俳優の志尊淳が、フランス・カンヌ現地時間7日、開催中の国際ドラマ祭「Canneseries(以下、カンヌシリーズ)」(4月5~10日)の“ピンクカーペット”を歩いた。主演ドラマ作品『潤一』(カンテレで7月、日本映画専門チャンネルで放送、配信も予定)がノミネートされたことを受けて訪仏するやいなや、現地で得た反響ぶりに驚く様子の志尊に直撃。初のベッドシーン、オールヌード挑戦したその心境や、是枝裕和監督の企画作品に初参加した思いを聞いた――。
■“世界を目指す”が現実に
国際的なドラマの祭典「カンヌシリーズ」の開催で盛り上がる快晴の朝、フランス・カンヌに、志尊が現地入りした。コンペティション部門の正式出品作に日本のドラマが選ばれたのは、これが初。さらに今回、アジアで唯一のノミネートとなり、世界中から注目を集める中、どのような思いでカンヌに足を運んだのだろうか。
「現地に運ぶまでは実感がわかなかった、というのが正直なところです。その分、気負いもなかったのですが、いざカンヌに着くと、規模の大きさに圧倒されました。ギュッと緊張も増しました。少しでも多くの方に見ていただきたいという気持ちに変わりはありませんが、世界の人にももっと届けたいという気持ちがより高まりました。この『世界を目指す』という言葉は、時に表面的に聞こえやすいものにもなるんじゃないかなと僕は思っているのですが、それが今、現実的に思える。それはこうして機会を得て、現地に来ることができたからです」。
志尊がそう思ったのは、同日15時から行われたワールドプレミア上映にも出席し、地元フランスをはじめ、世界中から集まった観客で満席になった会場の反響を肌で感じたことによるものが大きいだろう。
「2,000人の方に集まっていただき、上映が終わると同時に『ブラボー!』の声やたくさん拍手の音が聞こえてきました。うれしい瞬間でした。映像作品を楽しむ文化が根づくフランスならではの反応もあり、思わずおひとりおひとりに感想をお聞きしたくなってしまいました」。
■お尻のひとつやふたつ、いくらでも
直木賞作家・井上荒野氏の同名連続短編集をドラマ化した本作は、女性たちを瞬時に魅了するミステリアスな青年・潤一(志尊)と、さまざまな背景を持った16歳から62歳までの女性たちとの刹那の愛を描いていく作品。鑑賞した現地のジャーナリストからは「詩的で美しい映像。主人公の潤一は他にはない役柄だ」と高く評価する声を聞いた。まさに、志尊が演じた主人公「潤一」は女性たちを魅了するミステリアスな青年の役。過去には『女子的生活』(NHK)でトランスジェンダーの役にも挑み、演技力の幅を広げている志尊だが、今回これまでになかった役柄を演じる上で、難しさもあったのだろうか。
「役への入り方がこれまで演じさせてもらったものとは全く違いました。この作品はロジカルに役柄を分析することができない。動物的な本能が何よりも求められる役です。だから、役を作り込む必要がないというか、作り込むことができないと言うほうが正しいのかもしれません。監督や撮影クルーのお力添えによって導かれながら、柔軟にその時々の感情を大切にしながら演じました」。
そんな気まぐれな青年を志尊はエロティックに演じ、ベッドシーン、オールヌードにも挑んだ。これは志尊にとって初の経験。どんな気持ちで臨んだのだろうか。
「抵抗は全くなく、僕自身は服を着ていようがいまいが、特に気にしません。お尻のひとつやふたつ、いくらでも差し出すつもりです(笑)」。
茶目っ気いっぱいに笑顔で答えながら、こうも続けた。
「実はカメラが回ってないところでも、お尻を出して歩いていました。なんでしょう。撮影が進むと共に免疫がついていったというか。そもそも性行為をするにあたって裸であることは当たり前のことですからね」。
全6話の本作はオムニバス形式で展開され、各話に潤一と関わる女性が1人登場する。潤一と一瞬出会って、そして別れていく孤独な女たちを演じる女優陣は、こちらもカンヌに来場中の藤井美菜をはじめ、夏帆、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華、そして原田美枝子の6人。その中で志尊が最も印象に残っているのは、夏帆が登場する回だったという。
「1話あたりの撮影期間は2~3日間のみ。女優の方々との場面も限られています。そんな中で、夏帆さんと屋外での大胆な絡みのシーンがあったのが印象的でした。夏帆さんとは初対面だったので、作品そのものと関係性が近い状況とも言えますよね」。