水田伸生監督

ドラマ放送開始直後から海外から引き合いがあったほど、同作に対する注目度は高い。リメイクによる世界展開なども計画されている。なぜ海外にも通じる内容であるのか、水田監督はこのように分析している。

「日本であっても海外であっても、女性の生きづらさに変わりはありません。“me too運動”が起こっていることからも今、世界中が変化を求める分岐点にいるからでしょう。本当の意味で男女同権に向かう方向にあり、その過程にはどうしても戦う必要があります。『けもなれ』にはこうしたメッセージも含まれていることに興味を持っていただいているのだと思います」。

水田監督が手掛けた『Mother』『Woman』は、トルコでリメイクされたことをきっかけに世界に広がり、日本のドラマが生んだ世界のヒット作として認識されつつある。こうした実績を作る中で、世界の視聴者にも愛されるドラマを日本から作り出す機会が今後増えていく可能性は十分にある。水田監督は、日本のドラマの未来をどのように描いているのだろうか。

「アルフォンソ・キュアロン監督のNetflix映画『ROMA ローマ』が、今年の米アカデミー賞でオスカーを獲得したことに象徴されるように、今、作品が視聴されるデバイスの垣根はなくなりつつあります。家庭の中でテレビのあり方も変化しています。ただし、変わらない部分もあります。それは『人の人生に触れたい』という感覚。視聴スタイルが変化し、技術が進化しても、現代に生きる人同士がつながりを求める感覚はなくならないものだと思います。ですから、そんなテーマを大事にした作品を作り続けたいです。誰が作っている作品か分かるような埋没しない作品にもこだわり続けたい。放送日がゴールではなく、もっと長生きできるドラマ作りも目指したいと思っています。10年後もドラマを演出している自分の姿を想像しています」。

『けもなれ』を演出した水田監督が自ら語った作品に対するこだわりや制作秘話は、同作の意図を理解するものに役立つものであった。DVDとBlu-rayが5月22日から発売されたところでもあり、もう一度振り返ることもできる。余韻を楽しみながら、新たな展開も期待したいところだ。

  • 『獣になれない私たち』DVD & Blu-ray BOX=5月22日発売
    Blu-ray BOX 24,000円+税
    DVD-BOX 19,000円+税
    発売元:バップ
    (C)NTV

■著者プロフィール
長谷川朋子
テレビ業界ジャーナリスト。2003年からテレビ、ラジオの放送業界誌記者。仏カンヌのテレビ見本市・MIP現地取材歴約10年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に多数媒体で執筆中。