日本人はレッドのほうが幸せを感じやすいのか
崔:なぜ職場で鎧をつけるのかは、働き方や制度に依存する部分がありますね。
嘉村:ラルーさんは今のティール組織の文脈を指し、馬車の時代に車が登場しているようなものと言うんですね。馬車の時代は道路も砂利道で車の部品も高い。現状ではグリーンやオレンジのほうがやりやすくて、正直ティールは今の時代やりにくいと。ヨーロッパは法律面から変えていくムーブメントも起こり始めていますが、株式制度や会社法が変わってティール組織が増えるとより運営もしやすくなる。日本はまだまだですが。
岡田:特に日本でティール的なことを本当に望んでいる人は少ないかもしれない。主体的に責任を持って選ぶこと、自立を求められることが重荷に感じる社員もいて。レッド組織で命令されるほうが働きやすい人もいるというか。だから僕は青野さんのいう100人100通りが好きで。
塚越:確かに幸せは多種多様です。ただ、末広がりじゃないといけないとは思いますね。だんだん良くなる形の中に希望や夢って言葉は存在するけど、右肩下がり、あるいは激しく乱高下するだけの世界や会社にはない。多少、波があっても右肩上がりだから夢も希望もあるんですよ。
岡田:ある意味、俺はハッタリに近い夢を見させて全国から社員が集まってくれたんだけど、4年くらいすると「やりがい詐欺ちゃうか」と思われ始める(笑)。次の手を考えないと(笑)
嘉村:よく勘違いされるんですが、「組織の階層構造を壊したからティール」ではなく、痛んだら思い切って変えていく過程のほうが大事です。社員が辞めていく、なんとなく空気が悪い、日々の経営で生じるそうした歪みは病気みたいなもので、柔軟に変化を続けるうちに階層がなくなるのかもしれない。グリーンまでの価値観は未来予測をして、計画通りに目的地に行こうとする。一方、ティールは飛び込むことで学びを得て、その学びを全員で共有しながら、成長しようという世界観で存在目的を果たしていく。その意味で不安定も伴いますが、1人で背負うわけではない安心感もあるんですよ。
サイボウズは「ティールはあんまり考えていない」
シンポジウム後半には質疑応答も行われ、サイボウズをオレンジ組織と位置付けた青野氏に「今後グリーンに変えていく考えはありますか」という質問も。
青野:あんまり考えていないですね(笑)。やはり色を目指し始めると違う方向な気がするんですよ。危機の時はレッドのほうがワークする場合もあるわけで。超オレンジなIT業界のグローバル企業と競争するために、オレンジの引き出しを持ちながらバランス良く経営する感じかなと。
嘉村:もしオレンジの運営で何かしら痛みや課題があった時、ティールはもうひと段階変わるヒントになりますが、ティールを目指すと絶対に歯車は狂います。最近はティールを目指す経営者も多いですが、採用で人が集まるかもしれないという理由も少なくない。社員が振り回されては本末転倒です。
青野:色で並べられると目指したくなるんですけど、本質はそっちじゃないんですよね。塚越さんがおっしゃるように、社員の幸せという部分でブレちゃいけないと思います。
ティール組織が今後どれほど普及するかは未知数だが、現代の組織が抱えるさまざまな課題を考える上で、ティールの議論は良いきっかけとなるようだ。