5月下旬リリース予定のMay Update 2019
「Windows InsidersのためのWindows 10最新情報まとめ」と題したセッションでは、日本マイクロソフト Microsoft 365 ビジネス本部 製品マーケティング部 シニアプロダクトマネージャー 津隈和樹氏がスピーカーとして登壇。イベント参加者に「Windows 10はグローバルで何台使われている?」との質問を投げかけてスタート。Microsoftのマジックナンバーは「Microsoft by the Numbers」で確認できるとおり、本校執筆時点では8億台以上。見事的中させた参加者には、Windows 10ノベルティグッズがプレゼントされていた。
先日ベータ版などをリリースした、Chromium採用の新Microsoft Edgeに関する話題に触れつつ、「あくまでもインサイダー版をベースにしているため、リリース時はなくなっている可能性がある」(津隈氏)と前置きしながら、バージョン1903となるWindows 10 May Update 2019の新機能を次々と披露。
具体的には、サインイン時にぼかし効果が加わった背景画像やライトテーマ、エクスプローラーのアイコンに加わった変化、検索ボックスとCortanaの分離、クイックアクションセンターに並んだパネルの直接編集と多岐にわたった。「Win+Vキー」で呼び出すクリップボードの拡張は、記録する項目が2つから4つに拡大。本誌でも過去に取り上げた、「Win+Shift+Sキー」で呼び出す画面領域切り取り機能などにも触れた。
さらにOffice 365では、検索ボックスから人や書類など多くの項目を検索するEnterprise Searchや、PowerPointでAIがスライド内の項目に合わせてデザイン候補を提示するデザインアイデアにも触れ、「時系列に沿ったプロット作成や、箇条書きの項目内容に応じたアイコン配置機能など、この半年で進化した」(津隈氏)とアピール。
途中Microsoft Whiteboardの利便性を語りながら、話をWindows 10に戻してWindows Updateにおける7日間更新延期に触れた。Windowsサンドボックスや、Microsoftアカウントではなく、電話番号による新規ユーザー作成を披露。「ファーストラインワーカーなどMicrosoftアカウントを持っていない方でも取得可能にするため、新たな取り組みを加えた」(津隈氏)とのこと。
「『スマホ同期』の英語名は『Your Phone』のため、当初は『電話同期』という名称だったが、違和感を覚えるという『ランゲージコミュニティ』を通じたフィードバックが多かったため改称している。より良い日本語になることに協力していただきたい」(津隈氏)と、参加者に対して積極的なフィードバックを求めた。
Windows Insider MVPによるライトニングトークでは、Xbox Oneによるプレゼンを行う強者も。後から話を伺うと、Xbox Oneで動作するOneDriveアプリでプレゼンする予定だったが、フォント周りで意図しない動作が発生するため、急遽、Microsoft Edgeをインストール。PowerPoint Onlineを使い、Xboxコントローラーを手にライトニングトークに挑んでいた。
今回ユニークな試みとして取り込んだのが、参加者によるグループディスカッション。「あなたが理想とする次のWindows 10は?」をテーマに、12のグループに分かれて実施された。「大阪では時間が足りなく、無理に終わらせた」(日本マイクロソフト Microsoft 365 ビジネス本部 文教マーケティング担当 春日井良隆氏)ほどの盛況ぶりだったという。各グループからは、Windows Updateの欠点を指摘する声や、インストール時にハードウェア情報を精査してアドバイスする機能の実装など、ユニークかつ素直な意見が聞かれた。
日本マイクロソフトとMSDによる「もっとも開発などに役立つ意見」を取りまとめた結果、グループ1が優勝に輝いた。内容を要約すると、「ユーザーが簡単にWindowsを使うことができる環境を構築してほしい。設定や使い方、機能をもっと情報弱者へフレンドリーに教えてほしい。高齢者による情報収集や教育現場でWindows 10を使っていると、非フレンドリーなため困ってしまう。パートナーシップを拡大して、地域に浸透してほしい」というものだった。
グループ参加者の1人である80代の女性に話を伺うと、「(Meet Upに)参加するのは初めて。届いたメールを見て興味を持った。普段は高齢者向けPC教室を手伝っているが、今回の知見を持ち帰り、教室の参加者に広めたい」と語っていた。グループ1は比較的高齢者が多く、真のエンドユーザーの声が、一番役立ったフィードバックであるとされたのだろう。
日本マイクロソフトは「(今回すべての意見を)まとめた内容を開発やマーケティングに反映させたい」(津隈氏)とし、「今回初めてエンジニアが参加したが、Windows Insiderと近い関係が結べたと思う。今後も同様の場を作っていく」とイベントを閉めた。時期は未定だが、第5回の開催も予定するという。
第4回の開催となったWindows Insider Meetup in Japanだが、今回は託児室や記念撮影ブースを設けるなど、これまでにない取り組みも行った。託児所は、日本マイクロソフトの社員とともに、数組の参加者も利用。男性の利用が目立ち、開催が日曜日だったからか、“半分趣味”ともいえるイベントだったからか、子どもと一緒に訪れた父親が多かったようだ。
全体的な雰囲気も過去のそれと異なり、ずいぶんとアットホームな空気に包まれていた。日本マイクロソフトの社員によるプレゼンが終わったあとも、参加者からは気軽に意見があがっていた。また、終了後の懇親会で参加者同士が談笑する場面が多く見られたのも、これまでになかった風景だ。
Windows Insider Meetup in Japanは、当初からWindows 10の開発現場を巻き込んだイベントだったが、回を重ねて今回の姿になった。このまま進めば、Windows 10のユーザーコミュニティの発足つながるような勢いだ。
阿久津良和(Cactus)