ファーウェイがフランス・パリで発表した最新スマートフォン「HUAWEI P30 Pro」。フラッグシップモデルだけに機能満載ですが、発表会でも特に力を入れてアピールしていたのがカメラ機能です。もはやコンパクトデジカメは優に超え、高画質コンパクトデジカメ並みの画質や機能を誇ります。P30 Proを持って、パリの街を撮り歩いてみました。
超広角から望遠まで変化のある撮影が楽しめる
P30 Proのカメラは、これまでと同じくドイツの老舗カメラメーカー・ライカと提携してレンズや画像処理を開発したもの。これまでもライカ銘のレンズを搭載してきましたが、P30 Proが搭載するのは「LEICA VARIO-SUMMILUX-H 1:1.6-3.4/16-125 ASPH.」。35mm判換算で超広角の16mmから、望遠側は125mmまでカバーします。
P30 Proは、レンズを切り替える形で複数の焦点距離をカバーします。メインカメラは35mm判換算で27mm相当の広角レンズで、これに16mm相当の超広角カメラと125mm相当の望遠カメラが加わります。
撮影時は、ズームボタンをタッチすると5倍、10倍、超広角の順番に焦点距離が切り替わるほか、指でスライドさせると無段階でズームできます。10倍はハイブリッドズームとされており、クロップ(中央部の切り出し)による疑似ズームとみられます。
デジタルズームは、最大約50倍まで可能。35mm判換算の焦点距離にすると、実に1343mmにもなります。27mmからの50倍(1350mm)にはなっていませんが、これも恐らくAISを働かせる影響でしょう。それでも、手ブレの影響はかなり大きく、撮影にあたっては三脚が必須と感じました。いずれにしても、スマートフォンで約50倍という超望遠撮影ができるのは大きなインパクトがあります。
もっとも、画質は「それなり」。高倍率のズームレンズを搭載するデジカメと比べれば解像感はかなり劣りますが、50倍ものデジタルズームの割にきちんと写っていると感じました。このあたりの判断は人によって分かれると思いますが、別途クリップ式の外付けレンズなどを装着する手間がなく気軽に撮影できるのは魅力です。
27mm相当のメインカメラに対し、125mm相当の望遠側カメラの光学倍率は約4.6倍となりますが、UI上の表記は5倍となっています。実際に撮影した画像のデータを見ると、焦点距離は135mmとなっており、レンズ表記の焦点距離とはいくぶん異なっています。RAWで撮影すると125mmと記録され、画角もいくぶん広角寄りになるため、JPEG撮影の場合は中央部の切り出しによって疑似的に光学5倍に仕上げているようです。
この仕組みを採用した理由の1つは、恐らく手ブレ補正のためでしょう。望遠側レンズには、光学式手ブレ補正(OIS)とAIを活用した手ブレ補正(AIS)を併用した強力な手ブレ補正を搭載しています。このAISでは、動画撮影でよく使われる電子式手ブレ補正に似た仕組みを用いているようで、画面の中央部分を切り出し、その外側の範囲を手ブレ補正用に利用していると思われます。このため、実際のレンズの焦点距離よりも画角が狭くなり、実質的に135mmになった、ということでしょう。実際、RAWで撮影すると手ブレ補正の効きが弱くなります。
いずれにせよ、オートモードで撮影する場合などは、基本的には16/27/135mmでの撮影になります。ちなみに、RAWでは10倍ハイブリッドズームは利用できなくなります。
10倍ハイブリッドズームにすると270mm相当になり、ここまで来ると低価格コンパクトデジカメよりも高い倍率での撮影が可能です。ハイブリッドズームとなるので、画質に関しては特に秀でているとはいえませんが、遠くの被写体を引き寄せて大きく撮れるのは便利です。
16mmの超広角カメラは、同社のスマートフォンとしては初めてではありませんが、高性能のPシリーズとしては初めての搭載となります。かなりの広角レンズですが、広々とした風景を撮影する場合や、狭い屋内で撮影したい場合など、幅広いシーンで便利に感じます。画像周辺のゆがみも大きくなりますが、JPEGではそれなりに補正が加えられます。
