ボルボのフラッグシップSUV「XC90」にクリーンディーゼルエンジン搭載車「D5」が追加された。同社のクリーンディーゼルエンジンの中では最もパワフルな仕様で、搭載車の日本導入は今回が初めて。XC90のディーゼルエンジン仕様自体も日本では初登場となる。一般的に、大型SUVとの相性がいいと見られているディーゼルエンジンだが、果たしてその実力は。試乗して確かめた。
まずは簡単に、ボルボXC90の来歴を振り返りたい。このクルマは、ボルボの新世代モデルの第1弾として、2016年1月に日本に上陸した7人乗りの大型SUVだ。ボルボの中ではフラッグシップに位置する。
次世代に向けた多額の投資によって生まれた新型XC90は、プラットフォームを含め全面的な刷新を図り、ボルボご自慢の安全性能にも磨きがかかった。また、デザインも新生代へ向け一新。ボルボの伝統的なアイコンを受け継ぎながら、高級車らしい風格を備えた内外装を実現したことで、日本でも多くのファンを獲得した。789万円~1,309万円という高価格帯でありながら、昨年は945台を販売している。搭載するエンジンは、プラグインハイブリッドを含めガソリンエンジンのみであったが、今回、新たにディーゼルエンジン仕様が登場したわけだ。
加速のもたつきを抑える「パワーパルス」
XC90 D5のスペックを見ていくと、ボディサイズは全長4,950mm×全幅1,960mm×全高1,775mmと大きい。日本車だとトヨタ自動車「ランドクルーザー」に近いサイズだ。クリーンディーゼルエンジン「D5」は、尿素水溶液「AdBlue」(アドブルー)を使用する尿素SCRシステム(排気ガスを浄化する装置)を搭載した2.0L4気筒ターボエンジンで、最高出力235ps/4,000rpm、最大トルク480Nm/1,750rpm~2,250rpmを発生する。燃料消費率は13.6㎞/L(WLTCモード)と公表されている。
このエンジンがユニークなのは、加速のもたつき(ターボラグ)を抑えるため、「パワーパルス」と呼ぶ機能を搭載していることだ。
ターボとは排気ガスでターボチャージャーを回し、圧縮した空気を燃焼室に送り込むことで、同じ排気量のエンジンよりも大きなパワーを発生させるものだが、ターボチャージャーの動力は排気ガスなので、エンジンが低回転の時は効果が少ない。ターボ自体の改良が進んだことでターボラグも解消傾向にあるが、SUVのような車重のあるクルマのディーゼル車では、発進時などの限定的な領域で、ガソリン車と比べるとスムーズさに欠ける時もある。
「パワーパルス」は、エアコンプレッサーで圧縮した空気を強制的にターボに送り込むことで、ターボの恩恵を低回転域からでも、しっかりと得られるようにする機能だ。先ほども説明したが、通常時は気にするほどの差はないので、作動領域は、アイドリング時から時速30キロまでの急加速時に限定されている。同じエンジンで、パワーパルスの有無で性能を比較した場合、搭載車は瞬間的にエンジンの出力が2倍になるというから、効果の大きさを感じさせる。