■陰で支えてくれる誰かがいないと部長としても崩れちゃう

――優子を演じる身としてはやっぱり全国には行きたかった?

当たり前じゃないですか!! (原作者の) 武田(綾乃)先生に媚び売っとけばよかったなと思ったくらいです(笑)。「優子を全国に行かせてください!」って言っておけばよかった。失敗したなぁ(笑)。台本を読んだとき「あー、全国行けないんだ」って思っちゃいました。悔しいですね。

――悔しいと感じるくらい優子にのめり込んでいた。

すごくのめり込んでいました! 台本を読んだときには号泣したくらいです。だから、全国に行けなかったのに、みんなの前で挨拶するとき泣かなかった優子はやっぱりすごいです。私なら「悔しいです」って言って、絶対に泣いちゃいます。

――そんな優子も舞台裏、夏紀の前では泣く姿を見せます。

そうなんですよ。ここから最後の挨拶までは、私が泣きっぱなしです(笑)。

――優子と夏紀は犬猿の仲と言われつつも、何だかんだお互いを信頼し合っているということが分かる場面がたくさんありました。山岡さん自身はこのふたりの関係をどう捉えていらっしゃいますか?

もう、持ちつ持たれつなのかなと思います。TVシリーズ第1期のころから、優子はピンチになると何だかんだ夏紀を頼っているんですよね。背中で泣いているなんてこともありました。優子って脆いところがあるので、陰で支えてくれる誰かがいないと部長としても崩れちゃうと思うんです。そこを支えてくれたのが夏紀だったんじゃないかな。

――部長として常に周りを鼓舞できていたのは夏紀がいたから?

そうだと思います。今回、描写的としてはあまりありませんでしたが、最後にみんなへのメッセージを言うときに夏紀に向けて「ありがとう」と言っています。このことばに”それほどの何かがあった“ということが凝縮されていると思うんですよね。

――同学年のなかでも夏紀は特別?

そうですね。だって、みぞれと希美はむしろ優子がフォローしていたところもありましたし、かといって他の3年生かと言われると……やっぱり、彼女にとって、頼れる存在というのは言い争いもできる夏紀なんだと思います。

――素敵な関係です。さきほどみぞれと希美の話が出ましたが、そう考えると優子ってすごく面倒見がいいですよね。

いいと思いますよ。描かれていない部分は多いですけども、でもことばから細かい気配りは絶対にしている子だということが感じ取れます。

――3年からはもちろん、久美子たち2年からも信頼されているということが分かることばもありましたが、それなら1年からも信頼されていますよね。

もちろん!

■吹奏楽の魅力は一体感

――ここまで色々とお話をうかがってきましたが、山岡さんが本作で一番印象に残っているシーンやことばは何でしょうか?

やっぱり「下手な先輩は存在自体が罪」ということばですよね。あそこは刺さります!

――このことば、実は以前にインタビューした久美子役の黒沢さんも同じシーン、同じセリフをチョイスされていました。

そうなんですね! やっぱり色々な人に刺さるんだ……! このことばって吹奏楽に限ったことじゃないと思うんですよね。今だってそう、下手な先輩は存在自体が罪だから下手な先輩にならないように意識しないといけないです。後輩たちが悲しい目にあっちゃいますから。

――そういう意味では吹奏楽部経験者はもちろん、それ以外の方にも刺さることばやシーンはたくさんある気がします。

そうですね! 吹奏楽部って人間関係などをクリアにするために色々と考えていましたし、怒られるのも慣れるので(笑)、社会人になるうえで必要なことをたくさん経験できた気がしているんですよね。私は全てをここで学んだなという気がしています。

――そんなすべてを学んだという山岡さんが思う吹奏楽の魅力とは。

何と言っても一体感です。演奏をして席を立った瞬間のあの感動は忘れられません。やった人にしか分からない感動があそこにはあると思います。

――私、あの席を立つ瞬間の音が大好きなんです。

メッチャ分かります! あの「ざっ!」っていうやつ。あれは最高ですよね。

――最高です! 今思い出しても涙が出そうなくらいです。

みんなが一体になって、終わりましたというあの瞬間……。あれは最高です。

――広い会場になればなるほどその音の感動は大きいかもしれないです。

そうですね。あー、全国で優子にも聞かせてあげたかったなぁ。全国の舞台に乗っけてあげたかった。

――それだけ思い入れがある吹奏楽。今でもトランペットを吹くことは?

あまりないですね。楽器は持っていますし、『ユーフォ』に関わることが決まってからはいじる機会もありましたけども定期的には吹いてないです。久しぶりに出したとき金管がカビだらけでした(笑)。

――カビているやつを見て懐かしくなったのでは?

いや、「くっさ!」としか思わなかったですよ(笑)。そのあとは「すぐにYAMAHAさんに出さなきゃ」と。でも、青春時代を思い出しはしました。もう本当に吹奏楽しかやってこなかったので。恋愛も勉強もせずそれだけをやってきた。でもやっていてよかったです。もう二度と経験できないことだから。この経験は一生ものだなと思っています。

――本作に関わって、もう一度やってみたいという気持ちは?

もう、あの人間関係をクリアにしていくことはお腹いっぱいです(笑)。もう一回はないです。ごめんなさい。

――それくらい青春時代にのめり込んだということですよね。

そうですね。私のなかではやり切ったという気持ちが強いです。だから音大にも行かなかったんです。中高とやり切ったので私としてはもう楽器はお腹いっぱいかな。

――本日は貴重なお話ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

『響け!ユーフォニアム』は色々なシリーズが出ていますが、その全部を観ていただきたいです。本作だけでも十分に楽しめる内容にはなっていますが、作中で描かれていないバックボーンなどが他シリーズを観ることで分かる部分もあります。キャラクターそれぞれがどうやって成長してきたのかなどの機微もシリーズを通して観れば分かるので、ぜひTVシリーズ、そして『リズと青い鳥』も観ていただきたいです。そうすることで吹奏楽を知っていただきたいですし、『響け!ユーフォニアム』の世界に浸っていただきたいです。優子たち3年生が引退すると全国出場経験者は久美子たちの代だけになります。彼女たちがどうなっていくのか、まだわかりませんが、もっともっと北宇治のことを応援していただければ嬉しいですね!

――優子らしい、素敵なメッセージをありがとうございました!

ありがとうございました! 何か、マイナスなことばっかり言っていた気がする(笑)。書けることありました?

――恐らく大丈夫です(笑)。

ダメなところはバッサリいっちゃってください(笑)。