相鉄・JR直通線用の新型車両である相模鉄道12000系の報道発表会・試乗会が3月28日に行われた。試乗会では、かしわ台車両センターから西横浜駅の留置線まで走行。相鉄グループが取り組む「デザインブランドアップコンセプト」に則った車両の感触を味わった。
■12000系4/20デビュー、相鉄・JR直通線11/30開業
試乗会を前に、かしわ台車両センターにて報道発表会が行われ、新型車両12000系の概要などを説明した後、4月20日から営業運転に投入すると発表。車両のお披露目に続き、相模鉄道とJR東日本が共同で相鉄・JR直通線の開業日を発表した。
「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマネイビーブルー)」の塗装をまとった新型車両12000系は、能面の「獅子口」をモチーフにしたという迫力ある「顔」を見せる。古来、文殊菩薩の乗り物であった獅子は智慧の象徴であり、守り神、めでたいものだという。相鉄はこれを「新たな輸送体系への実現へ、わたしたちを護る存在」と考えている。
この濃紺色の車体と、迫力ある「顔」を都心で見られる日も決まった。相鉄・JR直通線の開業日は2019年11月30日と発表された。JR東日本・JR貨物・相模鉄道の調整により、この日に決まったという。なお、一部報道では12月と報じられていたが、ダイヤ改正は土曜日に行われることが多く、土曜日である11月30日に決まったとも考えられる。今回は開業日の発表のみにとどまったが、会場のパネルに相互直通運転を行う相鉄線・JR線の路線図が掲げられ、JR線の直通先に「新宿」そして「JR埼京線」の文字が見えた。
相模鉄道代表取締役社長の滝澤秀之氏は、都心への直通にあたり、「親しみやすい鉄道会社というイメージを持ってほしい」と語った。
■新型車両がかしわ台車両センターから西横浜駅へ
報道発表会に続いて試乗会となり、お披露目された新型車両12000系にそのまま乗車。ステップを上り、車内に入る。濃紺色の重厚な質感を持った外観と異なり、車内はグレーを基調に、シンプルで落ち着いたデザインとなっている。座り心地はJR東日本のE233系より若干やわらかく、ゆったりとした気持ちになれる。
今回配布された資料によると、新型車両12000系は既存の11000系をベースとしつつ、昨年デビューした相鉄・東急直通線用の車両20000系の要素を取り入れているという。スタンションポールの手触りも、E233系のようなつるつるとした感触ではなく、適度なざらつきがあり、つかみやすく、指紋が付きにくいように工夫されている。
「ユニバーサルデザインシート」は12000系でも採用されたが、20000系に設置されたものより30mm低く設定されており、座席の上の荷棚が復活している。車いす・ベビーカー利用者向けのフリースペースは全車両に設置。吊り革は20000系を踏襲し、楕円形のつかみやすいものとなっている。パナソニック製の「ナノイー」空気清浄機を使用しているため、車内の空気は快適な印象だった。
一方で直通先を意識したところもあり、12000系はJR東日本のE233系などと同様、窓のカーテンがない。相鉄初の設備として車内に防犯カメラを設置しており、防犯カメラが必要な路線に乗り入れることを意識しているように思える。20000系に続いて個別ドアスイッチも採用。20000系では神奈川県央部の暑さ寒さ対策で設置されたとの説明があったそうだが、12000系の個別ドアスイッチはそれだけでなく、やはり直通先の事情を示唆しているように感じる。新宿駅から先、川越線川越駅まで埼京線と一体の運用が行われており、そのエリアは内陸部で、冬は寒い。個別ドアスイッチは必須だろう。
相鉄らしさを感じるところといえば、弱冷房車が9号車であることだ。相鉄は10両編成の列車において、弱冷房車を9号車に設定している。相互直通運転を開始した後、JR線と合わせるのか気になる。もっとも、弱冷房車の設定は簡単に変えられるという。