PUBGを遊び倒すパーツ構成を考える
阿部氏の願いを叶えるべくパーツ選定が始まった。ただ元は自作PCにどっぷり浸かっていただけあって、最初から定番どころのパーツで固めた手堅いプランを上げてきた。ただ、自作PCのトレンドだとか、同価格帯でもより良いパーツ選択、さらに今後の展開まで予測して、という視点でみると10年以上のブランクは否めない。足りない部分をアドバイスしながら、もっと満足度の高いパーツ構成に仕上げていくのが筆者の仕事だ。
今回は阿部氏本人がPCゲーム用に組みたいと言ってはいるものの、それほどPCゲームに費やされる時間は長くないと予想した。人間偉くなればそれなりに余暇の時間も減ってくるし、何よりゲームをぶっ続けでやる気力もなくなる。阿部氏の持ち物やSNSを見る限り、ゲーム目的のPCと言いつつも、写真や動画編集にも使うだろうと判断。PCゲームはもちろん、動画編集系でもしっかり働いてくれるPCに仕上げ、さらなる満足度の高みへ誘うのだ。
CPU:AMD「Ryzen 5 2600X」
元のCPUがCore 2 Duoなのだから、最新CPUはとんでもない速さになることは間違いない。現行のPentiumクラスでも速さに腰を抜かしてしまうだろうが、その感覚をより鮮烈にするためには物理6コア以上のCPUを使うのが正解だ。当初阿部氏は6コア6スレッドの「Core i5-9400F」を指名してきたが、筆者は「Ryzen 5 2600X」を強く推した。
その理由は二つ。ひとつは同価格帯でもRyzen 5 2600Xなら6コア12スレッドとCPUの論理コア数が多いこと。今回の企画に自前の4Kビデオカメラを意気揚々と持参する阿部氏の姿を考えると、やはりコア数の多い方が満足度が高かろうという結論。
もう一つの理由は、上位CPUへの乗り換えに関しても、AMD製CPUの方が精神的障壁が圧倒的に低いからだ。例えば、物理8コアCPUへ移行するには、Core i5-9400Fから準ハイエンドのCore i7 9700KFへの換装なら5万円以上かかるが、Ryzenだと最上位のRyzen 7 2700Xでも3万円程度と安い。
さらに、Intel製CPUだと次世代CPUへの移行はマザーボードごとの交換になりやすくコストが嵩みがちだが、RyzenのSocket AM4マザーは今後も可能な限り互換性が確保される見通しである。今年の夏までには出ると噂される「Ryzen 3000シリーズ(仮名)」への移行も、BIOSさえ更新すればスムーズに行えることが各マザーメーカーの動きから判明している。
より高性能なCPUが出るとわかっている今、最上位の2700Xを勧めれば、新CPUが出ても性能差をあまり感じられず、"まだ使える" おじさんになるだけ。程々の性能のCPUに慣れさせ、さらなる高みも見せることで、近い将来に高性能なCPUへ乗り換え……。自分の意思で自作PC沼の深みにどっぷりハマッていただくための布石なのだ!
