――長澤さんにお伺いしたいのですが、座長としてチームを回すコツは?
長澤:回すなんて思ってないです! ただ、「皆で満足感を感じられる現場だといいな」という思いがあるだけです。だから、「何かをする」とは考えていません。基本的に自分の持ち場を、全うすることが「仕事」なんで。若い頃の方が「どうにかしなきゃ」とか「自分がまとめなきゃ」と正義感にかられてやっていたこともあったけれど、そうすると、自分の大事なところで疲れちゃう。自分だけで出来ることなんて、たかがしれてますし。まずはお芝居ですから。
――マイナビニュースはビジネスパーソンの読者も多いのですが、本作を仕事に活かせるポイントはありますか?
東出:交渉術みたいなことですかね。詐欺の基本なんですけど、僕らが不動産屋の芝居をするなら、悪いものを高い値段で売るのではなくて、「悪いものだ」ということを一旦忘れて、いいものを売ろうとする。それが詐欺のお芝居というか。
小日向:仕事は芝居以外やったことないからわからないんだけど、相手を丸め込むっていうか、その瞬間瞬間に力を注ぎ込む瞬発力は必要なんでしょうね。
長澤:「熱意」って伝わりますもんね。その人の仕事に対して、どのくらいの思いがあるのかは、相手に伝わっちゃう。ダー子を演じていて思うのは、人との関わりが好きで、楽しいから詐欺をしているのかなと思うんです。どんな仕事でも、人間関係を楽しんでしまえばいいんじゃないかと。
■テンションの高い芝居に疲労
――本作は役者同士の“演技合戦”のようなやりとりも魅力ですよね。
小日向:役そのものがどうこうというよりも、テンションを維持しないといけない瞬間があって、そこで遅れをとっちゃいけないんですよね。
東出:いえ、先輩は遅れをとるどころか、率先してやっていってます(笑)。
長澤:テンション高い芝居が多いと疲れるんですよね。カット終わるごとに結構ヘタってますね。時々「演技じゃなくて、本当に笑っちゃったんでしょ?」なんて言われることもありますが(笑)。
小日向:スイッチを入れないといけないんですけど、監督たちの求めるラインに上がらないといけないんですけど、ちょっと休憩したら、すぐそのテンションに戻らないといけない。その切り替えは、ずっと僕らの課題だよね。
東出:ダー子のスイートルーム(3人と仲間たちがテンション高めに作戦を練ったり、祝杯を上げる場所)でのやりとりは特に。
長澤:スイッチが入っても疲れるし、待つのも疲れるし……みたいな。
小日向:まさみちゃんを見ていると、そのテンションマックスの瞬間に持っていくために、待っている間も、自分の中でテストを繰り返しているから休めないんですよ。
東出:演技勝負というと、ボクちゃんは負けっぷりが勝負みたいなところがあり、今回はジェシーのキラキラ感に見事に負けたので。三浦春馬恐るべしですね。
長澤:負けてないよ(笑)。
小日向:脚本に負けるように書いてあるもん。
東出:いや、あれは、負けます(笑)。三浦さんとは、香港での空き時間にも一緒だったんですけど、街にも語学にも、色々なことに興味をもっていましたね。仕事でやっているだけじゃなくて、ご自身に興味があるからこそ、英語のセリフもいきいきとしている。拝見していて思いました。
長澤:エンディングテーマの「Pretender」はボクちゃんの気持ちを表しているんじゃないかなと思っていて。Official髭男dismも、この映画をドラマから一緒に作り上げてきた仲間なので、そこでも気持ちがつながった感じがして。この“チーム感”が、この作品の魅力なのかもしれません。……よし! 無理やりまとめた!
東出:今のは豪腕だったね!
■長澤まさみ
1987年6月3日生まれ、静岡県出身。主な出演映画に『海街diary』(15)、『アイアムアヒーロー』(16)、『追憶』『銀魂』『散歩する侵略者』(17)、『嘘を愛する女』『50回目のファーストキス』『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)、『マスカレード・ホテル』(19)、『キングダム』(19)など。
■東出昌大
1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。主な出演映画に『桐島、部活やめるってよ』(12)、『クローズEXPLODE』『アオハライド』(14)、『デスノート Light uptheNEWworld』『聖の青春』(16)、『関ケ原』『散歩する侵略者』(17)、『OVER DRIVE』『寝ても覚めても』(18)、『峠最後のサムライ』(20年公開予定)など。
■小日向文世
1954年1月23日生まれ、北海道出身。主な出演映画に『HERO』2作品(07・15)、『アウトレイジ/ビヨンド』(10・12)、『犬飼さんちの犬』(11)、『ステキな金縛り』(11)、『清須会議』(13)、『サバイバルファミリー』(17)、『祈りの幕が下りる時』(18)、『マスカレード・ホテル』(19)、『アルキメデスの大戦』(19年7月26日公開予定)など。