設定で40MPでの記録も可能
メインカメラの撮像素子は1/1.7インチと、スマートフォンでは最大級のサイズです。画素数は有効4000万画素と超高画素ですが、標準では記録画素数は10MP(1000万画素)となっており、画素数を犠牲にすることでハイブリッドズームやAISで活用しているようです。
記録画素数をフル画素の40MPにすると、ズームは使えなくなります。「とにかく高画素で撮りたい」という意図がある場合のみ40MPに設定するといいでしょう。
3つのレンズを搭載したスマートフォンは珍しくなくなりましたが、5倍(135mm)という焦点距離は珍しいでしょう。2~3倍程度の感覚でズームすると、思ったより被写体が大きくなりすぎる印象を受けました。その場合はピンチイン・アウトでデジタルズームを活用すればよいのですが、個人的には足を使って被写体から遠ざかるのが手っ取り早いと感じました。
撮りたい被写体全体を撮るのではなく、その一部を切り抜く。その切り抜き方にその人の感性が表れるわけで、「記録」ではなく「撮影」という気分になります。全体を撮りたければ27mmで周辺まで含めて撮影し、5倍で心にとまった場所を切り抜く。そんな撮影をしたくなります。
16mmという超広角カメラは、旅行で全体の雰囲気を抑えたいときに便利です。パノラマよりも手軽に広大な範囲をワンショットで撮影できるので、便利に活用できると感じました。ただ、遠くから建物や風景を撮影するだけではメリハリの少ない写真ばかりになってしまうので、特有のゆがみを生かしてインパクトを重視したり、グッと近寄って迫力を出すなど、単に「全体を撮る」だけでない撮影が楽しめます。
撮像素子のフィルター配置に独自の工夫
P30 Proのメインカメラのセンサーには、開発期間に3年をかけた「世界初」という新技術が採用されています。独自開発の「RYYBセンサー」で、CMOSセンサーに配置されたカラーフィルターを、従来のRGGBではなくRYYBの配列にした、というものです。
カラーフィルターは、本来モノクロのセンサーの各画素に赤(R)、緑(G)、青(B)といったフィルターを配備して色を再現するもの。通常、RGBを使う原色フィルターと、CMYG(シアン・マゼンタ・黄・緑)を使う補色フィルターがあり、原色フィルターはRとBに対して倍のGを配置したRGGBのベイヤー配列が一般的です。
このベイヤー配列の原色フィルターのGをY(黄)に変えたのがP30 Proで採用されたRYYBフィルターで、これをセンサー上に配備しています。
もともと、原色フィルターは色再現性が高く、補色フィルターは感度が高いという特徴がありました。デジカメでは、技術革新で原色フィルターでも一定の感度が得られるようになり、補色フィルターはほとんど使われなくなりました。
このYフィルターは光の透過率が高く、カラーフィルターを通した際の光のロスが少ないことから、Gの代わりにYを配置することでセンサー全体の感度が高くなるといいます。さらに、YはRとGに分離することができ、RYYBが「R・RG・RG・B」になって感度が向上し、全体で40%の感度向上になる、としています。
ちなみに、メインカメラはRGGBからRYYBにしていますが、色再現性を高めるために通常のRGGBフィルターを備えたほかのカメラの色情報を撮影時に取得しているそうです。つまり、実際に撮影するメインカメラ以外のカメラも撮影時に動作している、ということのようです。
従来のPシリーズは感度に優れたモノクロセンサーを搭載し、より明るい写真が撮れるような工夫をしていました。今回、このモノクロセンサーがなくなってしまいましたが、RYYBフィルターによって対策を図ったようです。ちなみに、同様に感度を向上させるセンサー技術として、W(白)を追加した「RGBW」フィルターもありますが、この技術よりも優れているといいます。