マザーボード:ASRock「B450 Steel Legend」
CPUがRyzenなのだから、マザーはSocket AM4で決まりだ。問題はチップセットをどれにするかだが、前述の通り筆者は長期的に使ってもらい、自作PC魂を再び燃え上がらせてくれることを目論んでいる。つまり、より長く現役で使えそうなものがよい。
X370のようなRyzen最初期からあるチップセットを搭載したマザーなら予算をいくらか節約できるが、やはり古いチップセットはマザーのデザインセンスもオンボード機能のチョイスもそれ相応。より新しいチップセットを載せたマザーのほうが最新トレンドに合ったものが得られるし、万が一旧世代チップセットが足切りにあっても、より長く使い続けられる可能性がある。
こうして考えると、B450チップセットを搭載したマザーを選ぶのが一番理にかなっている。Socket AM4用のチップセットとしてはX470がハイエンドであるが、B450とX470の違いは、PCI-Expressのレーン数やSATAの数など拡張性にかかる部分であり、スタンダードなパーツ構成で自作するなら、ややスペックダウンしたB450でも十分といえる。
B450マザーはチップセットの位置づけに連動し廉価版モデルが多いが、今回そこまではケチらない。コンデンサ等の搭載コンポーネントの質がよく、デザインも今風で洗練されているASRock「B450 Steel Legend」をチョイスした。B450 Steel LegendはRGB LEDにも対応しているが、マザーそのものの光り具合は控えめというのもポイントが高い。経験上、昔の光らないPCを使っていた人にいきなり光モノを与えても、拒絶反応が返ってくることが多いのだ。
メモリ:シリコンパワー「XPower Turbine 16GB (2x8GB)」
搭載できるメモリの規格はマザーボードの設計で決まるのは10年前と共通。さらに同容量を2枚単位で組み込むのがベストというのも共通。ここまでわかっていれば、あとの絞り込みは容易い。現行RyzenはDD4-2933まで対応しているので、確実に動かしたいならDDR4-2400/2666/2933と銘打った製品から選ぶことになる。Ryzenはメモリクロックが高いほどCPUの処理もパフォーマンスも上がるのだが、高クロックメモリになるほど値段も高い。
だが、PUBGを遊びたいという確固たる動機を持った阿部氏だけあって、8GB×2枚組がスタートラインであることはすぐ調べがついたらしい。となれば、あとはメモリクロックと予算で絞り込むだけだが、今回はDDR4-2666の "光らない" メモリを選ぶことで、やや予算を圧縮することとした。次世代Ryzenがどのようなメモリクロックになるか情報がない今、ギリギリを攻めても仕方がない。幸いにして今はメモリ価格が下落傾向にある。不満が出たら一緒にアップグレードすればよいのだ。
グラフィック:ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 Twin Fan」
阿部氏がPC自作に再挑戦する理由はPCゲーム。ならばグラフィックスカードは今回の自作の生命線といえる。PUBGやApex Legends、BFVといったFPS/TPS系の人気ゲームが快適に遊べるとなれば、現行ミドルレンジ以上のGPUが必要だ。
具体的には、GeForce GTX 1660TiやRadeon RX 590といったところが最低ラインだが、今回は「DXR(DirectX レイトレーシング)を使ったゲームも堪能したい」というリクエストがあったので、必然的にGeForce RTX 20シリーズに絞られてくる。GTX 1660/1660TiでもDXRを使ったゲームは "動く" が、DXR対応ゲームを "堪能する" のであれば、RTコアとTensorコアを備えたRTX 20シリーズしかない。予算的にはGeForce RTX 2060が一番妥当なチョイスだろう。
また、グラフィックスカードは工場出荷時にオーバークロック(OC)されたモデルが主役だが、非OCモデルに比べゲームのパフォーマンスが劇的に変わる訳ではない。1FPS単位の極限性能を求める向きはOCモデルを狙うとよいが、そうでないスタンダードな仕様のモデルを選んでコスト圧縮を図っても問題ない。
今回推挙したZOTACのRTX 2060搭載モデルは、カードサイズが大きすぎず、かつデュアルファン仕様で冷却力もそこそこ期待できる。さらにカード裏面から側面をガードするバックプレートを装備しているので、カードの物理的強度も魅力。デザインもマザーのテイストに合って良い感じだ。
SSD:サンディスク「Extreme PRO SDSSDXPM2-500G-J25」
今やメインストレージといえばSSD、ということは阿部氏もわかっているようで、最初からPCI-Expressに直結するM.2 NVMe接続SSDを選択してきた。コスト的には2.5インチのSATA接続のものが有利だが、SATA3というインターフェースは今のSSDにとっては遅すぎるため、NVMeを選ぶのが今風のPCに近づく最善の一歩だ。
SSD選びで一番悩むべきは容量の選択だ。ゲームの他に写真や動画編集も楽しむPCとなると、240~256GBクラスの安価なモデルは命取り。Cドライブの空き容量が合っという間に尽きてしまうだろう。480~512GB程度のSSDをオススメしたいところだ。1TBならさらに盤石だが、今後容量が不足したら乗り換えることにしていただこう。
最終的に阿部氏がチョイスしたのは、SanDiskの人気モデル「エキプロ(2.5インチ SATA版)」の後継モデル。中身は親会社であるWesternDigitalの「WD Black NVMe」と同一だが、カメラ関連の仕事が増えた当人にとってなじみのあるブランドを選ぶのもよいだろう。