■相鉄本線をゆったりと進む12000系

新型車両12000系の試乗会列車は11時40分、職員や「そうにゃん」らの見送りを受け、かしわ台車両センターを出発した。車両センター内をゆっくり走行し、いったん引上げ線に入った後、本線へと進む。VVVFインバータ制御装置の音を耳にしつつ、ゆったりと加速していく中、かしわ台駅へと入っていく。乗り心地は安定している。台車はボルスタレス空気バネ台車であり、軸バネダンパにより安定した乗車環境を与えてくれる。

11時47分、かしわ台駅4番線ホームに入線し、一部のドアが開く。11時56分、隣の3番線ホームに新7000系の急行横浜行が現れ、新型車両12000系を追い抜く。早くも相鉄線の新旧車両が出会ったことになる。ホームに出て車両外観などを見ると、車体のドア付近にも開閉ボタンがある。種別・行先表示器には「そうにゃん」のイラストと「試運転」の文字がLED表示されている。

12時2分にかしわ台駅を発車し、相鉄本線を横浜方面へ。走行音を聞くと、やはりE233系に近い。これまでE233系に乗っていた人も、違和感なくこの車両を受け入れることだろう。

普段はすべての種別が停車する大和駅も通過。地下区間を抜けると、美しく咲く桜が見えた。営業運転に入るころ、桜は散っているものの、新緑の美しい中を新型車両が走るはず。まずは地元の相鉄線内で運行開始となる。

■住宅街から都心に直通するメリットとは

12000系の車窓風景を眺めていると、沿線に住宅が多いことに気づく。このエリアの人々は、横浜市内に通う人もいれば、都心方面に通う人もいるはず。都心方面へ向かう場合、これまでは横浜駅などで乗り換える必要があった。今年11月30日に相鉄・JR直通線が開業し、さらに2022年度下期に予定される相鉄・東急直通線が開業すれば、これまで横浜駅で乗り換え、都心方面に通っていた人はよりスムーズな移動が可能となる。沿線にずっと続く住宅街を見ていると、相鉄線から直通するメリットを強く感じさせる。

昨年デビューした20000系、間もなくデビューする12000系は、ともに将来の相互直通運転に向けて登場した車両だ。デザインコンセプトを統一し、都心における存在感と、沿線のイメージを刷新するために相鉄は力を尽くし、さまざまな事業に取り組んでいる。相互直通運転が始まることで、相鉄は大きく変わるだろう。

二俣川駅でいずみ野線と合流。駅手前で少し停車した。加減速にも引っかかりはない。ここで調色調光式のLED車内照明の実演が行われ、昼白色から電球色への切替えが試された。電球色の車内は少し落ち着いた雰囲気になる。二俣川駅を通過した後、西谷駅では地下への分岐工事が進められていた。ここが相鉄・JR直通線との分岐駅となる。

  • 車内Wi-Fiも完備

  • 昼白色の照明

  • 電球色の照明

  • 車内に設置された個別ドアスイッチ

  • 車外にもドア開閉ボタンがある

  • 種別・行先表示器に「そうにゃん」も

上星川駅は減速して通過し、和田町駅も通過。和田町~星川間のほぼ中間地点から高架となり、昨年11月に高架化されたばかりの区間を走行し、星川駅で運転停車する。ここで11000系の快速横浜行に抜かれる。続いて8000系の特急横浜行が通過。8000系・9000系は一部車両にクロスシートを備えた相鉄ならではの形式だったものの、相鉄において今後、こうした車両が新製されることはないものと思われる。

星川駅は12時33分に発車した。再び車窓の風景に目をやると、ここでも沿線の桜がきれいだった。美しい桜と真新しい車両が相鉄の新時代を予感させる。天王町駅を通過し、西横浜駅に着く前でJR線が近づき、E231系やE217系の走る姿が見える。西横浜駅に到着後、同駅の留置線に入り、ここで試乗会は終了。その後はバスで移動し、相鉄・JR直通線のレール締結式が行われる羽沢横浜国大駅へ向かった。

  • 試乗会の終了後、羽沢横浜国大駅にてレール締結式が行われた

  • 羽沢横浜国大駅の駅舎は流行り廃りにとらわれないデザインに

  • 駅東側で相鉄・JR直通線(外側2線)が相鉄・東急直通線(内側2線)から分岐する

新型車両12000系の報道発表会・試乗会、羽沢横浜国大駅でのレール締結式を通じ、いよいよ相鉄の電車が都心へ乗り入れてくると思うと、期待感が高まる。相鉄の新時代が間近に迫っている。