こうして多彩なナンバーを次々と、この日ならではの形で楽しませてくれているこのコンサートも、そろそろ終盤へ。万全の体勢で本編ラストを迎えようと、村川も最後の給水に入る……と、ここでなかなか給水を終えずに、最後のカウントを引っ張って引っ張っていく遊びでファンと戯れる。その光景が、「歴戦の猛者たちが、途中でどんどん息絶えていく……(笑)」とツボに入る村川なのだった。

そんな笑顔のなか本編ラストに披露したのは、デビュー曲「Sweet Sensation」。ピアノやストリングスの音色が響くとともに、魔導書にはピンクの輝きが宿る。頭サビ明けからバンドとオーケストラが一体となって奏でるこの曲は、一昔前の生歌番組のようなアレンジとなっていた。

フレッシュ感のある歌声は原曲から変わらず、間奏では微笑みながらリズムに合わせて、体を揺らしたりキュートにモンキーダンスをしてみせたりする村川。最後はラストのフレーズを歌いながらセンターステージのヘリまで出てくると、客席全体へと手を振り、そのままリフトダウンでステージを降りた。

■終わってみれば“贅沢な体験”でしかなかったコンサート

しかしなかなか拍手は鳴り止まず、やがて「りーえーしょん!」の声も上がり、アンコールを待ちわびる場内。そこにまずはバンドメンバーとオーケストラが戻り、チューニングを挟んで「Graceful」のイントロがスタート。そのさなか、コンサートグッズでもある指揮棒を手にした村川が登場する。

2ndアルバムの1曲目らしい始まり感を持つサウンドに乗せて、村川の歌声もまたも爽やかなものに。それでいて表情や間奏での仕草などには、キュートさも感じることができた。

歌唱後には、手にした指揮棒で魔導書持ちのファンへと魔法をかけて戯れるような一幕も挟むと、「コンサートだからこそ、こんなにも素敵なみなさまとご一緒できた」と感謝の言葉を述べて支えてくれた東京ニューシティ管弦楽団へ幾度も礼を繰り返し、スタッフやファンへも感謝の言葉を続けると、「最後は各々のスタイルで」と楽しみ方を委ねてラストナンバー「帰れない場所へ」を始める。

コンサートのED曲にもふさわしく、なおかつ今後へもつながるエピローグソングのような存在となったこの曲。甘めでみずみずしい歌声はそのままに、歌声がもたらすサビで開けていく感覚を、オーケストラの音色がより増幅させてくれている。このとき聴かれたものが、ある意味今のRiEMUSiCのひとつの完成形だったのかもしれない。後奏で腕を広げて会場全体を感じると、「ありがとうございましたー! いぇい!」とジャンプエンド。

バンドメンバーやオーケストラを送り出して改めて長い一礼をすると、ステージ袖で客席へもう一度礼。初の試みを大成功のうちに終わらせたのだった。

繰り返しの表現となってしまい恐縮だが、ストリングスをふんだんに用いたRiEMUSiCの良さを肌で感じられるという贅沢な体験をできたのがこの日のコンサート。デビューから約3年間の、ひとつの集大成を形にしてくれたと言っていいだろう。これからアーティスト・村川梨衣は、この方向の厚みをさらに増していくのだろうか。それともまたまったく異なる基軸で私たちをハッピーに驚かせてくれるのか……彼女の新たな展開を、期待して待ちたい。

●“村川梨衣 オーケストラコンサート ~梨の季節~”昼の部

【SET LIST】
M1.水色のFantasy
M2.戻れない旅
M3.夜明けの恋
M4.Baby, My First Kiss
M5.はじまりの場所
M6.Bright
M7.硝子の扉
M8. レクイエム -Requiem-
M9.ドキドキの風
M10.Sweet Sensation
EN1.Graceful
EN2.帰れない場所へ