが搭載されているので、急な登坂となっても、しっかりとパワーを発揮し、楽々と登っていく。アクセル開度は控えめで問題ない。パワーパルスの威力を感じやすいのは、素早く発進したい時だ。登坂の途中からの発進、交差点で素早く右左折を行ってしまい時などに、グッとアクセルを踏み込むと、俊敏な加速を見せてくれる。この感覚は、パワフルなガソリンターボ車に近い。大型ボディなのに、実に身軽なのだ。普段はクルーザーのように、どっしりと構えた上品な走りを楽しませてくれるが、必要とあれば、脱兎のごとく俊敏な身のこなしもいとわない。
昨今のディーゼルエンジンは実にスムーズだが、ガソリン車と比べると、発進時など、依然としてもっさりとした感じを受けることがあるのも確かだ。パワーパルスは速く走るための機能というよりも、ディーゼルエンジンをより魅力的にするためのアクセサリーと考えればわかりやすいかもしれない。
ちなみに試乗車は、標準仕様となるバネのサスペンションを装備していたが、乗り心地はかなり良く、快適だった。ただ、エアサスペンション仕様も30万円アップで選べるので、多くのユーザーはエアサスを選ぶという。ほかの仕様でエアサス車にも乗ったことがあるが、その感覚は、まるでフワフワの絨毯の上を歩くようで、高級車に乗っていることをより実感できる。ただ、路面からのインフォメーションは、バネサスの方が優れる。運転好きならバネサスを選ぶのもいいだろう。
エンジンの選択肢を増やすのが狙い?
クリーンディーゼルエンジンの導入が、XC90の発売から3年を経た今となった理由をボルボ・カー・ジャパンに尋ねると、同社では当初から導入を計画していたが、さまざまな理由から時間が必要だったとのこと。ボルボはすでに、ディーゼルエンジンの新規開発を行わないことを公言しているが、新世代エンジンに設定済みのクリーンディーゼルエンジンについては、今後もブラッシュアップを図っていくようだ。
また、ボルボによれば、XC90はフラッグシップSUVということもあり、必ずしもディーゼルエンジンがないと購入してもらえないクルマでもないという。ディーゼルエンジンの追加は、販売台数の大幅増を目指した施策というよりも、顧客に新たな選択肢を提供するという意味合いの方が強いようだ。
同等装備のガソリン車「T5 モメンタム」と「D5 モメンタム」の価格差は70万円。ただ、ガソリン車の上級仕様「T6 インスクリプション」と「D5 インスクリプション」の比較だと、逆にディーゼルエンジン車の方が10万円安くなる。軽油によるランニングコストの安さに加え、牽引などを含めたアウトドアニーズなどを考慮しても、最上級「インスクリプション」を狙うならクリーンディーゼルエンジンの「D5」、総合力を求めるならガソリンエンジンの「T5」というところか。ただ、高価格帯車なので、ユーザーはそこまで価格差を気にしないかもしれない。そういう方々には、街乗り中心ならガソリン車、アウトドアユースやロングドライブが多いならディーゼル車をオススメしたい。